アミノ酸は、タンパク質の構成分として中心的役割を果たすと共に代謝の中間体でもある。ヒト及び多くの家畜はある種のアミノ酸を生合成できない。ヒトでは、これの必須アミノ酸のうちたった一つでも不足すると自分の体のタンパク質を分解してそのアミノ酸を供給することになる。科学者たちは、作物中のアミノ酸を富化することを遺伝子組換えで成功した。リジン、メチオニン、トリプトファンが最も注目を集めているものであるが、これらは穀類や豆類で不足がちであるからである。Plant Physiologyに発表された総説によるとアミノ酸の富化作物を組換えDNA法で行なうことに関する最近の進歩がまとめれている。
多くの研究者が、トリプトファンとメチオニンの含量の増加を種子特異的な方法で行なえることを示している。リジン含量の高いトウモロコシの品種、Ly038、が第一世代の多くの国々で商業利用が承認される栄養価値の高いアミノ酸富化GM作物を代表するものである。メチオニンが多いルーピン品種も同様に承認されている。
この総説の著者であるShai Ufaz氏とGad Galili氏は、アミノ酸富化GM作物の参入とそのインパクトは、一般消費者の受容性にかかっている。LY038トウモロコシの商業的栽培が多くの国で承認されているにも拘わらずその安全性についての一般市民の議論がまだ残っている。
この文献は、以下のサイトで見ることが出来る。
http://www.plantphysiol.org/cgi/content/full/147/3/954
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バイテクは、植物種子油の人の栄養のための改善が可能
脂肪と油はヒトの食事必須のものである。しかしながら栄養の見地からは、同じ効果を生ずるものではない。例えば、ヒトは糖類から一不飽和脂肪酸を生合成することはできるが、高度不飽和脂肪酸(例えば、リノール酸、リノレイン酸)は、食品として摂取する必要がある。バイオテクノロジーを使うと油種子植物のそれぞれの脂肪酸の組成を変えることも通常は存在しない脂肪酸を作らせることができる。Plant Physiologyに発表された総説には、油種子をヒトの栄養価値を上げるようにバイオテクノロジーを活用することが議論されている。
FAD2遺伝子の発現を変えることでダイズのオレイン酸含量を高めたものをこの研究者たちが開発した。開発と安全性試験を長年にわたって行い、必須脂肪酸であるstearidonic acidを含むダイズ油が商業開発されており、これが最初のオメガ-3高度不飽和脂肪酸を含む組換え食用油になることになる。Howard Damude氏 と Anthony Kinney 氏の著作の報文は、無料で以下のサイトから入手できる。http://www.plantphysiol.org/cgi/content/full/147/3/962
GMトマトはアルツハイマー病を阻止するかもしれない
韓国の研究者によるとGMトマトがアルツハイマー病、Alzheimer’s disease (AD)、の経口ワクチンに適切であるとしている。ADは、極めて一般的な認知症の原因である。神経系が破壊されるこの病気は、毒性タンパク質であるβ-amyloid (Aβ)の脳内蓄積によって起こるものと信じられている。この病気を阻止するには、Aβ生成を抑制する物質の開発が必要と考えられている。Aβの脳内蓄積を減少するには免疫系の強化が一つの方策となる。
Aβの毒性の問題があるから微生物の発現系ではその生産を行なうのは難しいので、植物細胞での組換えタンパク質の発現を検討した。トマトがワクチンの生産に選ばれた。その理由は、熱をかけずにそのまま食べられるので免疫機能を上げる異種タンパク質を破壊するリスクが減ずることにある。GMトマトの全抽出物を経口投与してマウスを免疫したところブースターを投与後、免疫反応がみられた。この結果は、勿論未だ極めて早期の段階にあるが、食べることの出来るADに対するワクチンの第一段階の成功を約束するものと考えられると研究者たちは評価している。
Biotechnology Letters に発表されたこの報文は以下のサイトにある。
http://www.springerlink.com/content/63756gk168471265/fulltext.pdf
また要旨は以下のサイトで見ることが出来る。t http://www.springer-sbm.com/index.php?id=291&backPID=13182&L=0&tx_tnc_news=4591&cHash=cbda703f83
病害耐性GM作物は今どの位置にあるのか
遺伝子工学は、病害耐性作物を開発する重要な技術として受け取られているが、今日までほんの数種の病害耐性GM作物が市場に入っているに過ぎない。このことは、虫害抵抗性及び除草剤耐性GM作物の90%を超える導入率に大きな違いがあることになる。何故このようになるのだろうか?
European Journal of Plant Pathologyの報文によるとその答えは、主として病害耐性の複雑さによるとされている。植物病原菌の多様な生物学的違いがGMの耐性作物を造成する上で問題となっている。細菌、カビ、卵菌類、ウイルスを含む植物病原菌は生理学的に大きく互いに異なるので、一つの遺伝子産物でこれらの微生物に直接毒性を示すことはできない。
著者たちは、3つの要素が満足されなければ病害抵抗性のGM作物の導入がないとした。その3つとは、他に解決策のない問題を解決する技術であること、解決策を導入する経済的メリットがあること、市場及び一般市民に受け入れられることのことである。これらの要素の組み合わせがウイルス抵抗性のパパイヤの場合にはあった。
この雑誌の購読者は、更なる情報を以下のサイトで見ることが出来る。
http://springerlink.metapress.com/content/311565m5v4853128/fulltext.pdf, 又はdbc@life.ku.dkに連絡を取ってください。
EFSAはGMトウモロコシを禁止する科学的証拠はないと宣言
ギリシャとハンガリーが、それぞれ独立にEuropean Commission (EC)に、承認されているGMトウモロコシ(Mon810)の栽培を暫定的に禁止していることに対して意見書をだした。禁止は、GMOの環境への放出に関するEC条例23 項 (2001/18/EC).に関わるものである。その結果としてECがヨーロッパ食品安全委員会 (EFSA)のサイエンスパネルにGMOパネルを作りMON810がヒトの健康と環境に対してよくない影響を与えるのかの科学的検証を要請していた。
「GMOパネルは、全ての根拠ある出版物やギリシャ及びハンガリーの権威ある機関からの情報をもとにして先に提出されているGMトウモロコシのリスク評価を覆すような新しい科学的証拠はない。」と結論した。またEFSAは、ギリシャとハンガリーから提出された論議に対してこれを引き伸ばす科学的根拠もないとした。すなわちトウモロコシMON810の開放系栽培がヒトと動物の健康および環境に悪影響を与えることはありえないとした。
更に詳しい情報は、下のサイトにある。http://www.efsa.europa.eu/EFSA/Scientific_Opinion/gmo_op_ej757_greek_safeguard_clause_on_mon810_maize_en,0.pdfと http://www.efsa.europa.eu/EFSA/Scientific_Opinion/gmo_op_ej756_hungarian_safeguard_clause_on_mon810_maize_en.pdf