最新作物バイオテク 2010年4月

世界
ISAAAから組換え作物の世界情勢に関するビデオとポッド放映が出た
Syngenta社とCIMMYTがコムギ研究促進のために産業とリーディングパートナーシップを設立
査読付報告のまとめ:GM作物の良い影響
組換え作物取引の障害物
バイテク作物が多大な利益をもたらすことを示す研究

アフリカ
ガーナの旱魃耐性・ストライガ抵抗性トウモロコシ
2種のトウモロコシは、アフリカの気候変動に打ち勝つ
バイオセーフティー政策の地域間の整合性をCOMESAが探っている

南北アメリカ
えんどう豆アブラムシ遺伝子分析
多様なコムギについて真菌抵抗性遺伝子を探る
花を長持ちさせる研究ツール
モモDNAの解析が完了
農家のためのGE作物管理
βカロチン含有量を増加した熱帯トウモロコシの栽培
有機栽培と従来型栽培に関するスタンフォードの研究
USDAが害虫抵抗性GMコーンの規制を緩和
GMパパイヤの生産が日本で承認

ヨーロッパ
ヨーロッパ人が農家のバイオテクノロジー使用を支持
Btタバコが池由来の肝臓毒を中和
UKのDEFRAがGMジャガイモの試験を許可

研究
干からびた植物に「命をふきこむ」
2つの利用目的をもつトウモロコシ-食糧・燃料生産に関わる特徴の遺伝子解析-

世界

ISAAAから組換え作物の世界情勢に関するビデオとポッド放映が出た
 国際アグリバイオ事業団(ISAAA)はCourter film and Associatesと共同で遺伝子組換え作物の世界情勢ハイライトに関する6つの短編ビデオを作製した。ISAAAは、これらのビデオを先のノーベル平和賞受賞者であり、飢餓と貧困との戦いに生涯を捧げることで農業分野に足跡を残したNorman Borlaug氏に捧げて作成した。ISAAA創始者兼理事長であり、組換え作物の世界情勢の年度ごとの見直しを記しているClive James博士が集中的、包括的に解析を行い、ビデオシリーズのテーマを6つに分けた。6作すべてのビデオはISAAAのウェブサイト(http://www.isaaa.org)上のビデオストリーミングまたはダウンロード可能なフォーマット、もしくはYouTubeで視聴が可能である。
 ビデオのトピックス
・    Norman Borlaugの遺したもの
・    組換え作物の全世界的導入状況
・    途上国における組換え作物:中国の組換えイネと高フィターゼトウモロコシの重要性
・    組換え作物の世界的インパクト
・    組換え作物の将来見通し
・    ISAAAの役割:知識の共有
ウェブ視聴者はhttp://www.isaaa.org/rss/podcast/default.asp.にアクセスすることで上記の新しいビデオやオーディオファイル、PDFに代わってポッドキャストを利用することもできる。

Syngenta社とCIMMYTがコムギ研究促進のために産業とリーディングパートナーシップを設立
 国際トウモロコシ・コムギ改良センター(CIMMYT)とSyngenta社がGM、非GMハイブリッド、種子と作物保護の組み合わせを含むコムギの品種改良技術の発展のために官民パートナーシップを結んだ。両者は遺伝子マーカー技術革新、Syngenta社とCIMMYTによるコムギ遺伝子多様性へのアクセス基盤の発展、さらに世界的協力による全世界的コムギ増産を目指している。
 CIMMYT世界コムギプログラムのディレクターであるHans-Joachim Braun氏は、全世界のコムギ生産量は、世界的需要が年1.5%以上の増加に見合うように極めて大きな伸びが必要であると述べた。したがって今回の官民協力は農業の世界規模での挑戦を成功させるためにきわめて重要なものとなるであろう。「気候変動の影響と関連づけつつ、我々は更なる食料危機を避け、迫りくる世界人口の増加に備えて世界中の農家を守らなければならない。今回のようなパートナーシップは世界中の農家、豊かなものにも貧しいものにも多大なる利益をもたらすことができる。」とBraun氏は述べた。
詳細は以下のサイトにある。
http://www2.syngenta.com/en/media/mediareleases/en_100406.html.

