作物バイオ最新情報 2009年10月

ニュース

世界

• FAOは農業への投資の増加が必須と述べた 
• 食糧保障への気候変動のインパクト 

• 2009年度世界飢餓指数
• Borlaug博士を讃える受賞者ホール 
 

南北アメリカ

• Genuity SmartStaxの試験でトウモロコシオタバコガに効果があることを示した 
• ARSは、病害耐性でアフラトキシン汚染のないトウモロコシ品種を提供
•メキシコはGMコーンの試験を承認
 
ヨーロッパ
• アジアはバイオテク及び知識運用に挑戦する必要がある
• 組換え作物のインパクトに関する国際会議
• GMワタと従来のワタとの収量の比較
• 日本は、2500万米ドルを国際イネ研究に投資
• タイの組換えパパイヤの事前分析
• GM青いバラが来月日本の市場に現れる
• オーストラリアの科学者がコムギふ枯病耐性小麦品種を特定したAsia Needs to
 
アジア太平洋

• Mon89034 x NK603輸入に対するEFSAの意見
• 遺伝子組換えトウモロコシ品種は在来種よりも影響は少ない
• 王立協会の報告は世界的な農業の持続的強化を提案

研究
• 小麦遺伝子をトウモロコシ胚乳で発現すると湿式粉砕の効率が上がる
• ササゲの遺伝子地図が解明された
• 組換えDNAとBtタンパク質の野生のイノシシとシカに摂取・散乱後の行方

バイオ燃料補遺
• バイオ燃料用のトウモロコシ生産の水質へのインパクト
• 植物のスベリン生合成のキー酵素がストレス耐性バイオエネルギー作物への道を開く
• バイオエネルギー作物の直接・間接土地利用の温室効果ガス放出へインパクト
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ニュース

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*世界 *

FAOは、農業への投資の増加が必須と述べた 
世界的な農業生産は、さらに増える23億人を食べさせるために、2050年までに70パーセント成長しなければならない。この課題に対処するために、研究開発へのより多くの公共投資、新技術の広範囲にわたる採用、農業技術と品種の多様性が、必要である。この視点は、食糧農業機関(FAO)によるローマで開催した2050年にはどのようにして世界中に食させるかについての高度専門家によるフォーラムの結果をTechnology Challenge紙上に発表した。FAOは、引き続き努力すべき分野を以下のように示した。

  • 農業投資の農家の利用性を向上
  • 改良品種の普及
  • 農業への研究開発投資の強化
  • 「収量格差」の解消


FAOフォーラムは2009年11月16-18日の食糧保証世界サミットの準備会である。


FAOからのプレスリリースは、以下のサイトにある。
http://www.fao.org/news/story/en/item/35686/icode/

食糧保障への気候変動のインパクト 
気候変動がもたらすと考えられる食糧安全保障の上の結果は、何だろうか?人間の幸福のために否定的な結末をなくするようなやるべきことは、何だろうか?「途上国における気候変動の農業への影響への対応策に関するレポート:そのためのコストは?」が国際食料政策研究機関(IFPRI)から出版された。それによると気候変動は、農業及び人類の暮らしにネガティブな影響が出るとしている。「子供たちの健康と良い暮らしに対するネガティブなインパクトが出ないように十分なカロリーを保証するには$7.1-7.3億USDにのぼる非常に大きな農業生産への投資が必要であるとこのレポートで述べている。
気候変動シミュレーションによる作物生産モデルによると以下のような指摘がなされている。
・   発展途上国で気候変動が主要穀物の収穫減少をもたらす。特に南アジアで大きな影響が予想される。

  • 気候変動は、この地域での潅漑作物への影響は様々と予想されるが、南アジアの潅漑作物の全ての収穫量が大きく減少すると予想される。
  • 気候変動は、最も重要な作物である。イネ、コムギ、トウモロコシ、ダイズに更なる価格上昇をもたらす。

2050年に得られると考えられるカロリーは気候変動がないとしたものよりも低下するのみならず、もう既に2000年のレベルよりも途上国全域で低下している。

全報告を以下のサイトから入手できる。 http://www.ifpri.org/publication/climate-change-impact-agriculture-and-costs-adaptation

2009年度世界飢餓指数
コンゴ民主共和国、ブルンジ、エリトレア、シエラレオネ、チャドとエチオピアを含む約29カ国は、飢えが切迫したかとても切迫に近いレベルがある。その上、13カ国は、1990年以来より高い飢えレベルにあった。飢えの高い率は、男女不平等に強くリンクしており、特に読み書きの能力と教育受けられることと強くリンクしている。国際食糧政策研究所(IFPRI)、Welthungerhilfe氏とConcern Worldwide氏による2009年度の世界飢餓指数は、これらのことを示している。
「低収入の国は、食物と財政危機によって損害を与えられている。」と、報告の筆頭著者で広報の責任者であるクラウスフォングレンマーが説明した。また、「この危機が極めてはっきりと貧しい人々の購買力と収入増強の機会を減少している。つまり、この人々はその収入の70%を食糧に使い、一方食糧か価格が数年前から上昇しているのである。」と述べている。

IFPRI のプレスリリースは以下のサイトにある。 http://www.ifpri.org/pressrelease/2009-global-hunger-index-calls-attention-gender-inequality-need-empower-and-educate-wom

Borlaug博士の名誉を讃える受賞者ホール
米国、アイオワ州の前デモイン公立図書館世界食糧賞財団に移転され、Borlaug博士の人道的遺産を讃えてthe Norman E. Borlaug 受賞記念ホールへと変わる。
「受賞者ホールは、ノーマンボーローグ博士の遺産と精神が22世紀にも飢えとの戦いにおいてボーローグ博士のような業績を上げ続けることになる。」と、Kenneth Quinn大使(世界食糧賞財団会長)が述べた。
世界食糧賞財団のウエブサイトによると2980万ドルをかけて受賞者ホールが復旧されると、この建物は、偉大な農業上の成果を讃える博物館:Borlaug対話として知られているNorman E. Borlaug国際シンポジウムの開催場所;若手の為の世界農業賞機構;飢えと食糧安全保障の上で双方向展示を特徴とする教育施設;そして、その他の会議やコミュニティホールとしての利用として使われることになる。

詳しい情報は以下のサイトにある。http://www.worldfoodprize.org/press_room/2009/october/building-dedication.htm

