フーズ&アグリバイオネットワーク活性化事業

② 旭川食品加工協議会&HOBIA 地域ブランド食品フェアー2007開催報告

  3月5日(月)、旭川市内において、旭川食品加工協議会とのタイアップで、「大豆を育てる・大豆食品をつくる・大豆で食生活を変える」をテーマに、地域ブランド食品フェア2007を開催しました。

  旭川では、転作作物として栽培が拡大している「大豆」の健康機能性に着目し、旭川産大豆を主原料とする健康食品を全国に発信する「地域ブランド食品開発事業」を、産学官・市民の連携で展開しております。
協議会では、3年前から、市内農業生産者との研究活動、成熟収穫した枝豆用大豆の豆乳特性からの品種選抜、会員企業による豆乳添加食品の試作、試食・展示発表会などを展開しており、本フェアで、事業成果披露会が開催された次第です。

展示:参加企業11社、豆乳ラーメンなど17製品

事業成果披露会では、道立オホーツク圏地域食品加工技術センターから、タマネギ甘味噌、高濃度GABA含有「味噌」、高濃度納豆キナーゼ「納豆」の研究シーズ(試作品)が発表され、食改善団体、企業、教育機関などの関心が高く、今後、広範囲な技術移転が期待されました。

   この間、HOBIAでは、フーズ(旭川食品加工協議会)を核としたフーズ&アグリ・バイオ・ネットワーク活動として、道立オホーツク圏地域食品加工技術センター、北海道東海大学と連携し、その事業化、商品化に向けて支援を行ってまいりました。
本フェアで、京都大学名誉教授を講師に招き、「世界調査でわかった大豆の健康パワー」と題して、基調講演会(参加者120人)を開催しました。

 
【基調講演要旨】
-世界調査でわかった大豆の健康パワー-
                                                京都大学名誉教授           家森 幸男 先生

○専門は病理学で、病理学は病気が起きる理屈を知る学問である。1960年当時、脳卒中がたいへん多い時代で、その原因の一つに高血圧が考えられていた。

○脳卒中ラットを開発し、日本人が飲む味噌汁くらいの辛さの食塩水を与え続けると確実に脳卒中になるが、食塩水と一緒に大豆・魚などの蛋白質の多い餌を与えておくと脳卒中にならず長生きできた


○つまり、高蛋白食には血圧を下げる効果があり、脳卒中の遺伝が強くても、食事によって予防できることがわかった。

○しかし、コレステロールがたまると心筋梗塞や血管が老化して脳卒中を起こすと考えられていた。

○日本人に脳卒中が多いのは「食塩のとり過ぎや蛋白質の不足が原因」と確信し、世界の長寿国、短命国で血圧測定、血液検査、尿採取を行い、脳卒中は食事で予防できることを、ヒトで証明した。

○長寿食のお手本-グルジアの食生活-
グルジアの人たちは、蛋白質摂取は多くてもコレスレロール値が低い。その理由は、ゆでたり蒸したりして肉の脂肪分を除く、煮汁は捨てる、味付けは塩ではなく何十種もの香辛料を使う、肉を食べるときには果物(乾燥果物も)・香味野菜と一緒にヨーグルトをソースとして食べる、それによりナトリウムの害を打ち消すカリウム値が高い、香辛料は抗酸化栄養素で悪玉コレステロールによる動脈硬化を予防する、白身の淡水魚を食べるので血液中のDHAの値が高いことなどが挙げられる。

○比較すべきは東ヨーロッパの短命国ブルガリアで、同様にヨーグルト、チーズ、肉や野菜も食べるが、あまり魚を食べないことが原因かもしれない。

○マサイ戦士の食生活には食塩が存在しないが、尿データではナトリウムとカリウム値は9:10である。これは、全ての生物体にはナトリウムとカリウムが含まれており、食塩をとらずとも、自然のものだけを食べていれば、体内のナトリウムとカリウム値は1:1のバランスがとれ血圧が上がらないことを示している。マサイの40~50歳代には高血圧(上は140以上、下は90以上)の人がほとんどいなかった。

○WHOによる食塩摂取量の目標値は1日6 gであるが、日本人は1日12 gで2倍である。食塩を多くとると体内のナトリウムとカリウムのバランスが崩れナトリウム値が上回るようになる。
カリウムが豊富な果物・野菜をたくさん食べることと、牛乳・ヨーグルトは、血糖値に影響せず、カルシウムを含み、カリウム・マグネシウが多い良質の蛋白質なのでたくさん食べることが良い。

○中国の長寿地帯:貴陽は豆腐の源流地
奥地で経済的に貧しいが、長生きで、高血圧や脳卒中が少ない。貴陽人はナトリウム値は低くないが高血圧の割合が低いのは何故か? 石灰岩などのカルスト地形で大豆とトウモロコシが主食、さまざまな大豆や加工品がある:糸引き納豆、焼き豆腐、揚げ豆腐、おぼろ豆腐、生麩、干し豆腐、木綿豆腐、発酵豆腐、豆乳など。一番は豆腐麺で豆乳麺の麺スープは豆乳がベースで全部飲める。参考にして欲しい。

○女性は、女性ホルモンが減少すると血圧やコレステロール値が上がり、一般的に肥満が増える。しかし大豆をよく食べる日本と中国の女性の肌は年をとっても(女性ホルモンが失われても)若々しく、すべすべしていている、それは大豆に含まれている女性ホルモンに似たイソフラボンの働きである。
卵巣摘出ラットにイソフラボンを与えると、血圧が高くならず、脳卒中も増加せず、肥満も起こらず、毛づやもよくなる。