査読付報告のまとめ:GM作物の良い影響
農家調査に関する49 報の査読付報告のまとめによると遺伝子組換え作物が特に収穫量の増加によって農家に利益をもたらしたことが示された。これは米国マサチューセッツ州BoylstonのJanet Carpenter氏が書いた商業化化GM作物の良い影響を示したNature Biotechnologyのトピックで発表された記事の中で明らかにされたものである。この再調査結果は組替え技術の広範囲に渡る普及を説明するものであると氏は述べている。
 現在商品化されているGM作物の採用・非採用による経済パフォーマンスの違いを収穫高などの項目によって比較した。その結果、途上国の農家は先進国の農家よりも収穫高の増加率が大きいという結果となった。商品化GM作物の第一波は害虫対策がなされていたために収穫高増加は必ずしも収穫能力に依存せず耕地管理の良さに依存したのである。
 Carpenter氏によれば、今後の関心としては積み重ねられた特性の影響と商品化にまで至るであろうキャッサバ、ササゲ、米などのGM作物技術に対する農家の経験値の評価方法が上げられるということである。詳細は以下。
http://www.nature.com/nbt/journal/v28/n4/index.html#cr
Email the author at janet.e.capenter@gmail.com

組換え作物取引の障害物
 全ての農業部門が世界規模で食糧事情を改善するのに惜しみない努力をしていることは疑いようがない。様々な遺伝子組換え作物に100万ドル以上が投資されている。しかし、ほんのわずかなGM作物しか市場には出回わることができないのが現実である。アメリカのJ.R. Simplot CompanyのCaius M. Rommens氏はその原因はGE作物の研究と発展の間の溝にあると説明している。彼はPlant Biotechnology Journalに掲載されたGM作物市場の壁と道筋という論文の中で、GM作物市場の壁となる障害として以下のものをあげた。
・    耕作地での特性の有効性
・    重大な製品コンセプト
・    取引の自由
・    産業支援
・    同一性保持
・    規制認可
・    消費者受諾
氏はまた上述の障害に打ち勝つための有望な解決策を提示した。例えば、積極的な小売と消費者による購入を増やすために、肯定的な消費者を増やして認知してもらう、組換え作物の優れている点のわかりやすく説明することなどをあげている。
詳細は以下のサイトにあります。
http://www3.interscience.wiley.com/cgi-bin/fulltext/123200391/HTMLSTART?CRETRY=1&SRETRY=0

バイテク作物が多大な利益をもたらすことを示す研究
 バイテク作物は世界的に経済面、環境面に多大なる利益をもたらし続けている。これはUKを中心に審査とコンサルティングを行う機関であるPG経済社によって2つの新たな研究としてまとめられた。
 「1996年以降、バイテク作物の受け入れによる殺虫剤利用機会の減少、農家の収入の増加、コーン、菜種、大豆などの低価格化などを通じて農業関連の温室効果ガスの放出量は減少し続けている。」PG経済社のディレクターであり、この報告書の共同著者であるGraham Brookes氏はこのように述べている。「その技術はまた、作物生産量の増加、生産リスクの軽減、生産効率の改善、主要穀物の世界的生産高の増加に大きく貢献している。したがって経済面と環境面の利益のコンビネーションはより効果の出やすい途上国において、世界的農業のサステナビリティと食糧の値ごろ感の改善に効果的な影響をもたらしている。」
 記載内容を一部抜粋
・    バイテク作物は農業由来の温室効果ガス排出量を大きく減少させる。
・    バイテク作物によって1996年-2008年で3.52万トンまで殺虫剤使用量が減少。
・    多くの地域、特に南アメリカにおいて除草剤耐性バイテク作物は除草剤を一切使わない、もしくは使用量を減らした耕作生産システムの普及を促進している。
・    2008年には94億ドルであった農家レベルでの利益が今後13年で520億ドルにまで成長すると概算している。
・    農家の利益をトータルで考えると、生産コストの削減によって50.5%(262.5億ドル)の生産高増加が見込まれている。
全文は以下を参照。http://www.pgeconomics.co.uk/

