Category Archives: 第264号

「北海道バイオ・ステージの講演要旨」

第24回北海道バイオ・ステージは、「アレルギー原因食材と安全食品への対応」をテーマとした2つの講演、並びに、「HOBIAアグリ事業のご紹介」を、平成20年11月6日(木)、アクセスサッポロを会場に、約30名の参加により開催されました。講演要旨は次の通りです。
・演題:「特定アレルゲン物質の測定法」
講師:日水製薬株式会社 診断薬マーケティング部マーケティンググループマネジャー
                     田中 誠司 氏
食物アレルギーは、時に重篤な症状を示し、生命にかかわる重要な疾患とされている。そこで平成9年に当時の厚生省により「食物アレルギー対策検討委員会」が発足され、食物アレルギーの実態と誘発物質の検討が開始された。本委員会では、次いで平成13年の特定原材料の指定を行い、継続した活動の中で、平成20年に“えび”と“かに”の表示が2年間の猶予期間を設け、義務化することを定めた。
食物アレルギー患者は全人口の1~2%存在し、誘発されるアレルゲンの濃度としては、mg/mL濃度レベルでは確実に誘発し、μg/mL濃度レベルでは誘発に個人差があり、ng/mL濃度レベルではほぼ誘発しないと言われている。そこで、数μg/mL濃度レベル以上の食物アレルゲンを含有する食品においては、全ての流通段階で表示が義務化されることとなった。このように微量なアレルゲンを管理するにはコンタミネーションを含めた、日々の工程管理が重要となり、そのためにも高感度・高精度な食物アレルゲンの検知法が必要である。
日水製薬株式会社では、従来の食物アレルゲンの高感度検知法の販売は勿論のこと、近年表示が義務化された、“えび”と“かに”由来のタンパクであるトロポミオシンの高感度検知法であるEIA試薬(酵素免疫測定法試薬)の開発を行い、FAテストEIA-甲殻類「ニッスイ」という商品名にて販売を行っている(図1)。本試薬は感度・再現性に優れている反面、プレートリーダー等の高価な装置が必要となる。そこで、日々の工程管理等に利用可能な、簡易試薬であるFAテストイムノクロマト-甲殻類「ニッスイ」という商品も合わせて開発を行い販売中である。イムノクロマト試薬は定性試験であり、簡易迅速に“えび”と“かに”由来の食物アレルゲンの有無をチェックできる。
EIA試薬とイムノクロマト試薬の2種類は両試薬のメリットとデメリットを有するため、ニーズに合わせた使い分けを実施することで、日々の食物アレルゲンの残存リスクコントロールに有用であると考えられる。

・演題:「アレルギー表示と現状」
講師:北海道大学農学研究院
教授 浅野行蔵 氏     
食物アレルギーの問題が、食品の問題のなかで特別な意味を持つのは、アレルギーによって重篤になる人と、何も感じない人との差が決定的に大きく、問題への切実感が、全く異なることに起因している。今年も学校などの給食施設が、原因となって児童のアレルギー事故が、発生している。なかでもソバは、アナフィラキシーショックを起こしやすく、もっとも危険な食品の一つである。1988年には、学校給食で出されたソバを食べた小学生が、死亡するという重大事故が、地元札幌で発生している。公民館でのそば打ち教室も危険なことである。ソバの扱いには、慎重を期す必要がある。製粉会社や製麺工場では、小麦粉が舞っており、職業病としてのアレルギーもある。私の大学でも学生に対して、ネズミをあつかう実験をするサイには、ネズミの毛やダストを吸わないように、指導をしている。
 
・演題:「HOBIAアグリ事業のご紹介
1.農商工連携について
講師:特定営利法人北海道バイオ産業振興協会
フーズ&アグリ・バイオ・ネットワーク事業クラスター・マネジャー      高橋 達夫 氏
農商工連携促進法(国)、中小企業応援ファン
ド(道)のタイアップによる、「製品開発・供給ネットワーク構築」の事例。
1)HOBIAアグリネットワーク事業の特徴は、生産者から製造者まで流れのあるバイオネットワーク構築である。
2)このネットワークはまさに農商工連携であり、H20年スタートの農商工連携促進法(国) 、中小企業応援援ファンド(道)を踏まえ、「道産野菜・果実のピクルス食品開発」や「100%道産素材のトマト食品開発」に係る「製品開発・供給ネット」構築を支援している。
【道産野菜・果実のピクルス食品開発の支援】
①農商工連携事業認定(H20・9)
 (事業名)ホワイトアスパラを活用した食酢と道産野菜のピクルス食品開発
 (事業者)(株)大金(旭川市)/営農集団
ファームホロ(新ひだか町)
②支援ネットワーク
•オホーツク圏食品加工技術センター
•道立 花・野菜技セ(栽培技術)
•名寄市農業セ(栽培技術、普及推進)
•北 大 園芸学研究室(学術研究)
•弘前大 蔬菜花き研究室(学術研究)
•(株)サークル鉄工    (機械開発)
•パイオニアエコサイエンス(株)(資材
【100%道産素材のトマト食品開発の支援】
パイオニアエコサイエンス(株)・農業生産法人㈲「当麻グリーングライフ」のビジネスアイデア(野菜フィトケミカル成分重視)の製品開発・供給ネットについて、国・道のハンズオン支援事業の活用を支援している。

2.種子会社の取り組み(自給飼料の生産)
講師:パイオニアエコサイエンス㈱
園芸種子部三浦信一 氏
パイオニアエコサイエンス(株)が進める「飼料デントコーンの雌穂収穫・サイレージ調製・貯蔵並びに茎葉緑肥利用」(ハイモイスチャーコーン(HMC))のプロモーションの概要。

