HOBIA会長 冨田房男
会員の皆様におかれましては平安な新年を迎えられたこととお慶び申し上げます。これからの1年、そして、その先のために十分に英気を養われたことと拝察申し上げます。
さて、昨年(2008年)を表す言葉として「変」が選ばれたことを考えるとなかなか心穏やかでないのであります。確かに、2008年は、オイルを例にとっても大幅な価格高騰そして年末には急激な下落という波の激しい年でありました。まさしく、あらゆるものが乱高下した「変=へん」な年でした。また、米国の経済危機は、これまでに例を見ない大「変」なものであることは知られているところです。この「変」は、自由経済と雖も規制が必要であることを示したとも言えるもので、「自由=勝手ではないことが示されたと思います。
翻って、科学の世界でもさまざまのことが倫理的問題を含め、ある規制の中で行われるべきことは当然のことと思われます。ここで、私は、我々のように「科学」・「技術」を主な担当としているものには、自然「科学」に基本をおいた考え方をとり、客観的に物事を眺め、十分な理解をして進むことが最重要基盤であると改めて肝に銘じているところです。つまり、「科学」とは、反証されうる仮説のみが科学的な仮説であり、そのような仮説で組み立てられた体系である。」と説いたSir Karl Poppperの言葉が、「的を射た」ものであると考えます。常に、検証に曝され、フィードバックされて、はじめて仮説が定説になるのであります。重要なことは、このようなプロセスが踏まれてきたかどうかで物事の判断を下すべきと考えます。このことは、社会「科学」でも同じであると思います。単なる「好き嫌いの感情論」では、解決はできないことがたくさんあるのです。
このような視点に立つと、バイオの世紀といわれる21世紀がスタートして既に9年目。20世紀の生物科学の成果を生かさなければならない中にあって、現在の日本、そして北海道は、どこに立ち位置を見出しているのか、全く情けない思いが致します。「BSE」・「組換え作物と食品」などなど、バイオに関連したものへの一般の理解は、遅々としています。特に、北海道は、退歩していると思うほどです。我々の努力が足りないのも事実ですが、行政、政策立案者にも、一考を要する時期にあると思います。
北海道は、バイオを基盤にしていること、いわゆる、一次産業が主体であることは誰もが知っていながら、さっぱり、対策が実行されていないのであります。20年も前に打ち上げた「北海道バイオアイランド」構想は、どこへ消えてしまったのか。2008年の経験に学び、これからは、「化石燃料依存社会」から「再生産可能な炭水化物、即ちバイオ依存社会」にパラダイムシフトすべきであり、北海道こそそれが出来るところなのです。
私は、今年こそHOBIAは、「変」ではなく「変わる」・「変える」ときと考えています。そのためには、もう時間がない。遠い未来も見なければならないが、直ぐ先を見る必要があります。具体的には、研究部会、即ち「食と健康」、「環境」の両部会を実際に動かすことが大切と考えます。それには、組織改革も考える必要があるでしょう。1月19日には、日韓バイオマス・バイオエネルギーシンポジウムを開きます。これを初めとして、様々な具体的な動きを皆様とともに考え、実行して行きたいと考えています。繰り返しますが、今年は、2008年の「変=へん」を、変えましょう。
皆様のご健勝とご健闘を祈念申し上げるとともに、HOBIAの活動を共に進めるようにご協力・ご支援をお願い申し上げます。