アフリカ

ガーナの旱魃耐性・ストライガ抵抗性トウモロコシ
 国際熱帯地域農業機構(IITA)とガーナ国立トウモロコシプログラムが開発した4種の旱魃耐性・ストライガ抵抗性トウモロコシが最近ガーナの農家に解禁された。サバンナ農業研究所とガーナ産業研究所との共同でガーナ穀物研究機構から3種の早生系統種であるEVDT-W 99 STR QPM Co、TZE-W Pop STR QPM C0、TZEE-W Pop STR QPM C0 と1つの中生種である旱魃耐性QPMハイブリッドが解禁された。
 「この解禁によってガーナの農家は熟の期、色、タイプだけでなく、上記2つのストレスへの耐性の有無からも品種を選べるようになった。この2つの主なるストレスへの抵抗種は、この地域でのトウモロコシの生産と生産効率の増加を妨げる主な原因に対抗するもである。」とIITAのトウモロコシ育種家Baffour Badu-Apraku博士は言った。さらに食糧農業省のガーナ穀物・豆類開発局のRobert Asuboah博士は状況を楽観視しており、これらの`保険的`作物は乾期でも農家が利益を得るほど生産が可能であろうと考えている。
詳細は下記のサイトにある。
http://www.afriquejet.com/news/africa-news/ghanaian-farmers-get-drought-tolerant-maize-to-boost-production-2010040347069.html
 

2種のトウモロコシは、アフリカの気候変動に打ち勝つ
 アフリカ大陸で約3億人分の食糧生産が期待されるサブサハラでトウモロコシの2つの新品種が栽培されている。どちらの品種も乾燥に強いが一つは従来手法で育種されたもので、もう一つの高生産性品種は遺伝子組換えによって作られたものである。この品種の組換え遺伝子はごく一般的な細菌で、塵から分離されたBacillus subtilisを用いたものである。B. subtilisとトウモロコシはストレス受容器官を補助するCspBタンパク質に対応する共通の遺伝子をもっている。組換え品種は7年後に市場出すことを目指して生物安全性試験が今行われている。
 アフリカでの水効率性の高いトウモロコシプロジェクトマネージャーSylvester Oikeh氏はアフリカでの気候変動の悪影響について警鐘を鳴らしている。気温上昇、旱魃、塩害の増加は農業に深刻な問題をもたらす気候変動の結果である。モンサント社が開発した遺伝子組換えトウモロコシは気候変動によるあらゆるストレスの中でも最大30%の生産高増が期待されている。
原報告は以下のサイトにある。http://www.climatewire.net

バイオセーフティー政策の地域間の整合性をCOMESAが探っている
 東部南部アフリカの商品貿易同盟(ACTESA)、東部中部アフリカの農業研究強化協会(ASRECA)と共同で東部南部アフリカの共同市場の特別部門、生物安全性プログラム(PBS)と国際アグリバイオ事業団のアフリカセンターは、ケニヤのナイロビにて4月19~20日、COMESA構成国のための生物安全性に関する地域ワークショップを開催した。
 議題として多く上がったのは、COMSA農業大臣の発案で持ち上がったCOMESA領域バイオセーフティー政策や指針の草案作りであった。その政策やガイドラインは、遺伝子組換え(GM)作物の商業生産、その貿易、その緊急食糧援助への取り入れを視野に入れたものである。またCOMESA領域内でのコミュニケーション方法とバイオセーフティーロードマップも提案された。
 ワークショップ終盤では後述する内容を含む声明がCOMESAの意見として発表された。
・    政策決定者の意見を取り入れ、遺伝子組換え(GM)作物の商業生産、その貿易、その緊急食糧援助への取り入れに関する整合性のある政策・指針草案を改善すること。
・    地域バイオ案税制と中央集約化GMOリスク評価機構を制度化する。
・    生物安全性ロードマップ草案を支持し、それをよく認識し、そのギャップを認識し、構成員での実施を支持推進する
・    コミュニケーション方法の草案を支持し、長短期に渡るプログラムの提携においてその運用を可能にすることを推進する。
・    専門化による調査委員やGMOリスク管理小委員会の運用支援のための資金援助を支持する。
・    同意した協議事項実行のための長期間のバイオテクノロジー/バイオセーフティープログラム協力を促進する
さらに詳しい情報を知りたい方はGetachew Belay博士(バイオテクノロジー政策アドバイザー長、ACTESA/COMESA)まで以下のサイトにメールして下さい。gbelay@comesa.int