*南北アメリカ *

Genuity SmartStaxの試験でトウモロコシオタバコガに効果があることを示した 
遺伝子組換え(GM)コーンの進行中の実地試験によるとGenuity SmartStaxは、中西部米国のコーン農民がオオタバコガに対抗できる見込みを与えた。試験は、オタバコガの被害が大きい東部カンサスで作物にオオタバコガ耐性を組み込んだものと組み込まなかったものの比較という形で行われた。
遺伝子組換えGenuity SmartStaxは、オオタバコガ耐性と種の除草剤耐性の遺伝子を組み込んであり、雑草の制御がよく行われ、かつ二次的なcorn ear diseaseの感染も減少した。その上Chism Craig氏、モンサント社の技術開発代表、はこのコーンが遅めに植えられると南部から移動してくるオオタバコガの被害を受けやすいことを観察した。子の試験でこの組換えコーンが遅く植えたコーンに対する虫害によりよい耐性を示した。この組換えコーンは、2010年には3-4百万エーカー導入される予定である。

詳しいプレスリリースは以下のサイトにある。http://monsanto.mediaroom.com/index.php?s=43&item=755

ARSは、病害耐性でアフラトキシン汚染のないトウモロコシ品種を提供
米農務省の農業試験場(Agricultural Research Service、ARS)の研究者は、ナイジェリアに拠点を置く国際熱帯農業(IITA)研究所と協力して、アフラトキシン汚染に対する抵抗の6種の新品種を開発した。アフラトキシンは、ヒトに対する最も有力な発癌物質の一つである。アフラトキシンは、落花生類、カッサバ、ヤムイモとコーンでアスペルギルス属真菌(特にA. flavus)によって生産される。
「これらの6品種は、研究所室内と実地試験でアフラトキシン蓄積を抑制した。」と、Robert Brown(ARS植物病理学者)が述べた。「これらの品種は、南部コーン黒葉枯れ病と南部のコーンさび病に対する抵抗を含む商業的に望ましい形質をもっていることも示された。」
ハイブリッドコーン品種は、IITAのBrown氏とAbebe Menkir氏の協力による10年余の成果である。協力者は、まず最初に探索選抜実験を行い、次いで米国の一番アフラトキシン耐性のある品種と中西部アフリカで発見したアフラトキシン耐性とを併せた。
Brown氏はカーネルタンパク質(PR-10)も特定した。そして、アスペルギルス属耐性コーン品種のそのタンパク質はA. flavusのmRNAを分解することでこのカビの生育を疎がすることを発見した。これらの結果は、このタンパク質がA. flavus成長とアフラトキシン汚染に対してコーン抵抗で重要な役割を演ずるかもしれないことを示します。

詳細は以下のサイトにある。http://www.ars.usda.gov/is/AR/archive/oct09/corn1009.htm


メキシコはGMコーンの試験を承認
メキシコの政府は、国で最初の遺伝子組換えコーンの最初の圃場試験を承認した。農業省(SAGARPA)と環境(SEMARNAT)省の共同声明によると、圃場試験は「特定の地域(他の収穫から全く隔離される)に限られていて、政府による厳重にモニターされた条件」下で試験される。しかし、圃場試験を行う会社や機関及び実施する場所には言及していない。両省は、35の許可証申請がなされていると述べた。
メキシコは世界の4番目に大きなコーン生産国で、国連食糧農業機関(FAO)によると毎年約2250万トンを生産している。

声明(スペイン語)は以下のサイトにある。t http://www.presidencia.gob.mx/prensa/?contenido=49586


* アジア太平洋 * 

アジアはバイオテク及び知識運用に挑戦する必要がある
農業関連分野の挑戦、例えば食糧安全保障、環境持続性、気候変動やエネルギー保障は、アジア諸国にとって引き続き実施しなければならないものである。これらの挑戦は、考えられるオプションとして作物バイオテクノロジーに向けられるものである。アジア諸国は、バイオ関連知識を生産性の向上、プロセスの流れにおけるギャップ特定化など製品開発から利用までにおいて十分に活用する必要がある。このようなことに対して知識運用が重要であり、それがイノベーションを生み、生産性の向上に向けての実行が可能ならしめるところである。これらがタイ、バンコクで行われた農業バイオテクノロジーにおける知識運用:アジアにおける経験に関する国際会議の中身である。
Dr.Thira Sutabutra、タイ国研究会議議長の基調講演で知識運用が、各国での知識共有を促進する一連の流れ構築することに重要なことであると強調した。ワークショップのテーマは以下の通りだった:農業バイオテクノロジー、知識運用(KM)、農業バイオテクを運用するためのバイオセーフィティ政策、KMのための能力建築とKMとネットワークを構築するための基盤整備。
80人以上の参加者は、KMのための現在及び潜在的イニシアティブが議論されたワークショップに出席した。これらは、学習する素地の促進、知識資源を得るための方策の改善を通しての知識利用と知識の交換と創造を行う知識創造基盤作りを含むものである。オーガナイザーは、農学分野の大学院と研究を行う東南アジア地域センターと国際アグリ事業団(ISAAA)であった。

ワークショップの詳しい情報は、以下にメールを出して下さい。 jap@agri.searca.org.

組換え作物のインパクトに関する国際会議
来るべき希望と見込みを測る:組換え作物の社会経済学的及び環境へのインパクト評価と題する国際会議が2009年9月29,30日にバンコックで開催された。この会議は、参加者と組換え作物のインパクト評価の専門家がインパクト研究成果及びそれらのインパクト特性を評価するツールに関する議論を行える場を提供した。議論の重要な結果の、3は、以下のようになる。インパクト評価は、発展途上国で限られた組換え作物で行われた; 実行されたのは、中国を含む、3カ国である;直接的な影響だけに集中した。そのうえ、組換え作物が如何に持続可能な農業を促進するかという環境へのインパクト評価への努力は少なかった。適当な「標準的な手順」または方法論の必要性もハイライトされた。これまでのインパクト評価研究は、まだ狭い範囲に限られていて、管理効率改善、改善された産出高の保証、昆虫や病害による被害が少なくなるという平穏な心などの間接的な便益が取り上げられていない。
会議はアジアから90人の参加者があった、また会議の組織委員会は、東南アジア地域センター(SEARCA) 、国際アグリ事業団(ISAAA)、国際食糧政策研究機構(IFPRI)であった。

会議の要旨集についてはDr. Mercedita A. Sombilla (masombilla@agri.searca.org) または、 Ms. Roberta V. Gerpacio (rvg@agri.searca.org).と連絡を取って下さい。

GMワタと従来のワタとの収量の比較
農務省がKununurraの近くの農業および食糧省GMワタ試験をオーストラリアほかの商業的ワタと行ったと西オーストラリアの農業省がプレスリリースを行った。で言いました。Penny Goldsmith氏(研究部役員)は、試験した品種のワタの商業レベルでの収穫は1ヘクタールにつき9.7 balesで、2007-08のオーストラリアの平均(9.3 bales)よりわずかに高かったと述べた。「15の遺伝子組換えワタの品種は、4月に研究圃場に植えられた。すべてがRoundup除草剤抵抗性、オオタバコガとタバコガ抵抗性の組み合わせのものであった」と幼虫と芽を食う毛虫さらに抵抗性を与える遺伝子の組合せを運んだ」とGoldsmith氏が述べた。
Goldsmith氏によると、Ordでのワタの栽培は1974年に主要害虫場が制御不能になったため断念されていた。「その後開発される新しい遺伝子組換え品種が、全州で導入されている」とも述べた。
西オーストラリアの農業食糧省は、オーストラリアの95%のワタは、組換え品種であり、そのほとんどが輸出されていると述べた。

