病害耐性GM作物は今どの位置にあるのか

 遺伝子工学は、病害耐性作物を開発する重要な技術として受け取られているが、今日までほんの数種の病害耐性GM作物が市場に入っているに過ぎない。このことは、虫害抵抗性及び除草剤耐性GM作物の90%を超える導入率に大きな違いがあることになる。何故このようになるのだろうか?
 European Journal of Plant Pathologyの報文によるとその答えは、主として病害耐性の複雑さによるとされている。植物病原菌の多様な生物学的違いがGMの耐性作物を造成する上で問題となっている。細菌、カビ、卵菌類、ウイルスを含む植物病原菌は生理学的に大きく互いに異なるので、一つの遺伝子産物でこれらの微生物に直接毒性を示すことはできない。
 著者たちは、3つの要素が満足されなければ病害抵抗性のGM作物の導入がないとした。その3つとは、他に解決策のない問題を解決する技術であること、解決策を導入する経済的メリットがあること、市場及び一般市民に受け入れられることのことである。これらの要素の組み合わせがウイルス抵抗性のパパイヤの場合にはあった。
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 http://springerlink.metapress.com/content/311565m5v4853128/fulltext.pdf, 又はdbc@life.ku.dkに連絡を取ってください。

EFSAはGMトウモロコシを禁止する科学的証拠はないと宣言

 ギリシャとハンガリーが、それぞれ独立にEuropean Commission (EC)に、承認されているGMトウモロコシ(Mon810)の栽培を暫定的に禁止していることに対して意見書をだした。禁止は、GMOの環境への放出に関するEC条例23 項 (2001/18/EC).に関わるものである。その結果としてECがヨーロッパ食品安全委員会 (EFSA)のサイエンスパネルにGMOパネルを作りMON810がヒトの健康と環境に対してよくない影響を与えるのかの科学的検証を要請していた。
 「GMOパネルは、全ての根拠ある出版物やギリシャ及びハンガリーの権威ある機関からの情報をもとにして先に提出されているGMトウモロコシのリスク評価を覆すような新しい科学的証拠はない。」と結論した。またEFSAは、ギリシャとハンガリーから提出された論議に対してこれを引き伸ばす科学的根拠もないとした。すなわちトウモロコシMON810の開放系栽培がヒトと動物の健康および環境に悪影響を与えることはありえないとした。
 更に詳しい情報は、下のサイトにある。http://www.efsa.europa.eu/EFSA/Scientific_Opinion/gmo_op_ej757_greek_safeguard_clause_on_mon810_maize_en,0.pdfhttp://www.efsa.europa.eu/EFSA/Scientific_Opinion/gmo_op_ej756_hungarian_safeguard_clause_on_mon810_maize_en.pdf

組換え作物及びバイテク施策に関するアジアの動向

 アジアでのGM食品がこの地域での質の良い食品の急伸する需要のもとで更に増加することは極めて可能性の高いことである。「アジアは、GM作物と食品によって拓かれた道に沿って新しいクラスの製品を生み出すバイオテクノロジーの利用で世界をリードする力がある。」とシンガポールのナンヤン技術大学にある国立科学及び科学教育研究所のPaul Teng博士が語った。
 Asian Pacific Journal of Clinical Nutritionに著した総説でTeng博士は、組換え作物の利用によるバイオ除虫剤、バイオ肥料などのバイオ農業へのアグリバイオ利用が、その第一の波である。これらに続いて直ぐにバイオ農業又はバイオ作物で医薬品の製造、エタノールやディーゼル油の生産が加わり、さらに多様な用途が考えられる複雑な炭化水素の生産や土壌、大気、水の中の毒物や望ましくない化学物質を吸収するようにしたバイオリメディエーションへのバイオ植物の利用が入ってくると考えられる。
詳しくは以下のサイトでDr. Paul Tengに問い合わせ下さい。
paul.teng@nie.edu.sg

オーストラリアでGMバナナが規制の下で開放栽培される

 クイーンズランド技術大学(QUT)は、オーストラリア遺伝子技術規制室(OGTR)から病害耐性バナナ17品種の規制の下での開放栽培の承認を得た。開放系栽培は、クイーズランド州Cassowary Coast地域で2008年月から2010年4月の間に毎年最大1.4 haの試験が行なわれる。GM品種は、線虫(C. elegans)から得た病害微生物に抵抗性を示すと奇異対されるcwd-9遺伝子を組換えてある。この遺伝子は、感染によって植物のプログラム死のプロセス(アポトーシス)を阻止するタンパク質をコードしている。また、組換えバナナは、選択マーカーである抗生物質耐性のnotII遺伝子も持っている。
 承認を決定するに当たって、リスク評価と管理について十分な相談・議論を、一般市民、州、自治体の長、地域の各種機関と十分に話し合いを行なった。GMバナナは飼料にも食糧にも許可されたものではなく、病害に対する耐性のみを試験するものである。
 更なる情報は、下記のサイトにある。
http://www.ogtr.gov.au/internet/ogtr/publishing.nsf/Content/dir079-2007

旱魃耐性GM小麦が規制の下で開放栽培が行なわれる

 ビクトリア州第一次産業省がオーストラリア遺伝子技術規制室(OGTR)から旱魃耐性小麦5品種以上の規制の下での開放栽培の承認を得た。開放系栽培は、ビクトリア州Horsham と Milduraの地域で2008年6月から2010年3月の間に毎年最大0.4 haの試験が行なわれる。OGTRは、一般市民、州、自治体の長、地域の各種機関と十分に話し合った結果として決定を下した。準備したリスク評価と管理で、申請された開放栽培は、人の健康や安全又は環境与える影響には問題がないと判断した。GM小麦は飼料にも食糧にも許可されていないものである。
更なる情報名以下のサイトにある。http://www.ogtr.gov.au/pdf/ir/dir080notifc.pdf