遺伝子組換え作物の商業栽培に関する世界のハイライト2008

遺伝子組換え作物の商業栽培に関する世界のハイライト2008
著者 クライブ ジェームズ
国際アグリ事業団(International Service For The Acquisition of
Agri-Biotech Applications ,ISAAA) 創設者・理事会 会長

これは、ISAAA 要報39号(Brief 39)(http://www.isaaa.org)にある網羅的に概観した2008年度の遺伝子組換え作物の商業栽培に関する世界のハイライトを要約したものである。これまでの一貫した本当に豊かな経済的、環境的そして健康福祉的に利益をもたらし結果としての記録的な数字である1,330万人もの大・中・小さらに手持ち資産の極めて少ない農家がこれまでの傾向を引き継いで2008年にはっきりと組換え作物栽培面積を増やし続けている。2008年には、世界的にみて組換え作物の栽培国がとりわけ増加したことを含め、上記以外の多様な分野での進歩が見られた。その例としては最も課題の多かった地域であるアフリカでの重要な進歩、複数の形質を併せ持つ「スタック」と呼ばれる品種の利用の大きな伸び、新規の組換え作物の導入があげられる。これらは、世界中が直面している重要課題である食糧・飼料・繊維の確保、より低価格の食糧、持続性(sustainability)、貧困と飢餓の緩和、気候変動に起因する課題の緩和などに組換え作物が貢献していることは、極めて重要な進歩である。
組換え作物栽培国数が25に飛躍したことは、歴史的一里塚である。組換え作物の導入に関する新しい波が広い分野で世界的な伸長をもたらしたものである。アフリカでの進展が大きい。特に2007年には南アフリカ一つだったが、2008年にはブルキナファソ(ワタ)、エジプト(トウモロコシ)が加わって初めて3カ国が組換え作物栽培国となった。南米ではボリビア(RR®ダイズ)がラテンアメリカで9番目の組換え作物導入国となった。
世界的な組換え作物差倍面積は、13年連続で大きな伸びをしめして、2008年には9.4%または1,070万へクタールの増加で、全体で1億2,500万ヘクタールに達した。または、より正確には、16,600万「(スタックとして導入された性質の数を反映した)形質ヘクタール」になる。これは15%の増加或は、2,200万「形質ヘクタール」の増加になる。1996年以来74倍の栽培面積増になり、これは組換え作物が最も速く導入が進んだ作物ということになる。2008年は、初めて1996年から2008年間の組換え作物栽培蓄積面積が初めて20億エーカー(8億ヘクタール)を超えたことになり、最初の10億エーカーを越えるのに2005年から10年かかったが、次の10億エーカーを達成する
のに2008年までのたった3年であった。注目すべきことは、組換え作物栽培国25のうち15が発展途上国であり、10カ国が先進国であるということである。

2008年には、新しい組換え作物であるRR®甜菜が初めて米国とカナダで商業化された。エジプト、ブルキナファソ、ボリビア、ブラジル、オーストラリアの5カ国が初めて他の国で既に商業化されている組換え作物を導入した。
「スタック」品種は、ますます組換え作物のなかで重要性を増している。10カ国が約2,700万ヘクタールの「スタック」品種を栽培した。これは、23%の増加になり、「単一形質組換え品種」よりも速い伸びである。
組換え作物栽培農家は、世界25カ国で2008年には1,300万人増加して、1億3,300万人に達した。特にその90%にあたる1億2,300万人は、小規模で資産のない発展途上国の農家であることは注目すべきことである。組換え作物が収入増加、小規模で資産のない農家やその家族の生活の質を向上、改善をもたらし、その貧困の緩和に貢献している。これらのケーススタディーについては、インド、中国、南アメリカ、フィリピンについて行なわれたものが要報39号(Brief 39)に収載されている。
中国、インド、アルゼンチン、ブラジル、南アフリカの5つの主要な発展途上国を合わせると、全人口2億6,000万人になるが、これらの国々が組換え作物でのリーダーシップを発揮しており、世界的な組換え作物の導入を牽引している。組換え作物から恩恵や利益がもたらされることから、これらのリーダー的国々では、強い政治的な推進策がとられ、多大の投資が組換え作物に行われている。

EU7カ国全てにおいて2008年はBtトウモロコシを栽培している面積が増加して、全体の増加は21%、これで全面積が107,000ヘクタールを超えたことは注目すべきである。組換え作物の持続性への際立った貢献を以下のようにまとめられる。1)食料をより入手しやすく(安価に)提供することを含む食料、飼料、繊維の確保、2)生物多様性の保全、3)貧困と飢餓の緩和、4)農業の環境への負担(footprint)の減少、5)気候変動の緩和を支援し、温室ガスを減少、6)バイオ燃料のより効率的な生産への貢献、7)1996年から2007年にわたる440億米ドル相当の持続的経済効果への貢献。これらの7つの推進力を総合するとその持続性への貢献は極めて大きく、また将来への可能性は計り知れないほど大きい。
1996年から2007年にわたる440億米ドル相当の経済効果のうち44%は、穀物収量の増加によるもので、56%は、生産コストの減少によるものである(359,000トンの殺虫剤有効成分の節減を含む)。1億4, 100万トンの穀物生産増は組換え作物を使わなければ4,300万ヘクタールの土地が必要なはずで、これを土地節約技術とも言える。
農業に基盤を置く発展しつつある途上国にとって、組換え作物は農村地域経済の成長のエンジンであり、翻ってこれが国の経済成長に大きな貢献をなすことになる。全世界人口の半分以上(55%)がこれらの25カ国に住んでいて、2008年には1億2.500万ヘクタールの組換え作物が栽培されている。これは全世界の栽培面積である15億ヘクタールの8%に当たる。2007年には組換え作物は、142億kgの炭酸ガスを削減し、これは車630万台削減に相当するものである。

組換え作物の適切なコスト・時間的に効率のよい規制のシステムが早急に求められている。それらは信頼性のあるものでなければならないが、煩雑なものではなく、かつ途上国でも実施可能なものでなければならない。25カ国が組換え作物の栽培を承認している。またさらに30カ国が組換え作物の食品及び飼料への利用を承認しているので、全体で55カ国が承認していることになる。2008年の世界の組換え作物市場は75億米ドルであり、1996年から2008年までの全体としての歴史的一里塚といえる500億米ドルとなる。

将来像: 組換え作物の第二期目の10年(2006年から2015年まで)の今後7年の見通しは、明るい。ISAAAの2005年の予測は組換え栽培国、面積、利益を受ける農家の数それぞれが、2006年から2015年で倍増するというもので、これがその予測線上にある。作物としてのイネ、そして旱魃耐性の形質付与が将来の伸びの中心になると期待される。Brief 39は、特別記事として2012年またはそれより早期に米国で、また、アフリカのサブサハラ地域では2017年に旱魃耐性のトウモロコシが商業化されることを入れてある。
詳細はクライブ・ジェームズ著Brief 39 遺伝子組換え作物の商業栽培に関する世界の状況2008にあります。どうか更なる情報をhttp://www.isaaa.org からか、ISAAA SEAsiaCenter、 +63-49-536-7216に電話するか、info@isaaa.org.に電子メールで問い合わせて下さい。