全報告が以下のサイトにある。t http://www.agric.wa.gov.au/PC_93631.html?s=1001


日本は、2500万米ドルを国際イネ研究に投資
旱魃耐性で高収量のイネを開発を促進するために2000万米ドルをそして更に500万米ドルをアフリカのイネ研究専門家のextensionトレーニングのために投資すると日本が決めたとIRRIの専門家がプレスリリースで述べた。資金提供は、IRRI、アフリカライスセンターと彼らの全国パートナーに提供される。
「国際イネ研究への大幅な支援増加を日本が決めたことは、地球規模での食糧保障に直面している時のものとして重要であり、特に気候変動のような大きな脅威に直面している時のものとして場である。」と、IRRIの理事会議長のElizabeth Woods博士が述べた。また、「基金を増加する日本の決定は歓迎するものであり、世界のコメを消費する人々に十分なコメを確保するために日本で我々の共同研究者ともに働くことを楽しみにしている」とも述べた。

プレス発表は、以下のサイトにある。 http://beta.irri.org/news/index.php/press-releases/japan-commits-$25-million-to-international-rice-research.html


タイの組換えパパイヤの事前分析
タイが遺伝子組換え(GM)テクノロジーの使用を認可することになるならば、6億5000万ドルから15億米ドルの経済的向上を遺伝子組換え作物導入の最初の10年以内に生み出せる。これらの利益は、小規模のパパイア農民に主に生じて、輸出市場の損失さえも回復できる。これらは、Kasetsart大学のOrachos NapasintuwongとAuburn大学(USA)のGreg TraxlerによるタイのGM パパイヤ導入の記事:事前インパクト評価のハイライトである。
輸出市場の損失と健康と環境へのリスクに対するタイの懸念は、著者によると、タイでのバイオテクノロジーの支援の不確実性と決断の欠如につながるものであった。

e-journal AgbioForum の全文と他の記事を以下のサイトから得られる。http://www.agbioforum.org/v12n2/v12n2a05-napasintuwong.htm

GM青いバラが来月日本の市場に現れる
日本のサントリー社は、世界初の青いバラを売りはじめると発表した。20年以上の研究の成果である青いバラは、1本2,000-3,000円(22-33米ドル)で発売中である。
栽培者は数千年の間も各種のバラを育成してきた。例えばさまざまの大きさの花や色彩のものを育成してきた。しかし、バラには青い色素が本来欠如しているので、青いバラは不可能と同義になった。園芸家は、青いバラを植物育種における神聖なgrailとしてきた。ビクトリア朝時代には青いバラは、不可能への挑戦を意味した。Rudyard Kipling氏でさえ、青いバラに対するどうしようもない不可能な願望の詩を作った。
オーストラリアのFlorigene社と共に、サントリーは、パンジーとツクバネアサガオからelphinidin(青い色素)の合成に重要な役割を果たす酵素を規定するフラボノイド3’5′-ヒドロキシラーゼとアントシアニン5-アシルトランスフェラーゼ遺伝子をバラで発現することによって、不可能を可能にした。
プレスリリースによるとサントリーは、新しい品種アプローズ(Applause)を「特別な行事(例えば結婚記念日と誕生日)での豪華なプレゼントとして推薦されるもの」として発表した。

詳細は以下のサイトにある。 http://www.suntory.com/news/2009/10592.html

オーストラリアの科学者がコムギふ枯病耐性小麦品種を特定した
真菌Fusarium pseudograminearumに起因する小麦と大麦のコムギふ枯病は、オーストラリアで毎年790万オーストラリアドル(7100万米ドル)の損失を与えている重病である。オーストラリア連邦科学研究機構(CSIRO)の研究者は、現在、この恐れられる病気に抵抗力がある小麦と大麦品種を特定したと述べた。
CSIROのChunji Liu博士と共同研究者は、世界中から集めた2400品種以上の小麦と1000品種の大麦を調べ、この真菌病に抵抗力があるものを探した。「クラウンRotに抵抗を示す小麦と大麦品種の抵抗性を在来種に導入する予備育種を行っており、育種会社に送り込むように進めている」とLiu博士が言った。病気と戦う上で小麦と大麦の品種を開発することは、重要な戦略である。輪作は、フザリウム感染症には限定的な効果しかない。その理由は、雑草類に残った菌が輪作されたときにまで残って再感染するからである。
Liu博士は、CSIROの科学者がフザリウム属の侵入機構、感染症への抵抗機構、遺伝子レベルでの防御機構や収量減少に関する研究を行っていると述べた。

原報告は以下のサイトにある。http://www.csiro.au/news/Rot-resistant-wheat-could-save-farmers-millions.html


*ヨーロッパ*

Mon89034 x NK603輸入に対するEFSAの意見
モンサント社の害虫耐性または/及び除草剤耐性GMトウモロコシMon89034 x NK603を食品および飼料として市場に出すこと及び輸入や加工についての科学的意見がEFSAから報道された。
そして、供給用途は重要です、そして、モンサントによる処理アプリケーションはヨーロッパのFood Safety局(EFSA)によって最近発表されました。EFSA GMO Panelは、GM植物とそれから派生する食物と飼料のリスク査定に関する科学パネルに出ている指針と多重形質を持つGM植物のリスク評価のための指針にに従って適正に応募された申請書を審査した。
概要によるとEFSA GMO パネルは加盟国で取り上げている科学的なコメントに対するトウモロコシMON89034 x NK603に関する現在得られている知見からみて、トウモロコシMON89034 x NK603がヒトと動物の健康と環境に対する潜在的影響に関するその非GM対応植物と同じ安全性があると考えるとしている。または、EFSA GMO パネルは、その意図的な利用によってヒトと動物の健康と環境に対する潜在的影響に関する前後関係の環境に関してどんな悪影響を及ぼしもしそうにないと結論した。


詳細は以下のサイトにあります。:http://www.efsa.europa.eu/EFSA/efsa_locale-1178620753812_1211902910348.htm


