事務局体制の変更連絡

企画運営委員会が日常運営を処理できるように、各企画運営委員に事業分担をお願いし、同時に増員を検討します。これに伴い4月1日から事務局長は置かれません。
²これに伴い事務部門は女性2名体制となります。午前10時から土生さん、午後2時から小玉さんが担当します。

クロマグロの完全養殖

近畿大学水産研究所准教授家戸敬太郎
クロマグロは最近養殖生産がとくに活発に行われている重要な養殖魚種であるが,乱獲による資源の減少が大きな問題となっている。近畿大学では1970 年から養殖技術開発を開始し,その後1974 年度に活け込んだ幼魚からの親魚までの本格的な飼育に成功した。1979 年にはこれらの魚が世界で初めて網いけす内で自然産卵した。この親魚はその後も産卵し,受精卵からの飼育が試みられた。
飼育実験は1979 年以降のべ10 数回にわたって試みられたが,仔魚期の初期減耗が激しいうえに,稚魚期までの飼育には成功してもそれ以後の減耗が激しく成魚にまで育てることはできなかった。
加えてその後11 年間にわたり,養成親魚からの産卵が途絶えた。
産卵行動がみられなくなってから12 年目の1994 年に親魚が待望の自然産卵を開始した。産卵は1998 年まで
の5 年間の間に4 シーズンで認められた。年毎に初期減耗の原因究明をすすめ,さらに海上の網いけすへ移動した
後の大量へい死の原因も解明した。これらの原因に基づいて,防止対策の開発をすすめた結果,卵から成魚までの飼育に成功し,2002 年にはいけす内で産卵された卵から育てたクロマグロが初めて産卵するいわゆる完全養殖を世界以上のように,クロマグロの種苗生産に関する研究開発を進めてきた結果,2007 年には完全養殖クロマグロ第世代を生産し,世界で初めて人工種苗約1,500 尾を養殖場に出荷した。さらに2008 年には7,000 尾以上の人工
種苗の出荷を実現した。今後は,さらに量産技術の開発を進め,天然資源に依存しないクロマグロ養殖の実現に貢献したいと考えている。

近畿バイオインダストリー振興会議&北海道バイオ産業振興協

開催日:2009 年7月16日開催場所:函館市産学官交流プラザ
テーマ「水産関係のバイオベンチャーあるいはベンチャー創出につなが
る技術開発」
近畿バイオインダストリーの方々をお迎えし、財団法人バイオインダストリー協会、財団法人JKA、一般財
団法人函館国際水産・海洋都市推進機構の協賛により、交流会が函館で開催されました。
今回は、58人の参加となり、北海道、近畿から各々2題の発表がされ、活発な討議が行われました。
要旨を下記のとおりとなります。
インターフェロンを応用した魚類ウイルス病に対する新しい免疫法:Poly(I:C)免
疫法
北海道大学大学院水産科学研究院海洋生物工学分野准教授西澤豊彦
魚介類のウイルス感染症は、水産増養殖業において大きな問題となっている。現在まで
種々のウイルス病ワクチンが開発されてきたが、日本で市販されているワクチンはマダイ
イリドウイルス(RSIV) 不活化ワクチンのみである。今回、魚類ウイルス病に対する新し
い免疫法として「Poly(I:C)-免疫法」について紹介する。Poly(I:C)-免疫法は、合成二本鎖
RNA であるPoly(I:C)を投与することで、魚にインターフェロン(IFN) を誘導させ、魚体
が抗ウイルス状態となっている間に、目的とする病原ウイルスに暴露させ、ウイルスに対する特異免疫を誘導させる
方法である。
非病原性の伝染性膵臓壊死症ウイルス(IPNV) に予め感染させたニジマスは、伝染性造血器壊死症(IHN) に対し
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高い抵抗性を示すことが知られている。これは、IPNV 感染により誘導されたIFN により魚が抗ウイルス状態になっ