○尿中イソフラボン値の高い地域では、前立腺ガンや乳ガンの死亡率が低く、骨からカルシウムが抜けていく時に一緒に出てくるデオキシピリジノリンの値が低い(骨粗鬆症を防ぐ)。イソフラボンはポリフェノールの一種で抗酸化作用があり、(作用は弱いが)女性ホルモンと同じ働きをして、血液さらさら物質=一酸化窒素をつくる酵素の働きを助け高血圧を防ぎ、悪玉コレステロールの増加を防ぐほか、肝臓の働きを助けて、動脈硬化や心臓病を予防する。

○イソフラボンは女性ホルモン=エストロゲンの悪い面(細胞に取り込まれ乳ガン細胞を増殖する)を防ぐ働きをする。女性ホルモンに似た構造のイソフラボンが多いと、女性ホルモンより先に細胞に取り込まれ、イソフラボンは作用が極めて弱い物質なのでガン細胞を増殖させないことになる。大豆は、インシュリンの感受性を高める(糖尿病になりにくい体質)物質をつくる脂肪細胞の働きを助ける。

○長寿になるために大豆を食べよう

①大豆を一日70 g食べれば、健康に必要なイソフラボンをとることができ、同時に食塩(ナトリウム)の害を打ち消すカリウム・カルシウム・マグネシウム・食物繊維をとることができる(食塩量12 gを8 gに減らすのと同じ効果がある)。

②イソフラボンは大豆の表面の胚軸に含まれ、加工の際に出る「オカラ」にはイソフラボンが豊富に含まれていることになる。食品加工では、大豆を丸ごとつぶすとか、豆乳の製造で除かれるオカラを乾燥オカラとして入れ直すとか、イソフラボンがきちんと入る工夫が必要である。

③大豆と魚を一緒に食べる。イソフラボンは肝臓での悪玉コレステロールの取り込み(食べる)を助ける。これを胆汁が処理し、その胆汁処理を助けるのが魚に含まれるタウリンである。出された胆汁は大豆蛋白につかまり便として排泄される。

④「大豆を自分たちで育て、加工し、食べる」環境づくりが大切である。

(フーズ&アグリ事業 CM 高橋達夫 記)

     FOODEXJAPAN2007 に参加して

 FOODEXは業界の関係者なら知らないともぐり扱いされますが、多少分野が外れるとどのような展示会なのか知らない人も多いと思います。「日本最大の食品見本市」と言うのが、陳腐ですが、最も適した形容の方法でしょう。会期は毎年3月の中旬の4日間で、会場はいつも幕張メッセです。と言うより、ここでしか開けないほどの規模だと言うべきでしょう。ここの1~8ホール(54,000平方メートル、参考までに札幌のアクセスサッポロで5,000平方メートル、札幌ドームのクローズドアリーナで14,460平方メートル)を使い切り、2,400余の展示社(者)が集まり、4日間の総入場者が95,000人を超えるというのは、驚くべき数字だと思います。

 私自身は、東京の晴海埠頭の国際展示場で開催されていた時分からFOODEXに参加していて、非常に面白い見本市だと感じています。毎年参加しているわけでもないので、詳細な分析はできないのですが、年々展示の仕方やプレゼンテーションの技術が向上してきているように感じます。こうした中で初めて展示する側に立った今回は、FOODEXの別の側面を見ることができた気がします。そうした感想などを、短い雑感としてご紹介します。

 まず感じたのは、直接食品製造や販売に関わらない人が意外に多いことです。所謂プロモーター的な仕事をしている方々で、展示会や食品フェアーのネタ探しをしているのです。そうした人には北海道の新しい食品は魅力的なようで、もっと情報がほしいと言うことで、結構時間を掛けて話を聞いて行きました。

 次に気がついたのは、地域に根差した優良スーパーの存在です。東京なら紀ノ国屋や大丸ピーコックなどすぐ思い浮かびますが、地域にもそうしたスーパーが存在する様なのです。そうしたお店では高級食材の取り扱いが多いので、展示している食品に興味があると言うことでした。一般には、スーパーとの取引はあまり利益がでないことが多いようですが、こうしたお店を丹念に探すと良い商売ができそうです。

  最後に感じたことは、北海道からの出展者が結構な数になることです。そこで強く思ったことですが、是非一致協力してブースを統合して、大きなセクションを取った方がよいもではないかと言うことです。他の県からの出展者でもかなり大きな展示スペースを確保している例がありましたが、北海道で統一した展示ができれば、何れの県と比べても倍近い規模にできそうです。インパクトの大きな展示となり、より大きな効果が望めるのではないかと思うのですが・・・。

  実際の成果に関しては西陰さんの報告※に任せることにしますが、いろいろな意味で成果が上がった展示会ではなかったかと思います。食品の商売の初めは人と会って話すこと、できれば実際に食べたり飲んだりしてもらって、商品の良さを理解してもらうことだと思います。普段の営業では足を棒にして歩き回る必要がありますが、FOODEXではお客様が向こうからやって来てくれます。上手に使えば、これほど便利な営業手段はありません。今回の参加企業の皆様にはそこを十分にご利用いただき、喜んでいただけたのではないかと思っております。

(文責:企画運営委員会副委員長 富永一哉)

<※文中にある「西陰さんの報告」は次号に掲載します。>