遺伝子組換えトウモロコシ品種は在来種よりも影響は少ない
従来のコーンと対比してGMコーンにより起こりうるインパクトについてEUの支援のもとに環境アセスメントをスペインのGirona(スペイン)で行った。12のコーン畑には2004年にGMコーンを植え、次のシーズンに従来の種で植えた。その結果によると自生したGMコーンはヘクタール当たりの30本以下であり、少ないことが示された。花粉飛散範囲が従来のコーンより非常に短いので、花粉分散も限定されている。従って交雑は極めて低い。
偶発的GM種子の混入は、0.016から0.16%の範囲にあり、これはヨーロッパの法律の0.9%の十分に下にある。レポートは偶発的なGMの存在が非常に低いと結論し、それゆえに、標識化は必要ないとした。そのうえ、交雑と偶発自生は、農業技術によって簡単に制御できるので、リスクはほとんどないと考えられるとした。

報告は以下のサイトにスペイン語である。at http://www.fundacion-antama.org/noticia/la-probabilidad-de-impacto-del-ma-z-mg-sobre-el-convencional-es-muy-baja

王立協会の報告は世界的な農業の持続的強化を提案
「環境に悪影響を与えず、しかも耕作地を増やさないで収量を上げる世界的農業における持続的な強化策」が必要である。「利益の飛躍:科学と世界的農業の持続的強化」と題する英国王立協会報告に取り上げられている最重要点である。
この研究では、農業、国際発展、保護生物学と植物科学専門家による専門調査委員会によって行われ、食用作物に対するに生物科学の貢献を調べた。生産を上げるには多様な技術が必要であるとの総合的な提言を結論とした。その主なるものは以下のようにまとめられる:

  • 英国学術会議(RCUK)は、世界的な食糧保障への学術分野横断的な挑戦を優先的に行うべきである。かなりの成果を上げるには少なくとも10年間に20億ポンドの予算確保が必要である。
  • RCUKは生態学に基盤をおいた研究と作物の改良や土壌管理に視点をおいた農学及び関連した科学への支援を増やすべきである。
  • 大学は資金提供機関と共同して食用作物の持続的増強に関連する;例えば農学、植物生理学、病理学と総合植物学、土壌科学、環境微生物学、雑草学、昆虫学などの課題の減少を逆行させることが必要である。

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報告は、以下のサイトからダウンロードできる。 http://royalsociety.org/document.asp?tip=0&id=8825

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研究
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小麦遺伝子をトウモロコシ胚乳で発現すると湿式粉砕の効率が上がる
トウモロコシの種子のテクスチャーは、(それは固い胚乳と柔らかい胚乳の割合に依存)さまざまの最終用途、例えばデンプンの収量、乾燥粉砕或いは湿式粉砕による粉化などに影響を与える重要な形質である。トウモロコシの実は、テクスチャーに基づいて一般的なクラスに分けが行われる:フリント、ポップコーン、粉、デントとスイートなど。より柔らかいテクスチャーのデントは湿式粉砕にこうてきであり、米国の飼料でないものの最大ものである。米国では、ほとんど大部分が湿式粉砕である。デンプンの抽出率が高い柔らかいハイブリッドトウモロコシ品種の開発はトウモロコシ加工業者にとって価値の高いものである。
モンタナ州立大学とワシントン州立大学の研究者は、胚乳で特異的に発現する小麦由来のpuroindoline遺伝子((Pina and Pinb)を入れてトウモロコシの種子のテクスチャーを変え且つ湿式粉砕効率が良くなった品種を開発した。PINタンパク質のトリプトファンの多い領域がPINが澱粉顆粒面脂質と結合するのを可能にしてこびりつきがないように働いている。
トウモロコシの種子のテクスチャー分析によるとPINの発現で澱粉とタンパク質の間の接着力を減少させて、トウモロコシ種子の硬さを著しく減少させた。研究者はまた澱粉澱粉純度に悪い影響を与えることなく平均4.86%デンプン収量が増加することを見出した。
Plant Biotechnology Journal isの全報告を以下のサイトから取れる。http://dx.doi.org/10.1111/j.1467-7652.2009.00438.x



ササゲの遺伝子地図が解明された
カリフォルニア大学リヴァーサイド(UCR)の科学者を指導者とする研究チームは、ササゲ(Vigna unguiculata)の高精度のコンセンサス連鎖地図を解明した。ササゲはタンパク質が豊富なマメ科作物で約1億人の食糧や経済を支える役割を果たしている。その丈夫な性質からササゲはアジア、ラテンアメリカ、特にサブサハラ地域のように旱魃の起こりやすいところで食糧保障するための鍵作物となっている。その重要性にもかかわらず、オーファン作物とみなされ限られた遺伝子解析が行われているにすぎない。
研究者は、何千ものマーカーを特定している183,000以上の発現配列のタグ(ESTs)に関する配列データーを統合した。これらのESTsについてSNP探索から約10,000の高い信頼性のあるSNPを得て、これをもとにIllumina GoldenGate遺伝子アレイを開発した。次に6種の地図作成用の集団からの741の組換え交配種にアレイを当てはめたところ、約90%のSNPsがササゲの役に立つ遺伝子マーカーであると判明した。約900のこれらのマーカーがコンセンサス遺伝子連関地図に落とし込めた。出来上がった地図は、11の連鎖グループからなる680cM(センチモルガン)あり、平均のマーカー距離は0.73cM であった。ササゲは、ゲノムレベルではダイズに「かなりの数の遺伝子が種の間で保存されている」とUCRのIllumina GoldenGate氏が述べた。「ササゲ染色体のマーカーを見ると、マーカーのDNA配列に基づいてダイスのゲノムと相互比較をすることができる。そして、これらの種の間で得られた情報の相互交換が可能になる。たとえばササゲの重要な情報をダイズに移すことやその逆も可能になる。」とも述べている。

原報告は以下のサイトにある。t http://www.universityofcalifornia.edu/news/index.php
公開されているPNASの報告は以下のサイトにある。http://dx.doi.org/10.1073/pnas.0905886106