ていたためと考えられる。また、このIPNV-IHNV 区の生残魚血清はIHNV に対する特異抗体を有し、さらに同生残
魚はIHNV による再攻撃に対しても高い抵抗性を示した(RPS:91.6 %)。すなわち、予めIPNV に感染させた魚を
IHNV に暴露することでIHNV に対する特異免疫が誘導されることが示された。
次に、IPNV の代替としてIFN 誘導物質であるPoly(I:C)を投与したところ、Poly(I:C)投与ニジマスはIHNV に対し
高い抵抗性を示し(RPS: 95.2%)、生残魚の血清からIHNV に対する特異抗体が検出された。さらに同生残魚をIHNV
で再攻撃したところ、1 尾の死亡も認められなかった。以上の結果から、IPNV の代替えとしてPoly(I:C)を投与し、
ニジマスが抗ウイルス状態にある間にIHNV に曝露することで、IHNV に対する特異免疫が誘導できることが示され
た。さらに、海産高級魚のマハタやヒラメに、Poly (I:C)を投与した後、病原ウイルスであるウイルス性神経壊死症原
因ノダウイルス(RGNNV) あるいはウイルス性出血性敗血症ウイルス(VHSV) に暴露することで、暴露したウイ
ルスに対する免疫が誘導されることが確認できた。Poly(I:C)の用法・容量を検討したところ、50 µg/fish 以上を投
与後4 日以内に病原ウイルスに暴露することで十分な防御効果が誘導された。
このPoly(I:C)-免疫法は、1) Poly(I:C)は接種魚体内で速やかに分解されるため、免疫魚の食品としての安全性が担
保されること、2) ウイルスの不活化が不要であるため、分離培養が困難あるいは未同定のウイルス等にも応用が可
能であること、3) 遺伝子組換え操作が不要であるため、開発コストが大幅に軽減され、遺伝子組換え食品等に否定
的な消費者も受け入れやすいと考えられること等で、従来法とは異なる。今後、Poly(I:C)-免疫法は様々な魚類ウイ
ルス病へ応用が可能であると考える。
北海道産チョウザメ養殖をめざして
北海道大学大学院水産科学研究院海洋応用生命科学部門教授足立伸次
かつて、北海道にはチョウザメが生息していた。しかし、石狩川と天塩川でふつう
にみられたチョウザメは昭和初期までには姿を消し、2001 年には北海道レッドデー
タブックに、2007 年には環境省のレッドリストに「絶滅種」として記載された。と
ころが、現在でもチョウザメが北海道沿岸で捕獲されることがある。我々は過去10
数年間、天然チョウザメの収集を行なった結果、約50 数尾の個体を確認することが
でき、現在でも年間数尾は捕獲されることがわかってきた。それらの内訳はダウリア
チョウザメ(カルーガ)が8 割弱、ミカドチョウザメ(標準和名はチョウザメ;国内絶滅種)が約2 割で、その他
は数尾である。我々はカルーガ1 尾およびミカドチョウザメ6 尾を北海道大学七飯淡水実験所で飼育しており、個
体数は少なかったものの、2007 年にはカルーガ、2008 年にはミカドチョウザメの国内初の人工繁殖に成功した。
北海道では、ホタテやコンブなどの養殖およびサケマス類やカレイ類の栽培漁業は大規模に行なわれているものの、
海面での生け簀養殖はほとんど行なわれていない。内水面においても、ニジマス養殖が小規模に行なわれているにす
ぎない。しかし、北海道には安価で広大な土地があり、良質な冷水や温泉水も豊富である。チョウザメ類の養殖には
冷水も温水も必要としており、北海道はまさにチョウザメ養殖の適地である。加えて、北海道には、膨大な量の各種
水産廃棄物があり、これらを養殖用飼料に利用できると大幅なコストダウンに繋がり、大規模養殖の展開も期待でき
る。
チョウザメは雌雄の価値に大きな差がある。また、成熟に時間がかかる種類が多い。チョウザメ養殖をする場合、
