実験をともなう研修会 「遺伝子とその働き」 実施報告

本ニュース238号でご案内しておりました標記研修会は、全国から24名の参加を得て、有意義に終えることができました。本号では、この研修会にインストラクターとして補助下さった竹末氏の感想を紹介し、報告に代えさせていただきます。


7月31日から8月2日までの3日間、北海道大学において「遺伝子ってなんだろう? 遺伝子の機能を体験する実験研修」が行われた。道内だけでなく、栃木県など本州の高校からの参加もあり、密度の濃い3日間を過ごしてもらえたと思う。

この研修会のテーマの1つに「大腸菌の形質転換」がある。一般的なヒートショックによる形質転換なのだが、どんなに準備を丁寧にやったつもりでも、初日、参加者に形質転換してもらった大腸菌がちゃんと生えてくれるかはドキドキである。2日目の朝、菌が生えているのを確認したときは、実は参加してくれた高校生以上に手伝いの我々インストラクターの方が「生えてきてよかった」と心底ホッとしていた。今回はサンゴの蛍光タンパク質の遺伝子を形質転換したが、大腸菌が光っているのを見たときにはみな「おおー」と歓声を上げてくれた。中にはまるで未知の生物に遭遇したかのようにじっと大腸菌を見つめている参加者もいて、この研修会に参加してもらって良かったと感じた。

中には形質転換が上手くいかなかった参加者もいたが、それはそれで、「コンラージ棒を冷まさずに使ったからかな」とか「ピペットマンの操作を誤ったからかな」など講師の先生や我々学生と共に原因を考えたのも研修の中の重要なステップであったと思う。

3日間という短い時間の中でも参加者が着実に実験に適応していく様子が見受けられたことも印象深かった。たとえば、実験は三人一組で進めていくが、初対面の三人がチームを組むため、最初はお互いに遠慮して会話も少なく、気まずい雰囲気で実験を進めていく。しかし、3日目にはチームプレーのようなものが見られるようになり、実験の進行もよりスムーズになる。初対面の人と協力して何かに取り組むという機会自体が貴重な体験になったのではないだろうかとも感じた。

個人的な実験操作でも、2日目の初めての電気泳動では指が震えながらの操作で、時間がかかっていたのが、3日目の電気泳動では、前日になんとなくコツをつかんだようで、特に説明しなくてもさっさと進めていく姿が見られた。こういった高い適応力は参加者が集中して最初の説明を聞き、実際の操作でもどうやったら上手くいくか考えながら進めたからであり、強いやる気が感じられた。

衝撃的だったのは、ピペットマンの操作や電気泳動を非常にスムーズにこなしている高校生がいたので、聞いてみると高校のクラブ活動で使っているという。私達が高校生のころには遺伝子実験など教科書にも載っていなかったと思うのだが、平成生まれは違うなーと妙に感心してしまった。

昨今は遺伝子組換え作物などが問題になっていることもあり、「遺伝子」という言葉を耳にする機会は確実に増えている。しかし、実際に「遺伝子」といわれると、自分とは別世界の話のように感じてしまうことも多いと思う。そんな中で今回の実験を通して、「遺伝子」をより身近なものとして感じてもらえたのではないだろうか。今回の研修会が、遺伝子やその組換えについて勉強するきっかけになってくれればうれしく思う。

(インストラクター 竹末 信親 記)