アメリカ

えんどう豆アブラムシ遺伝子分析
 新規配列決定されたえんどう豆アブラムシ遺伝子の解析をマイアミ大学の研究チームが開始した。えんどう豆アブラムシは緑色の小さな虫で、マメ科植物や他の飼料作物の汁液を好むため植物に直接的ダメージを与えたり、ウィルスの媒介者となったりする。この研究成果は、遺伝子アンノテーションと呼ばれる遺伝子座や遺伝的機能の可能性の決定に役立つものであり、その結果植物や微生物の生態学的繋がりや遺伝子制御のベースとして活用されるものである。
 この研究はUSDA国立食糧農業機構が資金支援した。上記の成果はえんどう豆アブラムシの難解な生態を解明するために利用され、他のアメリカ農業に影響を及ぼすアブラムシを制御する手段を模索するのに役に立つものである。

この報道は、以下のサイトにある。http://www.nifa.usda.gov/newsroom/news/2010news/04011_pea_aphid.html

多様なコムギについて真菌抵抗性遺伝子を探る
カンザス州マンハッタンに拠点を置くUSDA農業研究機構の厳冬コムギ遺伝子調査チームが迫ろうとしているのは、Fusarium graminearum抵抗性要因の特定をしようとするはリスクもある育種戦略である。植物分子遺伝学者Guihua Bai氏が率いるこのチームは、中国、韓国、日本から集められた古い‘ランドレース系‘を含む外来コムギ系統に由来する新たな抵抗性因子の特定を始めた。温室で育成した87種のうち、26種が高いFHB抵抗性を示し、15種は真菌毒素デオキシニバレノール(発病中に真菌が合成する物質)のレベルが非常に低かった。
さらに6種はSumai3とも一致しない3つの異なるタイプのFHB抵抗性遺伝子を有していた。(Sumai3とは抵抗性遺伝要素の一種で、アメリカで栽培されているFHB抵抗性コムギに使用されている。)これらの系統種はアメリカコムギ種を栽培するために新たな抵抗性を得る源となるであろう。研究チームは遺伝子ツールを使用して他の遺伝子要因や商業利用の可能な種の選別の速度を上げている。
 詳細は以下のサイトにある。http://www.ars.usda.gov/is/pr/2010/100401.htm