卵巣(キャビア)がとれる雌ばかりを生産し、しかも早く成熟させることが望まれる。一般に、魚類の性統御はホル
モン処理や染色体操作が用いられ、魚種によっては比較的容易である。我々は雑種チョウザメのベステルを用いて、
ホルモン処理による全雌あるいは全雄生産も成功し、雌性発生(精子の遺伝情報を破壊し、卵だけで発生させる方法)
も行なっている。性染色体型がXX/XY であるサケマス類などでは、雌性発生により全雌生産が可能である。しかし、
チョウザメの場合は雌性発生魚でも雄魚が出現することから、サケマス類とは異なり性染色体型がZZ/ZW と思われ、
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染色体操作による全雌生産は実現していない。ホルモン処理や雌性発生法を組み合わせるとチョウザメでも全雌生産
が可能となるが、2-3 世代の交配を経てから全雌生産が可能となるため、成熟期間を短縮させる方法の確立が望まれ
る。現在我々は、雄では精子凍結保存法や試験管内精子作製法など、雌では全雌生産法や早期成熟誘導法などの確立
を目指して研究中であり、これらの研究成果を北海道産チョウザメの効率的養殖に生かしたいと考えている。
分子ディスプレイによる酵母細胞ワクチンの機能デザイン
兵庫医療大学薬学部医療薬学科准教授芝崎誠司
細胞にタンパク質やペプチド分子をディスプレイし、新しい機能や生理活性を賦与す
る、いわゆる分子ディスプレイ法により、微生物細胞の高機能化を目指した新しいバイ
オテクノロジー技術が生まれている。ファージディスプレイは代表的な分子ディスプレ
イ法であり、ディスプレイした分子に対するリガンドのスクリーニングなどに威力を発
揮している。さらに、乳酸菌や大腸菌などのバクテリアを用いた系に加え、近年ではリ
ボソームや磁性粒子へのタンパク質やペプチド分子のディスプレイによる、新規分子の
スクリーニングも報告されている。我々はこれまで、パン酵母Saccharomyces cerevisiaeを宿主とし、酵母のみ
ならず他の生物由来のタンパク質や人工ペプチドのディスプレイに成功し、それらは細胞センサー、重金属回収担体、
物質変換のためのwhole-cell biocatalyst として注目されている。また、これらの酵母は米国のChemical &
Engineering News において「アーミング酵母(Arming yeast)」としても紹介され、新しいテクノロジーとして
期待されている。
我々は、医薬分野への展開例の一つとして、抗原タンパク質、ペプチド分子のディスプレイによる酵母細胞の細胞
ワクチンへの変換を目指している。抗原分子ディスプレイ酵母は飼料に混ぜる事も可能と考えられ、魚病ウイルスに
対するワクチン創出を目指した分子ディスプレイについて取組んでいる。本講演では、酵母分子ディスプレイ法につ
いて概説し、細胞ワクチンへの応用や抗体産生の事例と今後の展望について述べる。
クロマグロの完全養殖
近畿大学水産研究所准教授家戸敬太郎
クロマグロは最近養殖生産がとくに活発に行われている重要な養殖魚種であるが,
乱獲による資源の減少が大きな問題となっている。近畿大学では1970 年から養殖技
術開発を開始し,その後1974 年度に活け込んだ幼魚からの親魚までの本格的な飼育
に成功した。1979 年にはこれらの魚が世界で初めて網いけす内で自然産卵した。こ
の親魚はその後も産卵し,受精卵からの飼育が試みられた。
飼育実験は1979 年以降のべ10 数回にわたって試みられたが,仔魚期の初期減耗
が激しいうえに,稚魚期までの飼育には成功してもそれ以後の減耗が激しく成魚にまで育てることはできなかった。
加えてその後11 年間にわたり,養成親魚からの産卵が途絶えた。
