最新作物バイオテク 2010年5月

世界
米国は「食糧供給の将来」についてイニシアティブを提示

気象専門家が食糧保障問題に挑戦 - 気象変動への挑戦アフリカ
FAOは、アフリカの食糧安全保障に向けてのより一層の努力を呼びかけた
基礎的農業研究に基本的基金を投入

アフリカ
ケニアが国立生物安全機構を発足
バイオ肥料として役に立つ土壌細菌と真菌

南北アメリカ
米国農務省研究所の科学者が紋枯病に遺伝抵抗性を同定した
オレイン酸含有量の高いダイズ油が2012年に市場にでる
米国食品医薬品局(FDA)は Vistive Gold ダイズ油を承認
ホテイアオイの生物的制御が発表された
「食糧供給の将来(FTF)」戦略の一部としての生体成分強化

アジア太平洋
中国の科学者が初めて組換え作物の経済インパクトを多種作物、大規模に評価を実施
中国政府高官がバイテクを取り上げた

ヨーロッパ
英国の学者がカラス麦について研究した
より健康に良い新しい小麦品種
英国環境・食糧・農村地域省(DEFRA)
英国、ドイツ、米国の新聞による組換えに関する概念の枠組み形成について
 
研究
塩処理下での米の香りと収量減少との関係
ピーナッツにおけるアフラトキシン耐性と旱魃耐性の関係

世界

米国は「食糧供給の将来」についてイニシアティブを提示
米国政府はシカゴ評議会によって開催された国際問題シンポジウムで、「食糧供給の将来」に関するイニシアティブを提示した。これは世界飢餓と食糧安全保障に対する政府の義務を再確認するためのものだ。米国国際開発庁長官のDr. Rajiv Shahは、政府の食糧安全保障計画を発表し、バラク・オバマ大統領陣営の世界飢餓と食糧安全保障の行動計画である「食糧供給の将来」指針を公表した。
「食糧供給の将来」は飢餓や貧困を減らすため、国の計画予算を調整し、持続的多様な政策決定者間の協力関係を醸成する。このイニシアティブは農業生産、研究、そして国際的な食糧供給の増大と食糧価格の低下に向けて市場を改善するように資源投入をするものである。オバマ大統領は、2009年のイタリア、ラクイラで開催されたG8サミットにおいて、今後三年間、最低でも35億ドルを農業発展と食糧安全保障に投資することを誓約した。他の資金供与者による資金は18.5億ドルにも上る「食糧供給の将来」につながる食糧安全保障プログラムの資金となった。
政府からの報道機関への詳細は以下のサイトにある。http://www.america.gov/st/texttrans-english/2010/May/20100520164738eaifas0.9879354.html
 
気象専門家が食糧保障問題に挑戦 - 気象変動への挑戦 
砂漠化、海面上昇、淡水源の枯渇、そして壊滅的な自然災害は気候変動の影響で発生した環境問題であり、これらは国際的な食糧安全保障と供給を崩壊させる危険性がある。そこで、国際食糧政策研究所(IFPRI)の気象変動研究者達はアフリカやアジアの農業従事者にこれらの問題に順応し、緩和する技術が必要であると提言した。気象専門家、科学者、政策決定者、そして農業従事者達は昨年5月4日、ナイロビの農林業センターで開かれた「気象変動に対応した食糧安全保障構築に向けて」の会議でこの食糧安全保障と気候変動に対する挑戦に取り組んだ。この会議は気象変動、農業と食糧安全保障(CCAFS)プログラムの一環で、本プログラムは世界の農業を気象変動によって生じる様々な障害に適応し、さらに農業によって生じる温室効果ガスを削減することを目的としている。
「農業従事者の生活を向上させるため、我々は環境に優しく、安定した食糧供給を確保する手段を見つけなければならない。この会議はその為に重要な役割を持つ。」とCCAFSの会長であり、会議の主催者の一人であるTorben Timmermann氏が語った。CCAFSは開発途上国食国際農業研究顧問機構(CGIAR)と地球システム科学パートナーシップ(ESSP)が共同で立ち上げた10年間のプログラムである。
原報告の詳細(オランダ語で)は以下のサイトにある。http://www.life.ku.dk/Nyheder/2010/960_nairobi.aspx.
 