組換えDNAとBtタンパク質の野生のイノシシとシカに摂取・散乱後の行方
自然保護のためのドイツ連邦アカデミーからの資金提供を受けて、ミュンヘン工科大学(TUM)の研究者は、ダマジカ(Dama dama)とイノシシ(Sus scrofa)がどのように遺伝子組換えトウモロコシを代謝するかを詳細に調べた。特に科学者は組換え作物の残渣がシカやイノシシの肉に蓄積するか、またこれらの動物が糞便を通して広げたかどうかを調べようとした。TUMの科学者によると、いずれのものも答えは、いいえだった。
Heinrich Mayer氏と共同研究者は、屋外の構内に住んでいるダマジカに餌をやり、野生イノシシを小屋に入れて続けて数週間遺伝子組換えトウモロコシ殻とトウモロコシ種子を与えた。摂取されたDNAの分解性を調べるために、GM-トウモロコシの特定の遺伝子の断片を見つけるために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用い、また、ELISA法でCry1Abタンパク質の検出も行った。
ダマジカの消化管、内臓、血と筋肉からのサンプルは、すべて組換え構成要素の存在が陰性だった。「結論として、GMトウモロコシ摂取後、cry1Abに固有の遺伝子断片もCry1Abタンパク質もダマジカの消化管で見つけられず、GMトウモロコシは完全な消化されたことが示された。」と、Mayer氏と共同研究者がEuropean Journal of Wildlife Researchに掲載された報告に書いた。研究者は、GMトウモロコシの遺伝子の小さな断片をGMで育てられたイノシシの消化管に発見た。しかし、消化管の外側に、科学者は全く痕跡を見つけられなかった。
Mayer氏と共同研究者は、また糞便から出芽できる無傷の実を集めた。彼らは、イノシシはGMトウモロコシの未消化の実を0.009%、在来種は、0.015%をそのまま排出したと報告した。ダマジカは、トウモロコシを十分に消化した。:1粒も無傷で発芽できるものはみつからなかった。

European Journal of Wildlife ResearchMammalian Biologyに掲載された報告はそれぞれ以下のサイトから得られる。http://dx.doi.org/10.1007/s10344-007-0104-4http://dx.doi.org/10.1016/j.mambio.2008.07.002



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バイオ燃料補遺
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バイオ燃料用のトウモロコシ生産の水質へのインパクト
http://ascelibrary.aip.org/vsearch/servlet/VerityServlet?KEY=JOEEDU&smode=strresults&sort=chron&maxdisp=25&pjournals=IJGNAI%
2CJAEEEZ%2CJAEIED%2CJBENF2%2CJCRGEI%2CJCCOF2%2CJCCEE5%2CJCEMD4%
2CJLEED9%2CJENMDT%2CJOEEDU%2CJGGEFK%2CJHEND8%2CJHYEFF%2CJITSE4%
2CJIDEDH%2CJMENEA%2CJMCEE7%2CJPCFEV%2CJPEPE3%2CJSENDH%
2CJSUED2%2CJTPEDI%2CJUPDDM%2CJWRMD5%2CJWPED5%2CLMEEAZ%
2CNHREFO%2CPPHMF8%2CPPSCFX&pyears=2009&possible1=Chaubey%
2C+I&possible1zone=author&OUTLOG=NO&viewabs=JOEEXX&key=DISPLAY&docID=1&
page=1&chapter=0
(全文入手には購読契約する必要があるかもしれない) http://www.thebioenergysite.com/news/4632/more-corn-for-biofuels-would-hurt-water

Purdue大学の農業・生物工学部(アメリカ合衆国)の研究者は、米国における輸送に使われるバイオ燃料に向けてのトウモロコシの増産に伴う土地の運用の変化が長期にわたる水質に与えるインパクトを定量的に評価するためのモデルアプローチを行った。
コーンの連作を行う土地は、コーンとダイズの輪作を行う土地と比較しsて水質レベルの低下がみられた。コーンの連作によって水中の窒素、殺菌剤とリン濃度は、より高かった。Indrajeet Chaubey氏、共同研究者で農業・生物学工学準教授、によるとコーン-大豆輪作からコーン連作へのシフトは、より高い沈殿物損失をもたらす。翻ってみるとこれは「より多くの殺菌剤とリンが沈殿物とともに動いて水に入るためであろう」ということになる。モデルの結果も「バイオ燃料に向けてのトウモロコシの増産に伴う土地の運用の変化が長期にわたる水質に与えるインパクトにさらなる研究がひつようである」ことを指摘している。研究の詳細は彼らのEnvironmental Engineering(上記のURL)ジャーナルで発表された報告から得られる。

植物のスベリン生合成のキー酵素がストレス耐性バイオエネルギー作物への道を開く
http://www.pnas.org/content/early/2009/10/21/0905555106.abstract?sid=64206e6b-4244-40fc-8697-4c5efcff3ab2
(全文入手には購読契約する必要があるかもしれない) http://www.thebioenergysite.com/news/4760/enzyme-to-help-biofuel-crops-in-harsh-environments

スベリン(suberin)は、陸生植物の種子の細胞壁と根系にあるポリエステルポリマーである。それは病原体または有害物質に対する保護バリアの働きする、その一方で、水と栄養分の摂取を容易にする。スベリンは、また植物が環境ストレス(例えば乾燥であるか高い塩性の土)対抗する重要な役割があることも報告されている。モデル植物のシロイヌナズナ使って、Brookhaven National Laboratory(アメリカ合衆国)の科学者は、hydroxyacid hydroxycinnamoyltransferase(HHT)という酵素がスベリン生合成のためのもので、スベリンが不足している植物は「野生型より非常に液中で塩をよく透過する」ことを観察した。「スベリンは、植物が陸生するのに適合するのに重要な役割を演じている」ことをあきらかにした。Brookhavenの生物学者Chang-Jun Liu氏によると、「重要な生合成酵素を特定して、スベリン生産を理解することは、特にバイオエネルギー作物のために提案された痩せた土地での植物の栽培に重要になる。」としている。バイオ燃料作物が痩せた土地で生長するのを可能にすることは、食糧生産のために肥沃な土地を確保する助けになる。研究のもう一つの面白い点はスベリンpolyphenolicsが同じ生合成前駆をリグニン(リグノセルロースバイオマスでセルロース繊維を囲んでいる堅い化学的ラッピング)と共有することが示されたことである。しかし、両者は、異なる酵素によって作られる。このことは、処理しやすく且つバイオ燃料にし易いオーダーメイドのバイオエネルギー作物を開発すると同時に「光合成の炭素の回路を変更してカーボン-吸収に向け直す」方向に向かうことになる。」完全な調査は、PNAS(上記のURL)に発表される。

バイオエネルギー作物の直接・間接土地利用の温室効果ガス放出へインパクト
http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/1180251
(全文入手には購読契約する必要があるかもしれない) http://www.thebioenergysite.com/news/4801/carbon-impact-of-biofuel-displacing-food-crops