花を長持ちさせる研究ツール
 フロリダ大学とレディング大学(UK)の共同研究機関であるUSDA農業研究機構、作物病理・遺伝学研究部門(カリフォルニア州デイビス)は根本的原因と老化メカニズムを制御する遺伝子を特定したと発表した。カリフォルニア大学(デイビス)で行われた。研究において、Cai-Zhong Jiang氏とMichael Reid氏によって低濃度のチジアズロン(TDZ)を吹きかけることで鉢植えした植物の葉と花の寿命が延びることが明らかにされた。その後‘ウィルス誘発性遺伝子サイレンシング‘またはVIGSと呼ばれる分子技術を用いた研究でTDZの働きのメカニズムやバラ以外の植物でより効果的であることが明らかとなった。
 この方法は目的遺伝子を導入したウィルスを植物に感染させ、感染、非感染植物を比較するもので、植物が元来持っているウィルス侵入に対する抵抗性を利用している。この方法の根拠となる実験はペチュニアをモデルとして行われた。このモデル実験では、色やエチレン生産に関わる配列をウィルスに挿入してサイレンシングさせると、紫色の花に白い斑点が生じ、老化促進物質であるエチレンの生成が抑制される結果が得られた。「ここでの基本的な考えはウィルスを迅速に遺伝子機能を失わせる道具として使うことで老化を操作しようというものである。」とCai-Zhong Jiang氏は述べている。
 より詳しいことは、以下のサイトにある。
http://www.ars.usda.gov/is/AR/archive/apr10/blooms0410.htm
モモDNAの解析が完了
 ラベル(Lovell)ピーチの遺伝子配列解析が完了したとClemoson大学の新報告が伝えている。Clemon大学でAlbert Abbott氏を代表として行われた大規模な研究プログラムの成果である。氏は分子遺伝学分野でのRobert and Lois Coker Trustees Chairであり、遺伝学と生化学分野の教授でもある。このラベルピーチは落葉樹の成長と分化に重要な遺伝子を特定・解析するためのモデル種として選択された。
ラベルピーチゲノムを解析すれば、リンゴやプラムのような近縁種との特徴付けや栄養素を強化させる遺伝子の特定も可能であろうと考えられている。Bryon Sosinski氏(N.C.州立大学園芸科学分野准教授、モモ解析プロジェクト米国コーディネーター)はその活動は世界中(イタリア、スペイン、チリ、ノースカロライナ.州共同ゲノム機構、Clemson・Washington州立大学)に及んでいる、と述べている。
 詳細と報告は以下のサイトにある。
http://www.clemson.edu/media-relations/article.php?article_id=2686

農家のためのGE作物管理
 「アメリカ合衆国における遺伝子組換え作物(GE作物)の持続的農業への影響」という研究はアメリカ国立研究会議から最近報告された。アメリカのGE作物を栽培している農家の多くは実質的な経済的、環境的利益(低い生産コスト、少ない害虫問題、殺虫剤使用量の軽減、在来種よりも生産高の増加)を得ている、と報告されている。今後もさらに農家が環境面での利益を得続けられる多くの可能性がある。
 その報告では他者間で、雑草耐性問題を挙げる政策決定者間の密な連携、雑草自体を操作してコストを削減する方法を模索、除草剤耐性GE作物の作成、さらに‘保護‘エリアでのEPA管理方法のように害虫が耐性を持たないようなやり方を是認するなどを推進している。次にあげる研究が推進され行われている;米国分水界でのGE作物の影響、GE作物の生産を行っていないものも含む全ての農家におけるGE作物効果の度合、畜産産業へのGE作物の影響
この報告のコピーは、以下のサイトから得られるhttp://www.nap.edu。 また報告やニュースリリースは以下のサイトにある。http://national-academies.org/ 
http://www8.nationalacademies.org/onpinews/newsitem.aspx?RecordID=12804

βカロチン含有量を増加した熱帯トウモロコシの栽培
穀物中のβカロチンレベルの制御に関わる自然発生的対立遺伝子が熱帯トウモロコシに導入され、そのβカロチン含有量が5倍以上増加した、とNature Geneticsオンラインで報告された。
 「トウモロコシはラテンアメリカやアフリカにおける主要穀物であり、炭水化物、タンパク質、他様々な栄養素の摂取源となっているが、プロビタミンAの含有量が一般的に少ない」とYan Jianbing 博士(CIMMYT、この研究の代表者である)は述べる。「我々が発見した有望な対立遺伝子はトウモロコシ中のβカロチン量を従来より5倍以上も増幅する働きがあった」と述べている。
 CIMMYTの特集記事によれば、11の研究機関から派遣された21人の国際専門家からなるこのチームはZea mays β-carotene hydroxylase 1(crtRB1)遺伝子の自然変異を調査した。この遺伝子はトウモロコシの果実中のβカロチンを変化させる働きをもつ。彼らが発見したプロビタミンA増強穀物は、crtRB1lycopene epsilon cyclase(lcye)の2つの遺伝子を対立遺伝子座に配置することで15µg/ g(grain)のβカロチンを持つ熱帯トウモロコシを栽培すること成功したのである。
この研究に関するCIMMYTの記事は以下のさいとにある。
http://www.cimmyt.org/english/wps/news/2010/apr/vitaminA.htm