FAOは、アフリカの食糧安全保障に向けてのより一層の努力を呼びかけた
国連食糧農業機関(FAO)長官のJacques Diouf氏は、アフリカの食糧安全保障の現状についての懸念を表明した。FAOの第26回アフリカ地域会議大臣級会合の開会の言葉で「サハラ以南のアフリカでは、2009年以降、億6500万以上の人が栄養失調状態にあり、人口の30%が飢えに苦しんでいる。」と語った。彼はこの現状は、関係者の直ちに間断ない改善が必要であると強調した。また、この状況は小規模農家を支援し、農家畜産を強化するチャンスであると語った。
アフリカは水不足や先進的な農業機器を得られないなど、様々な農業問題を抱えている。そしてDiouf氏によると、これに加えて、資金の過少投資がアフリカの栄養失調と飢餓の原因の一つである。安定した食糧供給と安全保障のためには、今後40年間で有意に食糧供給率を伸ばさなければならない。近年のこの大陸農業の発展と成功を考慮すると、これは決して難しい問題ではない。
全報告は以下のサイトにある。http://www.fao.org/news/story/en/item/41994/icode/
 
基礎的農業研究に基本的基金を投入
 国立科学財団(NSF)は農業開発のための基礎研究(BREAD)プログラムの初年度に15もの助成金を給付した。ビル&メリンダ・ゲイツ財団が立ち上げたこの5年間のプログラムの目的は、発展途上国の農業問題を解決する、持続的で科学的根拠に基づいた農業問題の解決に向けたことを編み出すことをねらったものだ。
 NSFは、この助成金は科学者達が、「小規模農家が直面している問題に新しい独創的な技術や研究アプローチで切り込む助けになる。」ものに授与された。例えば、ワシントン州立大学、パデュー大学、ウィスコンシン大学、パキスタンのCOMSTAS大学、インドのパンジャブ農業大学、そしてパイオニア・ハイブリッドは旱魃条件下でも収穫量を増やす、新規の矮化遺伝子を同定するプロジェクトがあげられる。」
「世界中の優れた科学者達を引き込むことで、BREADプログラムは農業が抱える深刻な問題に独創的に取り組む事ができる。」また「そうして生まれた解決策は、多くの小規模農家が収穫量を増大して所得を増やし、飢餓と貧困から自分自身で抜け出す助けとなるだろう」と、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の農業発展プログラムの副長官Rob Horsh氏は話した。
 この助成金は42の米国研究機関とケニア、南アフリカ、マラウイ、オーストラリア、コロンビア、メキシコ、スイス、デンマーク、パキスタン、インド、パプアニューギニア、英国を含むの共同研究機関に給付された。また、開発途上国食国際農業研究顧問機構(CGIAR)や民間企業の研究者も一部のプロジェクトに参加する。
NSFメディアリリースは、以下のサイトにある。http://www.nsf.gov/news/news_summ.jsp?cntn_id=116932
また2010年度のBREAD助成金の全リストは、以下のサイトにある。http://www.nsf.gov/bio/pubs/awards/bread10.htm.
 
アフリカ

ケニアが国立生物安全機構を発足
 ケニアの高等教育科学技術大臣William Ruto氏は、2010年月13日にケニア私物安全機構(NBA)を発足した。機関の立ち上げ演説で、大臣は、政府が生物安全法に基づき、かつ透明性のある方法でバイオテクノロジー分野での事業を行うことにしたと話した。またそのためには国民の協力が第一である。大臣は、ケニア国民は本機関が国のバイオテクノロジーを向上させる事を待ち望んでおり、特に遺伝子組換え生物及びその産物の規制が大切であるを強調した。
NBAの立ち上げは生物安全法のの主要事項である。この機構は、著名な科学者、主要省庁の事務次官、生物安全室の長官、農業従事者、消費者、民間企業の代表者といった幅広い政策決定者からなる機構である。
大臣は、全世界が飢饉、貧困や病気の軽減においてバイオテクノロジーが果たすべき役割は大きいことを認識していると話した。農業、ヒトの健康、畜産業、貿易、工業、環境管理におけるバイオテクノロジーの安全な応用が、開発に向けての最上の選択肢の一つである事は既に示されている。インドや中国はBtワタの様に、新しい技術を利用して利益を得るため、バイオテクノロジーの商業的能力を駆使し、最高位の政治、技術レベルで周到な政策決定を下した。またアフリカにおいて、バイオ技術作物の商業生産に資金投入した国は南アフリカ、エジプト、ブルキナファソだけであったと指摘した。ブルキナファソではBtワタは生産高を30%増加でき、農薬の使用を約半分に削減し、農家の所得を高めることができた。
Hon. William Roto氏は、来年までにBtワタの栽培を導入し、ケニア国内の綿工業を活性化させるため、ケニヤの農業者を助ける協奏的努力を呼びかけた。また、ケニアは人口増加に見合った食糧生産を可能にするため、適切な技術の導入を検討すべきだと指摘した。
更なる情報は、ケニア生物安全機構のHarrison K. Macharia氏に以下のサイトでコンタクトしてください。harimacharia@yahoo.com
 