バイオ燃料に関連した問題のうちの1つは、バイオエネルギー生産に直接または間接に土地を利用することに起因するかもしれない温室(GHG)放出の大きさである。直接の土地利用に伴う放出は、「バイオエネルギー生産だけに起因する土地からの発生」、一方間接的な土地利用による放出は、「耕地または牧草地でバイオ燃料生産が他の土地での農業活動を置き換えるので、更なる土地利用の変化とカーボン損失の全体としての増加を引き起こスことに起因」する。アメリカ合衆国、ブラジル、中国からの科学者の国際的チームは、拡大される21世紀の世界的なセルロースバイオエネルギープログラムによる想定される土地利用変化シナリオによる直接的および間接的な影響に起因する温室効果ガス(GHG)放出物に関する検討を行った。経済と生物地球化学を組み合わせたモデルを使用して以下の結論をえた。(1)間接的な土地利用への変化による大きな温室効果ガス放出物は、「世界的なバイオ燃料プログラムの想定外の結果」による。そしてこれらの結果(もしも特に、これらが森林を取り除くこと)が「問題解決よりむしろ気候変動問題」を付け加えることが現実になりえる。()将来バイオ燃料作物を栽培するためにより多くの肥料を投下すると温室効果がより高い亜酸化窒素が二酸化炭素を凌ぐ排出をすることになりえる。(3)「森林を保護して、窒素肥料の利用を最善にすることを促す世界的な温室効果ガス排出方針は、バイオ燃料生産に伴う温室ガス放出を激減させることになる。
完全な研究報告は、Science(上記のURL))の10月号で発表される。

HOBIA NEWS 276号

HOBIA NEWS No.276

目次
●  HOBIA定款の一部を変更
●  お知らせ
  ■  御社の紹介をさせていただきます。
●  編集後記

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HOBIA NEWS 275号

目次
●  全国バイオ団体交流会の報告 2010年1月14日JBA会議室にて
●  お知らせ
  「お応えします分析のコツセミナー in 札幌」のご案内
●  編集後記
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「世界の遺伝子組換え作物の商業栽培に関する状況:2009年」要旨

クライブ・ジェームズ博士(ISAAA創設者・理事会会長)

ノーベル平和賞受賞者の故ノーマン・ボーローグ博士に捧げる

ISAAA 概要書第41号は、遺伝子組換え作物の商業栽培が初めて行なわれた1996年以来、筆者が執筆する年次状況報告の14冊目に当たる。第41号は、ノーベル平和賞受賞者でありISAAA創設に寄与したノーマン・ボーローグ博士に献呈されている。この要旨は、2009年の主な変化を端的にまとめたものである。詳細はhttp://www.isaaa.orgを参照のこと。

遺伝子組換え作物のもたらしている穀物、経済、環境、福祉におけるたゆみない堅実な向上の結果、2009年の遺伝子組換え作物の栽培を手がけた大規模、小規模な農家は25カ国で1,400万人となり、栽培面積は1億3,400万ヘクタール(3億3300万エーカー)と過去最高に達した。これは2008年と比較して7%、900万ヘクタール(2200万エーカー)の増加になる。「形質ヘクタール」※で考えると、2008年の1億6,600万ヘクタールから8%、1400万ヘクタール増加して1億8,000万ヘクタールになった。これは1996年と比較すると実に80倍であり、遺伝子組換え作物は近代農業史において最も急速に普及した農作物技術と言える。この増加は、世界各地の生産者が遺伝子組換え作物に寄せる大きな信頼を反映している。1996年以来、生産者が継続的に遺伝子組換え作物の栽培面積を増やしてきたのは、遺伝子組換え作物が多大な恩恵をもたらすからである。

※複数の形質を併せ持つスタック品種について、栽培面積×形質数で算出したもの。例えば、2つのBt特性を併せ持つスタック品種では、形質ヘクタールはその作物の栽培面積の2倍とカウントする。

栽培面積は、遺伝子組換え主要作物4種類すべてにおいて過去最高に達した。大豆は、世界全体の栽培面積9,000万ヘクタールのうち4分の3以上が遺伝子組換えになり、ワタは同3,300万ヘクタールのほぼ半分を占めるようになった。トウモロコシは同1億5,800万ヘクタールの4分の1超、ナタネは同3,100万ヘクタールの5分の1以上を遺伝子組換えが占めている。遺伝子組換え作物の主要栽培国においては、2008年も主要作物における採用率が高かったが、2009年も引き続き栽培面積が増加した。たとえばインドでは、Bt(害虫抵抗性)ワタの採用率が2008年の80%から2009年には87%に上昇した。カナダでは遺伝子組換えナタネの採用率が2008年は87%だったが、2009年には93%にまで上がっている。遺伝子組換え大豆は全ての遺伝子組換え作物の栽培面積1億3,400万ヘクタールの52%を占め、最も普及率の高い作物である。形質別に見ると除草剤耐性が全体の62%を占め最も多い。スタックも遺伝子組換え作物の21%と重要性が増してきており、現在11カ国(うち8カ国は発展途上国)で採用されている。

遺伝子組換え作物を栽培している25カ国(ドイツは2008年に栽培を中止、2009年からコスタリカが栽培開始)の内訳は、発展途上国が16カ国、先進国が9カ国である。上位8カ国はいずれも栽培面積が100万ヘクタールを超え、アメリカ(6,400万ヘクタール)、ブラジル(2,140万ヘクタール)、アルゼンチン(2,130万ヘクタール)、インド(840万ヘクタール)、カナダ(820万ヘクタール)、中国(370万ヘクタール)、パラグアイ(220万ヘクタール)、南アフリカ(210万ヘクタール)、となっている。残る2,700万ヘクタールを栽培する国は、面積の多い順にウルグアイ、ボリビア、フィリピン、オーストラリア、ブルキナファソ、スペイン、メキシコ、チリ、コロンビア、ホンジュラス、チェコ共和国、ポルトガル、ルーマニア、ポーランド、コスタリカ、エジプト、スロバキアとなる。1996年から2009年までに栽培された遺伝子組換え作物の累計面積はおよそ10億ヘクタールとなっている(正確には9億4,990万ヘクタール、23億エーカー)。
注目すべきは、世界全体の栽培面積のほぼ半分(46%)を発展途上国が占めていることである。2015年までには先進国全体の栽培面積を超え、5割を超えると予測される。2015年はミレニアム開発目標達成の年であり、飢餓と貧困を半減させることが目標の一つとなっている。遺伝子組換え作物はすでにこの目標達成に大きな貢献をしているだけでなく、将来に向けて計り知れない可能性を持っている。

また遺伝子組換え作物の栽培に従事する1,400万人の農家のうち、90%に当たる1,300万人は小規模で資源に乏しい農家である。こうした生産者はBtワタなどの遺伝子組換え作物の栽培によってすでに恩恵を受けており、近い将来に商業化予定の遺伝子組換えイネなど新しい作物からも利益を得られる可能性がある。