有機栽培と従来型栽培に関するスタンフォードの研究
 有機栽培と従来型栽培方法との違いとはなんであろうか。Clystal Smith Spangler氏とスタンフォード大学の同僚による200以上の研究のまとめが発表された。
・    有機栽培は農薬残渣による汚染のリスクが非常に低い。しかし有機栽培された作物も従来法の作物もその残留農薬レベルは規定値よりも低い。
・    有機栽培は、細菌、重金属、マイコトキシン汚染を含み、安全性や栄養的な質の面で優れた面はない。
・    有機果物と野菜を食べる子供と有機穀物を食べる大人では、従来の食べ物を摂取するに比べてその農薬に対する暴露は少ないと言える。しかし農薬への暴露の度合いは両者とも安全性基準を満たすものである。
・    有機栽培と従来法での肉、卵、牛乳では細菌汚染度合は両者ともほぼ変わらないが、従来方法の肉、卵、牛乳では抗菌耐性細菌が有機栽培のものより多かった。
 報告は以下のサイトにある。http://healthpolicy.stanford.edu/events/is_there_a_difference_between_organically_and_conventionally_grown_food__a_systematic_review_of_the_health_benefits_and_harms/
 
USDAが害虫抵抗性GMコーンの規制を緩和
 慎重な調査と評価を行い、アメリカ農務省動植物健康調査機関(APHIS)はSyngenta Biotechnology, IncのGMコーンの市場導入の規制を緩和した。
 Syngenta社は2007年9月に害虫抵抗性Btコーンの市場参入規制緩和の申し立て書を提出した。2010年1月13日から5月15日までに市民から寄せられた意見である正確な環境アセスメントや植物の害虫リスク査定を通過し、この申立書は受理された。APHISは市民から寄せられた35の意見に対して説明し、そのコーンが米国環境規定に反するような有害な影響を環境にもたらすような要因を一切持たないことを公言した。
 より詳細な報告は以下のサイトにある。
http://www.aphis.usda.gov/newsroom/content/2010/04/ge_corn_resist_insects.shtml

GMパパイヤの生産が日本で承認
 日本はハワイからの遺伝子組換えパパイヤの輸入を承認した。GMパパイヤは今年から日本のスーパーの店頭に並ぶことができるようになった。これはDennis Gonsalves博士(アメリカ農務省太平洋沿岸農業研究センター長(ハワイ、Hilo)兼Cornell大学植物病理学名誉教授)が第63回雑草学西部支部で発表した。
 Gonsalves氏はGMパパイヤ研究のプロジェクトリーダーであり、GMパパイヤは4700万ドルのハワイのパパイヤ産業を支えた。パパイヤはハワイで2番目に多く栽培されている作物であり、そのほとんどがアメリカ本土と日本に輸出されている。ハワイ産パパイヤはその約25~30%が日本に輸出されている。
 原報告は、以下のサイトで見ることができる。
http://westernfarmpress.com/citrus/gm-papaya-wins-approval-0421/