バイオ肥料として役に立つ土壌細菌と真菌
国際熱帯農業研究センター(CIAT)は「地下生物多様性の保存および持続可能な管理」(CSM-BGBD)プログラムを設立した。本プログラムは地下生物多様性を利用して食糧安全保障を向上し、農家の所得を増やす目的で、ブラジル、コートジボワール、インド、インドネシア、ケニア、メキシコとウガンダの7カ国の研究者達によって実施される。
彼らの研究結果から、土壌真菌および細菌を農業に利用することで作物の収穫量が50%以上増加することが分かった。例えばケニアで実施された試験では、根粒菌を接種した土壌で栽培することで、大豆の収穫量が40-60%増加した。さらに、土壌に肥料と共にトリコデルマ属の真菌を加えることで収穫量は2倍に増大した。これらのバイオ肥料を導入することで農家はコスト削減でき、水と栄養利用を効率よく改善できる。
プレスリリースは、以下のサイトにある。http://www.unep.org/Documents.Multilingual/Default.asp?DocumentID=624&ArticleID=6573&l=en&t=long.また、CSM-BGBDプロジェクトの詳細は以下のサイトにある。、http://www.bgbd.net/.
 
南北アメリカ

米国農務省研究所の科学者が紋枯病に遺伝抵抗性を同定した
 紋枯病は米の穀粒品質と収穫量に深刻な影響を及ぼす病気で、紋枯病菌(Rhizoctonia solani)によって起こる。米農務省農業研究所は、紋枯病の耐性遺伝子の同定に成功した。
植物病理学者のYulin Jia氏と共同研究者は、紋枯病の発病をコントロールしていると考えられる遺伝領域として初めて発見された領域qShB9-2を同定し、確認した。Georgia Eizenga氏のチームはつの可能性の高い品種を発見し、何種かを国内種と交配させ、新たな耐性遺伝資源を作り出した。同様に、Shannon Pinson氏は紋枯病に耐性を持つ米を作る遺伝子を持つクロモソーム領域を組換え近交系の遺伝子から発見した。
紋枯病の研究開発に関する最新の報告は以下のサイトにある。http://www.ars.usda.gov/is/pr/2010/100504.htm.
 
オレイン酸含有量の高いダイズ油が2012年に市場にでる

オレイン酸含有量が多い大豆油は、加工過程でトランス脂肪酸を生成する水素添加を必要としないため、健康に良いとされている。パイオニア・ハイブリッド社は、2012年までに、この大豆油をPlenishTMという製品名で一般販売する事を目標としている。この組換えダイズは、現在市販されている商品に比べ、飽和脂肪酸が20%少ないという特徴も持つ。
PlenishTMは今年末に米国規制認可を受け、2011年にオイルテストとフィールドテストを行い、最終的に2012年に商品化される予定である。「大豆油の品質を向上する事は我々の挑戦の半分に過ぎない。我々はさらに、生産者達の栽培意欲を高められる品種、オレイン酸含量が高く、かつ従来の大豆と収穫量が変わらない品種を開発しなければならない。」と、研究者のSusan Knowlton氏は話した。『我々は、油の品質と圃場試験のこれまでの結果に喜んでいる。』とも語った。 
パイオニア・ハイブリッド社のプレスリリースは以下のサイトにある。http://www.pioneer.com/web/site/portal/menuitem.2ef674038413d5e663816381d10093a0/
 