2008年のISAAA概要書では、遺伝子組換え作物の新しい波が訪れると予想していたが、2009年にはこれが早くも現実のものとなりはじめた。それを決定づけたのが、2009年11月27日、中国政府が国内で開発し、権利を保有するBtイネおよび高フィターゼトウモロコシに関して、バイオセーフティ証明書を発行したことである。これによって作物登録の道が開かれ、2~3年後には商業化が可能になると思われる。イネは世界で最も重要な作物であり、中国国内だけで1億1,000万世帯(1世帯の構成人数を4人とすると4億4,000万人)の生産者が、直接的な利益を得ることができる。さらにアジア全体で2億5,000万世帯、10億人いるとされるイネ生産者も恩恵を受けることができるだろう。イネ生産者の平均栽培面積は3分の1ヘクタールで、世界でも最貧の生活を強いられている。しかしBtイネによって生産性が向上すれば、貧困は緩和されると同時に農薬使用量も減らすことが可能となる。気候変動が起きている現在において、持続可能な社会の構築にも貢献できるはずである。イネが食用作物として最も重要であるとしたら、飼料作物として重要なのはトウモロコシである。遺伝子組換えによる高フィターゼトウモロコシをブタに与えると、リンの吸収率が高くなって成長が促進され、さらに排泄物のリン含有量も減るため、汚染も減らすことができる。経済発展が著しい中国では食肉需要も増加している。現在、中国国内ではブタ5億頭(世界全体の半分を占める)、ニワトリやアヒルなどの家禽が130億羽飼育されており、高フィターゼトウモロコシの導入によって家畜飼料の質の向上が期待される。高フィターゼトウモロコシは、中国だけで1億世帯(4億人)もいるトウモロコシ生産者にも直接的な利益をもたらすはずである。イネとトウモロコシは世界全体にとっても重要な作物であり、また中国の影響力が強まっている現状を考えると、アジアのみならず世界の発展途上国にとって中国の経験が参考になるかもしれない。遺伝子組換え作物を積極的に取り入れる中国の姿勢は他の発展途上国のモデル的役割となり、食糧自給率の引き上げや農薬に頼らない持続可能な農業、さらには飢餓と貧困の軽減にも貢献できると考えられる。イネとトウモロコシは、それぞれ食用、飼料としてきわめて重要な作物であるため、中国政府主導で開発された2種類の遺伝子組換え作物は、中国はもちろんのこと、アジアや世界にも多大な影響を及ぼすものと思われる。

概要書第41号には、ジョン・ベネット博士による特別寄稿「遺伝子組換えイネ ― その現状と将来の展望」も収録されている。ベネット博士はオーストラリア、シドニー大学生物科学大学院名誉教授である。

2009年の注目すべき変化は、ブラジルがアルゼンチンを僅差で抜いて、世界で2番目の遺伝子組換え作物の栽培大国となったことである。2008年から2009年の同国の栽培面積は560万ヘクタール、率にして35%増加したが、これは世界のどの国よりも大きい伸びである。ブラジルが遺伝子組換え作物の世界的リーダーであり、将来に向けた成長の牽引役であることは間違いない。また世界最大のワタ生産国であるインドは、2002~2009年の年間にBtワタ栽培がめざましい成功を遂げ、採用率は2009年で87%に達した。Btワタはインドのワタ生産に革命を起こしたと言っても過言ではない。インドのBtワタ生産者が得られた経済的利益は2002年から2008年までで51億米ドル(4,590億円)にもなる。Btワタへの転換によって殺虫剤使用量も半減し、また収穫量も倍増した。かつてワタの輸入国だったインドは、いまや主要輸出国となっている。インド初の遺伝子組換え食用作物になると期待されるBtナスは、インドの監督機関によって商業化の勧告が行なわれ、現在は政府の承認を待っているところである。アフリカ3カ国でも引き続き前進が見られた ―2009年にという高い成長率を達成した南アフリカ、それにブルキナファソとエジプトである。ブルキナファソにおけるワタ栽培面積は、年には8,500ヘクタールだったが、年には11万5,000ヘクタールと14倍に急増した。前年比1,353%という伸び率は2009年の世界最高である。

2009年は、第1世代から高収量の第2世代への交代が行なわれた年でもあった。ラウンドアップ・レディー・2イールド大豆は、多くの開発者が研究してきた新しい種類の遺伝子組換え作物の第1号で、2009年にはアメリカとカナダで1万5,000人以上の農家が植え付けを行なった。栽培面積は50万ヘクタールを上回る。

遺伝子組換え作物に関する最新の世界的な影響評価によると、1996年から2008年までの経済的利益は519億米ドル(4兆6,710億円)となっている。その2大要因は生産コストの減少(50%)と、収量増加(1億6,700万トン、50%)である。とりわけ後者に関しては、仮に遺伝子組換え作物を採用しなかった場合、同じ収量を得るためにはさらに6,260万ヘクタールの農地が必要だったという試算結果が出ている。つまり遺伝子組換え作物は、土地の効率的利用を可能にする重要なテクノロジーなのである。同様に1996年から2008年までのあいだに殺虫剤の使用量は8.4%減少した。有効成分換算で3億5,600万kgの減少である。また遺伝子組換え作物によるCO2固定化は2008年だけで144億kgとなり、これは自動車700万台を減らしたのと同じ効果とされる(Brookes and Barfoot, 2010、近刊)。

2009年現在、遺伝子組換え作物を栽培する25カ国の人口を合わせると、世界の総人口の半数以上(36億人、54%)になる。栽培面積は1億3,400万ヘクタールで、世界の耕地面積全体(150億ヘクタール)の9%を占める。

遺伝子組換え作物の種子の市場規模は、2009年には世界で105億米ドル(9,450億円)だった。また遺伝子組換えの種子を用いて生産された収穫物の市場規模は、2008年にはトウモロコシ、大豆、ワタを合計して1,300億米ドルであり、年10~15%の割合で成長すると見込まれている。

1996年以来、食用および飼料用の遺伝子組換え作物の輸入や環境放出(栽培等)を法的に認可しているのは、遺伝子組換え作物を2009年に商業栽培している25カ国と、それ以外の32カ国を加えた計57カ国である。これまでに24作物、155の系統、計762の認可が出された。日本で開発された青いバラも2009年に認可が下りている。

2010年から2015年にかけては、遺伝子組換え作物の新しい潮流が生まれるものと期待される。第一に優先されるべきは、責任の所在が明確でコスト効率が良く、迅速で適切な規制システムの運用である。遺伝子組換え作物の開発・承認・採用に対する政治的な決意、経済や科学の面からの支援はますます強まっている。遺伝子組換え作物が世界的に採用される流れは慎重ながらも楽観的な状況であり、2005年にISAAAが予測したように、2006年から2015年までの商業化第二の10年間に、栽培国数、農家、栽培面積のいずれも倍増することは確実である(ISAAAは、2015年までに遺伝子組換え作物を栽培する国は40カ国、農家は2,000万人、栽培面積は2億ヘクタールになると予測している)。国際社会、とりわけアジア、ラテンアメリカ、アフリカの発展途上国のニーズに対応するために、新しい遺伝子組換え作物の供給は今後も拡大を続けると思われる。2010年から2015年までの実現が期待される、新しい遺伝子組換え作物/形質を一部紹介する。アメリカとカナダの、3つの形質を付与する8種類の遺伝子を持つSmartStax™トウモロコシ(2010年)。インドのBtナス(2010年)は政府の承認待ちであり、フィリピンのゴールデンライス(2012年)はバングラデシュおよびインド、さらにはインドネシアとベトナムでも採用される予定。中国では、遺伝子組換えイネと高フィターゼトウモロコシ(2~3年以内)。乾燥耐性トウモロコシ(アメリカでは2012年、サハラ砂漠以南のアフリカでは2017年)。窒素利用効率(NUE)が高い遺伝子組換え小麦は5年のうちに商品化される予定。