産卵行動がみられなくなってから12 年目の1994 年に親魚が待望の自然産卵を開始した。産卵は1998 年まで
の5 年間の間に4 シーズンで認められた。年毎に初期減耗の原因究明をすすめ,さらに海上の網いけすへ移動した
後の大量へい死の原因も解明した。これらの原因に基づいて,防止対策の開発をすすめた結果,卵から成魚までの飼
育に成功し,2002 年にはいけす内で産卵された卵から育てたクロマグロが初めて産卵するいわゆる完全養殖を世界
で初めて達成した。
以上のように,クロマグロの種苗生産に関する研究開発を進めてきた結果,2007 年には完全養殖クロマグロ第3
世代を生産し,世界で初めて人工種苗約1,500 尾を養殖場に出荷した。さらに2008 年には7,000 尾以上の人工
種苗の出荷を実現した。今後は,さらに量産技術の開発を進め,天然資源に依存しないクロマグロ養殖の実現に貢献
したいと考えている。

地域バイオ育成推進講座 in 旭川

テーマ「特色ある地域農林産物の活用による新事業化と地域経済活性化」
開催日と会場:2009年7月27日(月) 旭川ターミナルホテル
地域バイオ育成推進事業が旭川を会場として、旭川バイオテクノロジー推進懇話会、旭川食品加工協議会、(財)旭川しんきん産業情報センターの共催により、開催されました。
 今回は、36人の参加をいただき、旭川医科大学 吉田先生の基調講演とパネルディスカッションが行われ、活発なディスカッションが行われました。
 基調講演とパネリストの要旨は、下記のとおりです。
² 基調講演「地域健康資源の利活用で経済活性化」
    旭川医科大学医学部教授 吉田貴彦 
² パネルディスカッション
l コーディネーター HOBIA副会長、東海大学副学長 西村弘行
パネリスト 株式会社大金 代表取締役社長 金田道従
グリーンテック株式会社 代表取締役社長 佐藤一彦
北海道立林産試験場 きのこ部長 栗原節夫
旭川大学経済学部 教授 佐々木 悟
· 基調講演「地域健康資源の利活用で経済活性化」
-旭川圏域の農畜作物の高付加価値化と旭川ウェルビーイング・コンソーシアムとリンクした地域経済活性化を考える-
旭川医科大学医学部 教授 吉田 貴彦
豊富な農産物は旭川圏域の地域優位性として認識されているが、従来の北海道農業の特徴として、素材そのままでの出荷が主であり高収益が得られていないのが現状である。農業生産で高収益を上げるための方策として、生産作物の見直し、出荷形態の見直し、北海道としての不利を逆手に取った優位性への転換、無駄のない利用、加工による付加価値化等が考えられる。冬季の寒冷積雪のため栽培時期が限られる不利を克服し、安定的な収入を得るためにも夏季に生産・加工して通年出荷するための体制の整備も必要である。さらに大消費地から遠いため運送のための費用と時間がかかることから、容積を減じ保存性が高い加工製品としての運搬は有利である。農作物生産現場では、過剰生産による処分や未利用部分を廃棄物とする固定概念があるため多くの廃棄物が生じている。こうした未利用農作物を利活用する際にも加工の技術が有効である。このように多くの場面から食品加工技術の応用の必要性が明らかにされている。農作物の加工による新製品開発は、消費者ニーズに合致して行なわなければならない。最近の食に関する消費者ニーズとして、健康志向(「健康の大切さ」の浸透)、健康食(調理法・メニューの工夫)指向、メタボリック症候群からの脱却、機能性食品指向、サプリメント指向、安全性指向、自然な食材、新鮮指向、グルメ指向などがあげられる。最近の食品に求められている新たな付加価値として、自らの健康と環境配慮のための安全性の確保、健康保持増進に役立つ機能性、新鮮さ、本物指向による天然物や無農薬・有機栽培などがある。
