第24回北海道バイオ・ステージは、「アレルギー原因食材と安全食品への対応」をテーマとした2つの講演、並びに、「HOBIAアグリ事業のご紹介」を、平成20年11月6日(木)、アクセスサッポロを会場に、約30名の参加により開催されました。講演要旨は次の通りです。
・演題:「特定アレルゲン物質の測定法」
講師:日水製薬株式会社 診断薬マーケティング部マーケティンググループマネジャー
田中 誠司 氏
食物アレルギーは、時に重篤な症状を示し、生命にかかわる重要な疾患とされている。そこで平成9年に当時の厚生省により「食物アレルギー対策検討委員会」が発足され、食物アレルギーの実態と誘発物質の検討が開始された。本委員会では、次いで平成13年の特定原材料の指定を行い、継続した活動の中で、平成20年に“えび”と“かに”の表示が2年間の猶予期間を設け、義務化することを定めた。
食物アレルギー患者は全人口の1~2%存在し、誘発されるアレルゲンの濃度としては、mg/mL濃度レベルでは確実に誘発し、μg/mL濃度レベルでは誘発に個人差があり、ng/mL濃度レベルではほぼ誘発しないと言われている。そこで、数μg/mL濃度レベル以上の食物アレルゲンを含有する食品においては、全ての流通段階で表示が義務化されることとなった。このように微量なアレルゲンを管理するにはコンタミネーションを含めた、日々の工程管理が重要となり、そのためにも高感度・高精度な食物アレルゲンの検知法が必要である。
日水製薬株式会社では、従来の食物アレルゲンの高感度検知法の販売は勿論のこと、近年表示が義務化された、“えび”と“かに”由来のタンパクであるトロポミオシンの高感度検知法であるEIA試薬(酵素免疫測定法試薬)の開発を行い、FAテストEIA-甲殻類「ニッスイ」という商品名にて販売を行っている(図1)。本試薬は感度・再現性に優れている反面、プレートリーダー等の高価な装置が必要となる。そこで、日々の工程管理等に利用可能な、簡易試薬であるFAテストイムノクロマト-甲殻類「ニッスイ」という商品も合わせて開発を行い販売中である。イムノクロマト試薬は定性試験であり、簡易迅速に“えび”と“かに”由来の食物アレルゲンの有無をチェックできる。
EIA試薬とイムノクロマト試薬の2種類は両試薬のメリットとデメリットを有するため、ニーズに合わせた使い分けを実施することで、日々の食物アレルゲンの残存リスクコントロールに有用であると考えられる。
・演題:「アレルギー表示と現状」
講師:北海道大学農学研究院
教授 浅野行蔵 氏
食物アレルギーの問題が、食品の問題のなかで特別な意味を持つのは、アレルギーによって重篤になる人と、何も感じない人との差が決定的に大きく、問題への切実感が、全く異なることに起因している。今年も学校などの給食施設が、原因となって児童のアレルギー事故が、発生している。なかでもソバは、アナフィラキシーショックを起こしやすく、もっとも危険な食品の一つである。1988年には、学校給食で出されたソバを食べた小学生が、死亡するという重大事故が、地元札幌で発生している。公民館でのそば打ち教室も危険なことである。ソバの扱いには、慎重を期す必要がある。製粉会社や製麺工場では、小麦粉が舞っており、職業病としてのアレルギーもある。私の大学でも学生に対して、ネズミをあつかう実験をするサイには、ネズミの毛やダストを吸わないように、指導をしている。
・演題:「HOBIAアグリ事業のご紹介
1.農商工連携について
講師:特定営利法人北海道バイオ産業振興協会
フーズ&アグリ・バイオ・ネットワーク事業クラスター・マネジャー 高橋 達夫 氏
農商工連携促進法(国)、中小企業応援ファン
ド(道)のタイアップによる、「製品開発・供給ネットワーク構築」の事例。
1)HOBIAアグリネットワーク事業の特徴は、生産者から製造者まで流れのあるバイオネットワーク構築である。
2)このネットワークはまさに農商工連携であり、H20年スタートの農商工連携促進法(国) 、中小企業応援援ファンド(道)を踏まえ、「道産野菜・果実のピクルス食品開発」や「100%道産素材のトマト食品開発」に係る「製品開発・供給ネット」構築を支援している。
【道産野菜・果実のピクルス食品開発の支援】
①農商工連携事業認定(H20・9)
(事業名)ホワイトアスパラを活用した食酢と道産野菜のピクルス食品開発
(事業者)(株)大金(旭川市)/営農集団
ファームホロ(新ひだか町)
②支援ネットワーク
•オホーツク圏食品加工技術センター
•道立 花・野菜技セ(栽培技術)
•名寄市農業セ(栽培技術、普及推進)
•北 大 園芸学研究室(学術研究)
•弘前大 蔬菜花き研究室(学術研究)
•(株)サークル鉄工 (機械開発)
•パイオニアエコサイエンス(株)(資材)
【100%道産素材のトマト食品開発の支援】
パイオニアエコサイエンス(株)・農業生産法人㈲「当麻グリーングライフ」のビジネスアイデア(野菜フィトケミカル成分重視)の製品開発・供給ネットについて、国・道のハンズオン支援事業の活用を支援している。
2.種子会社の取り組み(自給飼料の生産)
講師:パイオニアエコサイエンス㈱
園芸種子部三浦信一 氏
パイオニアエコサイエンス(株)が進める「飼料デントコーンの雌穂収穫・サイレージ調製・貯蔵並びに茎葉緑肥利用」(ハイモイスチャーコーン(HMC))のプロモーションの概要。
1)飼料・肥料価格高騰、糞尿処理対策、作付補償制度創設などから、北海道のデントコーン栽培面積が拡大しつつある。
2)道内の畑作用地は30万ha、飼料緑肥用地は6万haであるが、今後、品目横断による畑作物の作付面積減少の可能性がある。
3)また、畑作地への有機物施用の必要性、肥・飼料価格の高騰もあり、今後、畑作農家が「HMC」を栽培し、①茎葉を圃場に還元して緑肥とする②雌穂(実)を収穫し畜産農家に販売する「耕畜連携」ビジネス化が可能となる。
4)「HMC」は完熟収穫・即貯蔵化でき、乾燥後貯蔵よりコストが安く、欧米では古くから乳・肉牛、豚の飼料として利用されている。
5)「HMC」の飼料・緑肥利用システム「生産(畑作農家)→収穫・調製→運搬→給餌(畜産農家)」の構築について、帯広畜産大学・農機具メーカー・釧根地区畑作・畜産農家と共同実験を展開している。
*パイオニアエコサイエンス(株)札幌営業所
札幌市東区北34条東14丁目酒井ビル
電話011-748―8721
URL:http//www.aaaphj.co.jp/