2008年に起きた食糧危機(30を超える発展途上国で暴動が発生し、ハイチとマダガスカルでは政権が崩壊した)を受けて、国際社会では食糧と安全保障に関する深刻なリスクへの認識が深まり、ドナーグループや国際的な開発機関、科学界、さらには発展途上国の指導者のあいだで遺伝子組換え作物を支持する動きが高まってきた。また生命を支えるという農業の本質的な役割と、公正で平和な国際社会に貢献する農業の価値についても、あらためて認識されつつある。とくに「従来の育種方法とバイオテクノロジーを併用して作物生産性を持続可能な形で強化し、食糧自給率と食糧安全保障を確保する」必要性が声高に叫ばれている。

ノーマン・ボーローグ博士が小麦で緑の革命を成功させたのは、ひとえにその高い能力と不屈の精神、それにひとつの目標 ― 単位面積当たりの小麦の生産性を引き上げること ― に焦点を定めた賜物である。またボーローグ博士は、あくまで実際の農業生産現場レベルでの生産性(実験農場レベルではなく)、国レベルでの生産性、また最も重要なこととして、それが平和と人道に貢献しているかどうかを評価して研究開発の成否を判断した。今から40年前の1970年12月11日、ノーベル平和賞受賞に際してボーローグ博士が行なったスピーチのタイトルは「緑の革命、平和と人道」だった。博士が40年前に果敢に挑んだこと ― 作物の生産性を高めること ― は今日我々がめざしていることと完全に一致する。ただし当時はなかった気候変動に直面する現在は、水や化石燃料、窒素など資源への依存を減らしながら生産性を倍増させる必要があり、課題はさらに困難になっている。遺伝子組換え作物に関わる国際社会が一致団結して「大きな挑戦」に取り組むことこそが、ノーマン・ボーローグ博士が築いた豊かな遺産に敬意を表する、最も適切かつ崇高な方法であろう。地球の東西南北のすべての半球において、官民セクターが足並みを揃え、少ない資源で遺伝子組換え作物を最大限に活用する努力を行なうべきである。ミレニアム開発目標で誓ったように、2015年までに貧困と飢餓と栄養不良を軽減することを最終的に目指さなくてはならない。偶然ではあるが、遺伝子組換え作物の商業化第2期にあたる10年は2006年から始まっており、終了するのが同じ2015年である。

締めくくりに、10億人を飢えから救ったノーマン・ボーローグ博士の言葉を引用する。博士が遺伝子組換え作物を熱心に支持したのは、作物の生産性を高め、貧困・飢餓・栄養不良を解消し、平和と人道に貢献できると見抜いていたからだ。博士はこう述べている。「この10年間に植物バイオテクノロジーは大きな成功を収めてきました。この技術は世界中で農作物の収量を高めると同時に、農薬使用を減らし、豊かな土壌の亡失あるいは土壌浸食を食いとめることに貢献しています。バイオテクノロジーの恩恵と安全性は、世界の総人口の半分以上を占める国々で、この10年間に証明されています。しかし、いまだに効率の悪い旧式の栽培手法しか選択肢のない国々もあり、これから求められるのは、そうした国の指導者の勇気です。かつての緑の革命、そして今の植物バイオテクノロジーは、増え続ける食糧需要を満たしつつ、未来の世代のために環境を守る上でも大いに役に立っている」。

全文は概要書第41号「世界の遺伝子組換え作物の商業栽培に関する状況:2009年」

第109回新年例会のご案内

会員の皆様にはご健勝にご活躍のことと存じます。

 さて、本年は、押し迫って開催された国際会議・COP15での環境問題の取上げ方、また、米ロの核軍縮折衝など、世界には変革が待ち受けているような気がします。同時に、バイオテクノロジーは、社会を豊にする技術として着実な広がりを見せています。 そして、HOBIAでは、初めて経済界から会長が就任いたしました。
 こうした中で、企画運営委員会では、これまでの新年交礼会と例会という組立てを改め、例会を充実させるべく三つの講演を用意しました。 また、例会中心にティーパーティでの意見交換・新年初顔合わせでの企画と
いたしました。 さらに、連携しているバイオ振興団体の方々にも広く参加を呼びかけておりますので、ティーパーティでは意見交換が盛り上がることを期待しています。 皆様のご参加をお待ち申し上げております。
 
◆ 日時 : 平成 22 年 1 月 26 日(火)
   講演会 13:30 ~ 16:35 
   ティーパーティでの交流会 16:40 ~ 18:00
◆ 場所 : JSTイノベーションプラザ北海道
    (札幌市北区北19条西11丁目)道立工業試験所南 
◆ 対象者 : HOBIA会員を中心に連携団体会員
◆ 主催 : NPO北海道バイオ産業振興協会 
◆ プログラム
  1.開場    13:30
  2.会長挨拶
  3.講演会
生命の根源物質5-アミノレブリン酸の醗酵生産と用途開発 
「生命の根源物質と呼ばれる5-アミノレブリン酸(ALA)、その用途開発の現況をお話いただきます」
 講師:SBIアラプロモ株式会社 取締役CTO 田中徹氏
 
● 株式会社アレフの環境への取り組みについて
「自社内における廃棄物のリサイクルや、持続可能な社会に向けて地域と連動した取組み、新しく始めた環境事業をお話いただきます」
 講師:株式会社アレフ 
    環境事業部システム開発ティーム 渡邊大介氏
 
健康食品の表示制度に係る国、道の取組状況について
「健康食品に関する北海道独自の表示基準の創設による、食品の有用性情報の店頭表示について、国への制度提案趣旨等をお話いただきます」
講師: 北海道経済部商工局産業振興課 主査 黒須成弘 氏
 
  4.閉会挨拶
  5.交流会開場
  6.来賓ご挨拶(予定)
   北海道経済産業局地域経済部長殿、
   北海道経済部商工局長殿、
   札幌市経済局産業振興部長殿、
   財団法人北海道科学技術総合振興センター事務局長殿
  7.閉会    18:00