 機能性食品とは主には加工食品に対して使われる言葉で、生体防御、疾病予防、老化制御などの生体にとって好ましい調節機能を発揮するように設計・加工され、科学的根拠に基づき健康増進機能(機能性)が認められている食品をいう。食品中に含まれる既知の物質の有無/含有量の検査は化学測定で調べられ、目的の標準物質との比較測定が行なわれそれほど難しいことではない。一方、未知の有効成分を特定する場合は、検定する食品から成分抽出と分画分離を行い、分画ごとに化学分析、細胞及び動物実験により機能測定を繰返し、分画の中に1物質となった時点で化学物質の構造を解析し既知物質でないことを証明する手順が必要で労力と資金がかかる。さらに、農作物の生産段階、保存段階、加工段階さらには調理段階において成分量が変化したり、他の物質に変化する可能性があるため、現実に人が食する状況にそった測定が必要である。すなわち作物として収穫された時点で、有効成分が多くとも保存・加工・調理を経て何も残らなければ何の意味も無いこととなる。
 機能性を検証する研究手法には、①集団における疫学的研究として、農作物の摂取量・摂取期間と疾病発症との関係の調査、農作物含有の既知成分の血液中濃度等と疾病発症との関係の調査する方法、②in vitro実験による研究として農作物抽出物あるいは農作物等に含まれる既知成分をin vitro細胞実験系に添加して作用発現のスクリーニングおよび機序解明を研究する方法、③実験動物による研究として、農作物そのものあるいは農作物等に含まれる既知成分を実験動物に摂取させ、疾病発症率、病態に関連する生体指標の変動を測定する方法、④被検者(集団)による介入研究として、農作物そのものあるいは農作物等に含まれる既知成分を被験者に摂取させ、発症率、病態に関連する生体指標の変動を測定する方法がある。有効性の検証研究においては、上記の研究手法毎の結果の不一致は少なくない。その大きな理由として、食品として摂取する有効成分が生体効果を現すためには、①人が実際に摂取する段階で食品中に十分量の成分が含まれていること、②消化管から効果のある形態を保ったまま吸収されること、③効果を示すに十分な体内濃度となることなどの条件が必要であることが挙げられる。また、生体内において他の物質との相互作用(相乗・相加効果)が起こりうることも大きな要因である。食物には1つの有効成分しか含まれないと考えることは無理があるし、さらに人は同時に何種類もの食物を摂取することから、一つの食品、一つの化学物質の機能性を検証することは容易ではない。効果が期待された化学物質を単独で人に投与したところ全く効果が無かったとされる例すらある。加工によって有効成分などの吸収効率を高める方法として、植物繊維(セルロース)構造の破壊、微粉体化など粒子径を小さくし全体としての表面積を増すこと、植物体の細胞壁・細胞膜の破砕など、化学的、物理的操作を加え化学的消化(化学反応・酵素作用)を効率良く受けさせるなどがある。注意すべき事として、微細加工操作によって酸素が作用し易くなったり、食物の細胞内に存在する酵素が作用を発揮し、有効成分を変性失活させることがある。逆に有効成分含有量が増える場合もありうるので、有用な加工技術として応用が可能である。
 食品に良い生体効果があるという科学的裏付けが得られれば、販売する際の追い風となろうが、何でも特定保健用食品の認証を得ることを目指すべきだろうか。そのためには膨大な資金がかかる上に、必ずしも売れるという保障もない。食品は美味しくあることが大前提であることを忘れてはならない。また、1つの飲食物、1つの機能に固執すべきでない。一般の食品との区別程度の裏付けとなる有効性に関する研究データを公表し、口コミでの評判を期待することが現実的ではないだろうか。