米国食品医薬品局(FDA)は Vistive Gold ダイズ油を承認
米国食品医薬品局(FDA)は、モンサント社に対し、ビスティブ・ゴールド大豆を原料とした大豆油を安全食品認定(GRAS)する旨の回答書を発行した。食品会社は、飽和脂肪酸含量が低く、トランス脂肪酸が少ない、あるいは含まない特徴を持つダイズ油を使用した各種食品の開発及び試験が可能になった。
 「健康食品の需要は近年ますます高まっており、本製品はそれに見合った原料供給を可能にすることになる。」とモンサントの世界の油糧を先導するRoy Fuchs氏がのべた。「ビスティブ・ゴールドの開発により、消費者にダイレクトに健康効果をもたらす、次世代の大豆生産を垣間見ることができる。我々はさらに、本製品の発売後、市場でプレミアム価格が設定され、農家が利益を得ることを期待している。」とも語った。
プレス・リリースによると、モンサント社は官公庁への申請手続きを既に完了している。規制プロセスが終了すれば、本製品は各食品会社で原料として利用される事が可能になる。
全報告は、以下のサイトにある。http://monsanto.mediaroom.com/index.php?s=43&item=841
 
ホテイアオイの生物的制御が発表された
 Megamelus scutellaris(半し類:ウンカ科)を利用したホテイアオイ(Eichhornia crassipes)の生物的防除が、フロリダとアルゼンチンのブエノスアイレスに拠点を置く米農務、省農業研究部の昆虫学者らによって研究された。ホテイアオイは繁殖力が強く水辺で多くの問題を引き起こす水草であるが、これがウンカの幼虫、成虫の餌となることが発見された。この発見から、ウンカ虫は従来の除草剤に代わる効果的な手段として期待されている。
 ウンカ虫は移動性が高く、高度に管理されたシステムでも生存できるため、現在の除草プログラムにうまく適用できると研究チームは確信している。さらなる研究から、ウンカは宿主特異性が高く、在来種や他の経済的に重要な生物種に害を及ぼす危険性はない事が明らかになった。
詳細は 、以下のサイトにある。http://www.ars.usda.gov/is/pr/2010/100518.htm
 
「食糧供給の将来(FTF)」戦略の一部としての生体成分強化

米国政府によるFTF戦略の立ち上げにあたり、USAID長官のDr. Rajiv Shah氏は、農業による栄養改善のためには、Harvestplusの寄与が不可欠であると強調した。主要食物の栄養価を高めることはFTF戦略の一つであるが、これはHarvestPlusの、微量栄養素を含む主要生産物を強化するという目標と一致している。HarvestPlusにより生産される生体成分強化作物の一つに、ビタミンAを豊富に含むオレンジ色サツマイモがある。この生体成分強化作物はアフリカ国民の健康状態と経済的福祉を増進させる目的で、国際ポテトセンターと共同で開発された。HarvestPlusはまた、ルワンダと生体成分強化豆を、インドとトウジンビエを共同開発しており、FTF戦略においてHarvestPlusに期待される役割は大きい。
全体の報告は以下のサイトにある。 http://www.harvestplus.org/content/biofortification-aligned-new-us-%E2%80%98feed-future%E2%80%99-strategy 
 
アジア太平洋

中国の科学者が初めて組換え作物の経済インパクトを多種作物、大規模に評価を実施
 中国農業科学院(CAAS)植物防疫研究所は、初めて組換え作物の経済インパクトを多種作物、大規模に評価を完了した。結果は2010年月14日のサイエンス・オンラインで発表された。
 中国北部で10年間にわたって行われた農場試験の結果、Bt(Bacillus thuringiensis)ワタの栽培によりカメムシ科の昆虫(異翅目カメムシ科)の個体群レベルが徐々に増加し、ワタや他の作物に害を及ぼす事が明らかになった。より具体的には、Btワタがカメムシの発生源となり、Btワタの栽培により殺虫剤を使用しなくなった事で個体数が増加したという。従って、Btワタの栽培には害虫処理体制の改善がアグロ・ランドスケープレベルで必要であり、この害虫の発生と拡大の責任を負わなければならない。
 本研究により遺伝子組換えBt(Bacillus thuringiensis)ワタの長期間での非標的害虫への影響が明らかになり、遺伝子組換え耐虫性作物が昆虫個体群の進化に及ぼす影響を解明する理論的基礎が構築された。そして主要害虫を持続的にコントロールする理論と技術の必要性が示唆された。
 全報告は以下のサイトにある。http://www.sciencemag.org/cgi/content/full/sci;science.1187881
 