アジア・太平洋地域

フィリピンの生化学者、アジア人初のロレアルUNESCO科学賞受賞
 フィリピン人生化学者にしてアジア人初のロレアルUNESCO科学賞を受賞したLourdes Jansuy Cruz博士(フィリピンDiliman大学海洋科学部)はフィリピン人初にしてアジア人初の女性科学者賞を受賞した。この賞は他4名が受賞している。世界中で千人近いノミネートがあったにも関わらず、Cruz博士はノーベル賞受賞者Gunter Blobel氏率いる審査員による厳正なる審査の結果、その先駆け的研究(海洋巻貝類由来の毒から非中毒性モルヒネを開発した、コノトキシン研究)が評価され、今回の受賞となった。
 30年前、彼女はBaldomero Olivera博士(Utah大学)とConus(フィリピンで発見された海洋巻貝の一種)毒から抽出されるペプチドの単離・特定について共同研究していた。 このペプチドの一つがアメリカのバイオテクノロジー会社であるCognetix Corporationによって開発され、Prialts Ziconotodine(モルヒネに代わる非中毒性物質)が生まれた。現在conotoxinは人の脳の働きを示す生化学的指針として研究に利用されている。Cruz博士は他の4人の受賞者と同様に賞金10万ドルを獲得、3月にパリのUNESCO本部で行われた授賞式に出席した。この名誉ある賞は毎年生命科学分野に貢献してきた大陸ごとの女性科学者に贈られる。
賞の詳細関連情報は、以下のサイトにある。
http://www.unesco.org/new/en/media-services/single-view/news/loreal_unesco_awards_and_fellowships_for_women_in_science_2010_to_be_presented_at_unesco/back/18256/
http://lifestyle.inquirer.net/sundaylifestyle/sundaylifestyle/view/20100314-258476/Filipina-is-first-Asean-winner-of-LOral-Unesco-Science-Award.
フィリピンのバイオテクノロジーについては、以下のサイトからいられる。
http://www.bic.searca.orgまたメールを以下のサイトに送って下さい。bic@agri.searca.org

CSIROが塩耐性デュラムコムギのフィールド試験に成功
 遺伝子組換え塩耐性デュラムコムギの最近の農場試験が高塩分土壌において既存種よりも生産力で勝った。このGMコムギはオーストラリア連邦科学・工業研究機構(CSIRO)の研究チームが開発した。CSIROのRichard James博士によれば、このコムギは親株Tamaroiより25%生産高が増加した。パンコムギと比べてデュラムコムギは塩耐性が低いが高級パスタに必須であるため、高い利益をだしてもいる。
 塩度はオーストラリアのコムギ農家にとって主要な環境問題の一つである。Rana Munns博士率いるCSIRO研究チームの説明では塩耐性遺伝子(Nax1およびNax2)は葉のナトリウムを阻害することによってコムギに有毒な作用を減らしているということだ。
詳細は、以下のサイトにある。
http://www.csiro.au/news/CSIRO-develops-highest-yielding-salt-tolerant-wheat.html

ヨーロッパ

ヨーロッパ人が農家のバイオテクノロジー使用を支持
Eurobarometer研究の中でAssociation Francaise des Biotechnologies Vegetales (AFBV) は、バイテクがヨーロッパで広く受け入れられていることを明らかにした。約77%の報告書がヨーロッパでは、農家がバイテクの先端的優位性を利用することを支持しているという内容であった。フランスでは、76%の国民が好意的に支持、同様にギリシャ、スロバキア、エストニア、チェコ、ハンガリー、スウェーデン、デンマーク、スロベニアでは86%が是認という結果となった。24歳以下の若い世代では81%が是認しており、55歳以上と比べて高い。さらに、バイテクを学んでいる学生、行政高官、サラリーマンは80%以上が好意的に支持しているのに対し、年金受給者、失業者、主婦、自営業者には多少支持の減少がみられた。
 このリポートはバイテクがヨーロッパ市民に広く受け入れられていると結論付けている。しかし、フランス農家の増収のために、技術に関する情報を提供するというさらなるバイテクへの一般市民の取り組みがなされるべきであると結論している。
フランス語の記事は以下のサイトにある。
http://www.presseafricaine.info/article-afbv-77-des-europeens-48585059.html

Btタバコが池由来の肝臓毒を中和
 タバコは非食用作物であり、健康に良くないものとして知られている。しかし、タバコが良い影響も持つことがわかった。Pascal M.W. Drake学術博士のチーム(St. George大学、ロンドン)は有毒な池の浮きカス、特にマイクロシスチンMRの抗体を生産する新たなタバコ品種をつくることに成功した。マイクロシスチンMRはシアノバクテリアから作られる肝臓毒で、飲用水、水泳用水、漁業用水の悪名高い毒素である。
 マイクロシスチン抗体の生産は組換えタバコの葉で作られ、養液培地中に根から分泌される。次の研究段階として、広い水域を浄化する水生植物ハイブリットを開発する。この新たなタバコは組換え植物の一つでしかなく、研究者達は様々な環境汚染物質を浄化する方法を模索している。
 詳細は、以下のサイトにある。
http://www.sgul.ac.uk/media/latest-news/genetically-engineered-tobacco-plant-cleans-up-environmental-toxin