 2008年5月26日に、旭川市内の4大学1短大1高専を中核とし旭川市も加わって、旭川ウェルビーイング・コンソーシアムが結成され、本年7月に大学連携事業として文部科学省から支援を受けることが決まった。この趣旨は、旭川エリアが有する豊かな自然環境、森林、温泉、安心安全な農畜産物等の健康保養資源を基盤として、地域資源に根ざした居住・生活環境、農畜産・食品加工製造、健康保養・観光等の産業を中心とした産業界との協働と、圏域住民と行政の自主的・積極的な参加のもとに、医療機関が集積する旭川エリアの地域優位性を活用し、旭川医科大学をはじめとする高等教育機関・公設研究機関等を中心としたコンソーシアムを形成し、医科学的エビデンスに基づいた諸取組みを継続的に実践することにより、圏域住民の身体的・精神的・社会的な健康(ウェルビーイング)を達成するとともに旭川エリアの地域振興とを図ることを目指すものである。旭川ウェルビーイング・コンソーシアムが地域の農畜産業・食品加工産業と協働し、旭川圏域の優位性である農畜作物に対して高付加価値化を図ることで地域経済活性化が促進することが期待される。地域振興、地域が元気になる秘訣は地域ぐるみの協力体制を作り、異業種交流による地域の社会資源の組合せにより地域興し力を強め、経済活性化のために産・学・官が協力することである。地域住民も地域での生産・製品開発に自らも積極的に参加する喜びをもち、地域で生産された良い作物・製品を地域で使うなど、地域資源を地域の財産としてプライドを持つことが望まれる。こうした延長線上に、健康で幸福な住民、元気な地域コミュニティ、活力のある街、元気な産業が形成され、住民の健康と幸福、活力ある街の創造が達成される。
· パネルディスカッション
「特色ある地域農林産物の活用による新事業化と地域経済活性化」
² コーディネータ : NPO法人北海道バイオ産業振興協会副会長
     東海大学副学長(北海道キャンパス担当) 西村 弘行
開催趣旨:上川・旭川圏域の主要な産業は、農・林産業で、低迷の続く地域経済状況下でいかに付加価値を付けて流通に結びつけるかが、大きな課題となっています。地域の豊富な食資源と未利用資源をいかにバイオ技術等の加工技術によって、消費者ニーズに合致した製品開発と新事業化が図れるか課題となっております。そのためには、有効な産学官金融の連携が極めて重視されます。地域イノベーションの創出で産業経済活性化をめざし、バイオ育成推進講座を開催します。
² パネリスト 株式会社大金 代表取締役社長 金田 道従
「地域農産物の高付加価値化について」                                   
<取り組みのはじめ>
1.ダッタンソバの機能性成分について着目し1996年から旭川市に於いて試験栽培を開始し2001年有機認証を取得現在に至る。
2.その間、北海道産ダッタンソバについて機能性成分の含有量や機能性について検証を行う。(借り物のデータでなく自分自身で調べる。協力―天使大学、酪農学園大学、旭川医科大学、旧ホクサイテック財団))
3.その結果、世界そば学会で公表されている数値より道産はルチンが約1割多いことが判明した。(協力―道立中央農試)
  (世界平均が100g中約1800mgに対し北海道産は2000mg)
<商品化を目指す>
4.以上の結果を踏まえ、商品化を目指し商品開発に取り組む。
  ①そば麺-発売中
  ②そば茶-発売中(JAS有機食品)
  ③カステラなど
<生産者との連携>
5.栽培に手間いらずのダッタンソバ
  ①栽培に手間がかからず、荒涼である北海道に適した作物なので生産者と連携し高付加価値の加工食品を開発し、生産者の再生産価格を維持しながら北海道の蕎麦として定着させたい。(普通そば生産量日本一の北海道も関東地区では信州ブランドにかなわないので、北海道のそばとしてブランド化)
<製品情報の提供>
6.機能性成分の製品中含有量表示