中国政府高官がバイテクを取り上げた
 2010年月19日から20日にかけて、北京の科学技術委員会の主催で第三回国際バイオテクノロジー・農業サミットが開催された。「中国の農業成長への科学技術、特に現代バイオテクノロジーの寄与率はこの30年で27%から51%に上昇している。」中国の農業技術拡張サービスセンターの長官Dr. Xia Jingyuanはサミットでこう発言した。
 北京科学技術委員会の副長官Yang Weiguangもまたバイオテクノロジーの必要性を認識しており、「農業科学技術の発展のコアとなる種子産業の進展には、バイオテクノロジーの力が必要である」と話した。300人以上の政策決定者、研究者、起業家、そして政府や公営、民間企業の代表者、マスコミがサミットに参加し、農業科学技術の成果と国内需要について、そして政府指導の下、農業バイオテクノロジー企業を設立する事について討論した。
サミットの詳細は以下のサイトにある。http://bas.newlife.org.cn/?lang=en 中国のバイオテクノロジーに関する情報は、中国バイオテクノロジー情報センターのProf. Zhang Hongxiang氏と以下のサイトでコンタクトをとって下さい。zhanghx@mail.las.ac.cn
 
ヨーロッパ

英国の学者がカラス麦について研究した
英国では、カラス麦の改良品種の開発プログラムでアベリストウィス大学の生物科学、環境及び地域科学研究所(IBERS)に4.9Mユーロが投資された。この5年間のプログラムで、バイオテクノロジー・生物科学研究会議(BBSRC)、英国環境・食糧・農村省(Defra)、ウェールズ議会政府、スコットランド政府が資金提供している。
「カラス麦は植物病や雑草問題が少なく、穀物ローテーションにおいて重要な間作作物である。小麦と比較して少量の肥料で育ち、限界地域でも生育できる。また栄養価の高い飼料であり、農場でも栽培できる。我々は植物遺伝学の基礎研究と植物育種技術をうまく融合し、食糧、水、エネルギー安全保障及び環境維持という課題に対処するべく、商業的に実現可能な改善種を開発している。」とIBERSのカラス麦育種プロジェクトリーダーのDr Athole Marshallは話した。  
Marshall氏はさらに、「本研究には最新のゲノム科学技術が適用される。分子学的知見と従来の植物育種技術の融合、そして研究・産業パートナーによる新品種の評価と組成分析の結果は、新しいカラス麦品種が多くの最終消費者の要求に見合ったものであると証明してくれるだろう。」と加えた。
アベリストウィス大学からのプレスリリースは、以下のサイトにある。
http://www.aber.ac.uk/aberonline/en/archive/2010/04/au0810/
 
より健康に良い新しい小麦品種
小麦の各栄養成分の含有量は種によって様々であり、中には通常の4倍もの栄養価値を持つ種が存在する。食物繊維、ビタミン類、ミネラルを多く含む小麦を開発するため、2005年6月、EU第6次研究・技術開発枠組み計画(FP6)の「食品の品質と安全」分野でHEALTHGRAINプロジェクト(FP6)が発足した。このプロジェクト名は、「Exploiting Bioactivity of European Cereal Grains for Improved Nutrition and Health Benefits」(ヨーロッパの穀物農業を活性化し、栄養と健康効果を高める)の文字の組み合わせを取って命名された。
本プロジェクトは今月で終了するが、プロジェクトの研究者達は小麦育種計画に利用できる食物繊維、トコフェロール(ビタミンE)、そしてステロールのMarker(標識)を同定したと報告した。さらに、彼らは育種家、穀物商人、製造加工業者、そして栄養価改善小麦の識別ラインに関わる全ての食品産業業者に応用可能な、近赤外線測定法及び抗体などの新しいツールを開発していると報告した。
報告の詳細は以下のサイトにある。http://cordis.europa.eu/fetch?CALLER=FP6_NEWS&ACTION=D&DOC=4&CAT=NEWS&QUERY=0128d9078418:af4c:7cdc92c2&RCN=32129
 
英国環境・食糧・農村地域省(DEFRA)
英国環境・食糧・農村地域省(DEFRA)は、英国ノリッジ、ジョン・インネス・センターのセインズブリー研究所に対し、ジャガイモの葉枯病に耐性を持つGMジャガイモの試験研究の認可を下した。英国の環境への影響に関する諮問委員会(ACRE)はGMジャガイモ適用の評価を行い、提案された試験が環境及び人体に有害な影響を与えないという結論を下した。ただし、GMジャガイモを試験場に残留させない、収穫されたジャガイモは食用及び飼料用に利用しないという条件が合意に含まれている。 
ニュースは以下のサイトにある。http://ww2.defra.gov.uk/2010/05/21/defra-approves-gm-potato-trial/更に詳しいセインズブリー研究所からの申請と法的内容は以下のサイトにある。http://www.defra.gov.uk/environment/quality/gm/regulation/registers/consents/index.htm.また、申請に対する助言は、以下のサイトにある。http://www.defra.gov.uk/acre/pdf/advice/acre-advice-10-r29-01.pdf.
 