UKのDEFRAがGMジャガイモの試験を許可
環境食糧地域担当省(DEFRA)は、イギリス国内でのGMジャガイモ試験を許可すると発表した。この試験はLeeds大学が行い、シスト線虫類または線状の害虫抵抗性GMジャガイモの開発を目的とする予定だ。これらの害虫はEUによって主要な殺虫剤が規制されてからジャガイモ農家を脅かしていたものである。今回の試験が成功すれば、殺虫剤を使用しないで害虫を除去できることになる。
 Leeds大学のPeter Urwin博士は試験が純粋に学術的なものであり、商業的要素のないことを強調した。計画では2年で試験を終了し、Yorkshireで以前の農場試験を破壊した組換え反対者達から守るために情報は公開しない予定である。
 詳細な情報は、以下のサイトにある。
http://www.defra.gov.uk/news/2010/100401b.htm

研究

干からびた植物に「命をふきこむ」
 蘇生可能シダ(Polypodium polypodioides)を使ってRonald Balsamo氏(Villanova大学生態学准教授)とBradley Layton氏(Drexel大学機械工学准准教授)の連携チームが極端な水分損失した植物の生き残り機構の謎に迫っている。この研究では時間ごとに異なるタンパク質レベルでの関連性を見出す試みを行い、植物組織の気泡中のタンパクの位置を特定したり、それぞれのタンパクの位置を強力な電子顕微鏡を使って決定したりした。
 研究チームはdehydrin(特別な水分を誘引、隔離、集積する働きを持つタンパク質)が細胞壁の近くに存在していることを発見した。実際に水分子で囲まれたdehydrinは細胞膜と細胞壁の間もしくは細胞壁層の間の潤滑油となっていると考えられている。これは細胞壁が乾燥してぼろぼろに崩れるのを防ぐのに大変重要な作用である。植物導管組織もまたこのタンパクの働きによって変形から守られている。その結果、水分が戻るまで完全にその形を維持している。dehydrin遺伝子の特定と他の種への導入が他の植物に旱魃耐性を付与するのに重要なものとなる。
記事の全文は30日間無料で以下のサイトから閲覧可能である。
http://www.amjbot.org/cgi/content/full/97/4/535 その後の問い合わせはいアのサイトのRochard Hund氏にコピーをお願いできる。ajb@botany.org また、この報告は以下のサイトで見ることができる。
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2010-03/ajob-bdp033110.php

2つの利用目的をもつトウモロコシ-食糧・燃料生産に関わる特徴の遺伝子解析-
トウモロコシ茎葉は穀物の代わりにバイオ燃料としてのエタノールを得るのには、その豊富な資源、セルラーゼ特性の優良さから重要である。そのため2030年までに従来の液体燃料の30%に置き換えるという目標を達成するため、燃料用トウモロコシ茎葉の生産性と品質の改善が求められている。ウィスコンシン大学のA.J.Lorenz氏の率いる研究チームはバイオ燃料生産に必要な遺伝子間相互作用を解析するため、トウモロコシ(Zea mays L.)でセルロース由来エタノール生産のための細胞壁形質の遺伝学的研究を行い、セルロースバイオ燃料生産のための特性を遺伝的関係を明らかにしようとしている。
 自家受粉種、他家受粉種の解析結果、栽培と選択を通じてトウモロコシ品質と燃料生産高を同時に改善するのに影響するような不都合な性質はないことがわかった。また構造炭水化物濃度と細胞壁消化性に相互関係のないことが明らかとなった。これは理論上炭水化物変換による質量あたりのエタノール生産量の増加が可能であることを示している。
 この研究の要旨は、以下のサイトにある。
http://crop.scijournals.org/cgi/content/abstract/50/3/842