  製品ロットごとに、ルイチン、ケルセチンの含有量を製品に表示している。
<今後の取り組み>
7.大学の協力を得てより一層機能性の検証及び機能性食品の開発に取り組む
  ①東海大学 ②天使大学 ③旭川医科大学など
² パネリスト グリーンテック株式会社 代表取締役 佐藤 一彦
「ニンニクの有機栽培は不可能に近いからやめた方がいい」と青森の栽培指導者から忠告されたが、
あえて有機栽培に挑戦した。これには二つの理由がある。一つは、20年かけて培った土壌改良技術を実証してみたかったから。人達を元気にしたかったからである。
このニンニクを多くの人に認知してもらうために、茎の長い形状にして「彦一にんにく」と名付けた。
5月、春野菜がまだ少ない時期に、かき取った脇芽を葉ニンニクとして「若旦那」の名称で出荷する。
農薬を使用してないので安心して食べてもらえる。
販売についてはまったくの素人なので、テレビや新聞を見て積極的にアプローチしてくれたホテルや焼肉店、卸売業者やデパートなどを優先的に販売している。しかし、まだまだ販路を広げなければならないので、「彦一物語」を熱く語って拡販に汗を流している最中である。
² パネリスト 北海道立林産試験場 きのこ部長 栗原 節夫
きのこ等林産資源の事業化の可能性について
 私ども林産試験場きのこ部が現在取り組んでいるきのこ事業化の取り組みについて
平成19年~20年に北海道の重点研究として北大、食品加工研究センターと取り組んだ成果の中からホンシメジとムキタケに注目し、これらの生産技術を道内での普及を検討していた。
 ところ、今年の1月に政府の緊急雇用対策の一環として出された「ふるさと雇用再生特別対策事業」での普及を図ることを提案、採択に至った。
事業内容は 林産試験場が道内のきのこ生産者に(ホンシメジ、ムキタケ等)新品種きのこの事業化に取り組みませんかと募集を行い、希望者からの企画提案を選考によって受託者を決定する(プロポーザル方式)。受託者は林産試験場きのこ部が持っているホンシメジ、ムキタケの生産技術を取得できるとともに、失業者等を雇用するための委託料を受けることができます。
 7月中旬に受託者2社が決定、契約を結び事業化に向けて取り組んでいるところです。
² パネリスト 旭川大学経済学部教授・旭川大学大学院研究科長 佐々木 悟
 上川、旭川市は全道でも有数のコメと野菜の産地であり、これらの農産物の8割以上は域外、本州大消費地へ生鮮で出荷されており、農産物の供給基地として君臨している。しかし、周知のように、夥しい輸入農産物の国内市場席巻によって価格は低迷し、多くの農家経営の悪化を招き、農業粗生産額や農家数の減少を引き起こしている。
 このような地域農業の衰退に歯止めをかけ、「良質な地場農産物を原材料とした製品」の開発等によって地場農産物に付加価値をつけるために、加工業等地域の関連産業との提携による活性化が模索されているが多くの課題を有している。バイオはその課題を解明し、農・商・工提携確立の鍵を握っており、本講座で議論を深めたい。

特定非営利活動法人北海道バイオ産業振興協会の会長が交代いたしました

冨田房男北海道大学名誉教授から吉野次郎北洋銀行副会長へ継承
本道におけるバイオインダストリー振興団体の草分け的存在であるNPO法人北海道バイオ産業振興協会は、7月31日、臨時総会ならびに理事会を開催し、吉野次郎北洋銀行副会長を会長に選任しました。
1985年の発足以来、これまで会長には大学人が就任してきた道内屈指の先端的なバイオ振興団体ですが、“21世紀の「世界のバイオアイランド北海道」実現”へ向け、産業振興の旗を大きく掲げる時期が来たとする冨田前会長の意向と、有力経済人の働きかけを受け、吉野次郎北洋銀行副会長の会長就任が実現したものです。
なお、冨田前会長は引き続き学会人として、又、理事として協会の活動を支援いたします。