英国、ドイツ、米国の新聞による組換えに関する概念の枠組み形成について
大衆の科学理解誌(The public understanding of Science)は、Framing of Science Issues in Opinion-Leading News: International Comparison of Biotechnology Issue Coverage.(世論をリードする新聞による科学問題の枠組み構成:バイオテクノロジー問題の報道の国際比較)というタイトルの論文を発表した。著者のスウェーデン、ウプサラ大学のThomas Listerman氏は、2000年から2002年にかけて、ドイツ、英国、米国で、現代科学の主要な論題であるバイオテクノロジーが世論をリードする新聞でどのように報じられ、世間にどう認識されているのか、またその認識がどの様に変化したかを調査した。
調査の結果から、メディアの注目度が高まると確かな世論の見直しが起こる事が明らかになった。ドイツではバイオテクノロジーの倫理面での討論が激しくなり、イギリスでは国民の議論が活性化した。一方、アメリカの新聞では科学的、経済的な視点での討論が多く見られた。
詳細は以下のさいとにある。 http://pus.sagepub.com/cgi/content/abstract/19/1/5

研究

塩処理下での米の香りと収量減少との関係
 コメの香りはベタインアルデヒド脱水素酵素2(BADH2)という酵素活性を失うこの遺伝子の遺伝子の欠損に関係がある。植物のBADH酵素群は非生物的ストレスに耐える能力を支援するために存在し、これらの酵素群はグリシンベタイン(GB)の蓄積を行っている。しかしイネが自身でGBを作ることができないのは、BADH2の生産が、高塩濃度などの環境ストレスへの耐性を支援するγ‐アミノ酪酸(GABA)の代謝に関係している。
 オーストラリアの植物保全遺伝センターではTimothy Liam Fitzgerald氏らにより、温室スケールでの実験が行われ、香り米とBADH2を持つ非香り米で、塩への耐性がどの様に異なるかが比較した。結果から、塩水に曝された香り米では成熟種子の生産が大幅に阻害される事が分かった。従って、消費者に通常好まれる香り米は塩分感受性の品種から作られると考えられる。  
全報告は、以下のサイトにある。 http://dx.doi.org/10.1016/j.envexpbot.2010.01.001.

 
ピーナッツにおけるアフラトキシン耐性と旱魃耐性の関係 
これまでの研究でピーナッツの旱魃耐性が収穫前のアフラトキシン汚染に対抗する品種を選ぶ間接的選抜指標に利用できることが示唆されていた。タイのコンケン大学のA. Arunyanark氏らが行った圃場試験で、旱魃および非旱魃状態における交配から得られた140種のピーナッツについて、アフラトキシン耐性の遺伝的が評価が行われた。また、アフラトキシン耐性と乾燥耐性特性の遺伝学的な関係が研究された。研究者たちは、アフラトキシン病原体であるAspergillus flavusの感染、アフラトキシン汚染、バイオイマス、収穫高、バイオマスと収穫高の旱魃耐性指標、SPADクロロフィルメーター示度、比葉面積といった各種関連データを収集した。

結果によると、種子の感染とアフラトキシン汚染への遺伝特性の関与は低~中位のものであった。つまりこれらの形質を改良することは難しいことを意味する。しかし、種子感染とアフラトキシン汚染の遺伝子型は旱魃条件下での旱魃耐性と負の相関関係を持つことが明らかにった。この事実は、旱魃耐性遺伝子型の選抜によりアフラトキシン耐性を高められる事を意味している。また比葉面積とSPADクロロフィルメーターの示度はアフラトキシン耐性の間接的な指標であり、これらの簡易測定が大規模育種プログラムに有効に適用できると考えられる。この研究の要旨は以下のサイトにある。 http://dx.doi.org/10.1016/j.fcr.2010.03.011