上川地域アグリネットワーク 第2回懇談会 開催報告

2月20日(火)、旭川市において、フーズ&アグリバイオネットワーク事業の一環として、旭川食品加工協議会、旭川市、北海道東海大学、旭川バイオテクノロジー推進懇話会の関係者(8団体24人)が集まり、「道産素材の持つブランド力」をテーマに懇談会を開催しました。
 懇談会では、はじめに西村HOBIA副会長から「道産素材の持つブランド力:アグリ&フードバイオビジネス戦略-美味しい・安心・安全は当たり前・独り
よがりの製品を販売してないか-」の問題提起があり、続いて、北海道東海大学芸術工学部長小林
謙先生からは「くらしの中のデザイン」、旭川バイオテクノロジー推進懇話会会長木村晃久氏からは「旭川テクノロジー推進懇話会-誕生・取組・課題」に関し
て、ご提言をいただきました。
 このうち、小林 謙先生のご講話「くらしの中のデザイン」について報告します。

<ご講話要旨>

① 日本のデザインの始まりは、1950年、アメリカから帰国した松下幸之助氏の「これからはデザインの時代だ」発言、翌年のレイモンドロイ制作の高貴さ漂う「ショートピース」のデザインにあるなどとも言われる。

② 食品デザインの多くはパッケージデザインで、パッケージデザインには2つの要素、製品情報デザインと視覚情報デザインがある。
製品情報デザインには瓶・缶など立体物の中身の安定を図る側面があり、視覚情報デザインにはポスター、ホームページなどメッセージを伝える側面がある。

③ 食品関係の有名なデザインには、瓶と瓶がぶつかっても割れないようにデザインされたコカコーラ瓶、お湯を入れても外側が熱くならない素材をデザインした
カップヌードル容器、一升の瓶詰めであった醤油を180mlの卓上瓶に入れ、そのまま食卓に載せたことが、醤油を世界ブランドにしたキッコーマンの例があ
る。

④ パッケージデザインには、食文化を伝えたり、変えたりする要素がある。パッケージデザインはモノの表面を覆うだけの化粧術ではなく、名前をつける、文字をつける、美味しそうに見える、ユニバーサル化などもデザインと言える。

⑤ 食品デザインは、社名のPRや売るためのだけのモノではない。食べ物はその国の文化であるため、米も文化、茶碗・箸も文化、配膳・作法も文化と言え、食品デザインはこれらの要素を包含したものと言える。

⑥ 学生の卒業デザイン「Enjoy Cookie-親子が楽しく共有する時間-」を紹介する。
 作品は、何種類かの動物、たとえば羊の頭、胴、足の型をくり抜いた直径20cmの数枚の円盤状の板、動物園の絵を描いたナプキン、クッキーづくりレシピ
と収納バックのセット。この「型」で抜いて動物クッキーのパーツをつくり、焼き上がったクッキーのパーツを、親子で組み立てるものである。

<制作者コメント: お菓子づくりの経験がない親子でも「つくる・食べる・片付ける」というそれぞれの工程を子ども一緒に楽しむことのできる、お手軽クッキー
ツールです。今までは平面のクッキーが主流でしたが、これはクッキーを組み立てることで立体的な動物が完成します。組み立てた動物クッキーは、絵の描いて
あるナプキンの上に置くことにより、動物園としても楽しむことができます。型本体はステンレスではなく、手にやさしい木で作られているので、型自体を組み
立てて飾ったり、パズル感覚で遊びならが後片付けをすることができます。>

 この作品には、何も新しい要素のものはないが、木をくり抜いた動物の「型」でクッキーという食品をつくるという「工芸と食品づくりのマッチング」に斬新さがある。
柄の長い恋人スプーン、会話の広がるキーワード皿、茶柱が必ず立つお茶など、デザインで新しい食の分野を切り開いていけるかもしれない。

⑦ デザインは「お母さんのおにぎりのようなもの」「恋人に花を贈る気持ちで」といわれ、この方のためにという対象を明確にする、口の大きさとか好みなど相手に合わせることが大切である。

⑧ 最後に、デザイン分野は、商品と消費者の接点ばかりではなく、農業生産の段階、工場にも、農業生産者と加工業者の間に、加工と加工の間にも係わるものと考えていただくと、デザインと食品との関わりが広がっていくと思う。

(フーズ&アグリ事業CM 高橋達夫 記)