1)飼料・肥料価格高騰、糞尿処理対策、作付補償制度創設などから、北海道のデントコーン栽培面積が拡大しつつある。
2)道内の畑作用地は30万ha、飼料緑肥用地は6万haであるが、今後、品目横断による畑作物の作付面積減少の可能性がある。
3)また、畑作地への有機物施用の必要性、肥・飼料価格の高騰もあり、今後、畑作農家が「HMC」を栽培し、①茎葉を圃場に還元して緑肥とする②雌穂(実)を収穫し畜産農家に販売する「耕畜連携」ビジネス化が可能となる。
4)「HMC」は完熟収穫・即貯蔵化でき、乾燥後貯蔵よりコストが安く、欧米では古くから乳・肉牛、豚の飼料として利用されている。
5)「HMC」の飼料・緑肥利用システム「生産(畑作農家)→収穫・調製→運搬→給餌(畜産農家)」の構築について、帯広畜産大学・農機具メーカー・釧根地区畑作・畜産農家と共同実験を展開している。
*パイオニアエコサイエンス(株)札幌営業所
 札幌市東区北34条東14丁目酒井ビル
 電話011-748―8721
 URL:http//www.aaaphj.co.jp/

バイオクラスター連携会議」及び「BioJapan2008」出席報告

日時:2008年10月16日 13:00~14:30
場所:横浜パシフィコ 展示会場 M2階
「バイオクラスター連携会議」
経産省地域技術課長の仁賀氏のご挨拶があり、経産省の産業クラスターに関する事業概要について『産業クラスター計画』の冊子を用いて説明がありました。クラスター事業も7年を経過して成果が見え始めており、特に海外との連携が近年進み始めたことを好ましく見ていることが分かりました。関東経済産業局参事官の清水氏のご挨拶からは、アライアンスプロモーション事業に力を入れており、ある程度目的や分野を搾った連携促進事業が効果的であるという感触を得ているとのことでした。
JBA専務理事の塚本氏からは、JBAの財政事情からバイオ団体全国会議を開くことができなくなり、BioJapanの開催機に併せてこの会議を開催することになった事情の説明があり、しかしながら連携の重要性は理解しているので、経産省に対して何らかの支援をしてほしい旨の要請をしていました。また、来年もBioJapan2009を12月2~3日の予定で、同じ横浜パシフィコでクラスタージャパンを開催するとの案内もあり、会議も同じ様に会期中に開催したいとの話でした。BioJapanへの出展者では近年海外からの参加者が多くなってきていて、今年は特にその傾向が強まっているとのことで、国内のバイオベンチャーに対する注目度は、海外企業の方が国内企業よりも高い傾向があるようでした。一方、出展者総数は昨年よりやや減っているが、これは同時期に開催されている「食品開発展」に食品関係と健康食品関係の企業が流れたためと思われるとのことでしたが、海外から参加している企業などにとっては、同じ時期に開催されることで双方に参加できるメリットがあるとの指摘もありました。
各クラスター参加者の発言をまとめると、それぞれの域内での連携に力を注ぐ一方で、他地域のクラスターとの連携関係構築も意欲的に進めていて、成果も出てきている。また、海外との接触にも努力していて、連携関係が作れるところまで来ている事例もあるが、財政事情から継続的に接触を保つことができないでいる実状が報告さていました。当会からは、昨年度事業の中から道内の「アグリ・バイオ事業」等のクラスター連携事業と、当会と近畿バイオとの連携事業について説明し、成果が出ていることを話しました。これに対して、近畿バイオからも当会と同様に連携事業の紹介があり、エールの交換をした形になりました。加えて、様々な連携を促進するためには、今後若いコーディネータの育成が必要であるとの指摘がありました。幾人かの参加者から、札幌で9月初旬に開催された「バイオビジネスマッチング」の様な試みは、企業や地域間交流を促進する目的を効率よく達成しており、非常に面白いとの発言がありました。
バイオ団体間の国際的交流・連携については、今後この面での成果が望んでいることが分かりましたが、我が国のバイオクラスターを全て合わせても、その規模はアメリカのカリフォルニア州1州分程度の規模であるとの指摘があり、このことから国内におけるクラスターの強化と連携関係のさらなる拡大の必要性が感じられた会議となりました。

「BioJapan2008」
横浜パシフィコで10月15~17日の3日間に渡り開催されました。展示会はホールB(6,700m2)を使用していましたので、アクセスサッポロより二回りほど大きい会場と言えます。「バイオクラスター連携会議」の中でも紹介されていたように、出展者の中には海外からの参加者が多く、アメリカを始め、カナダ、フランス、スイス、イタリア、ベルギー(フランダース)、フィンランド、オーストラリア、そして台湾などが大きなブースを構えており、これらを合わせると全体の2割程度の面積を占めるくらいでした。やはり、日本の新たな技術やベンチャー企業に対する関心の高さの現れだろうと思います。また、「バイオクラスター連携会議」に参加していた地域を中心に、地域クラスター毎の出展も多く、やはり2割程度の面積になっていました。その中でも北海道はかなり大きな面積を取っていて、一つの島を形作っていました。北海道の出展者からは、今一歩手応えが少ないような気がするとの意見もありましたが、興味を持ってじっくり話をしているお客様もいて、一定の成果は得られたのではないかと思います。
私が参加した16日には夕方16:00から「ハッピーアワー」という趣向が催されて、半数近くの出展者が飲食物を提供して、参加者との会話のスターターとしようという試みがなされていました。実際、この時間以後、参加者が明らかに増えていました。これには、別の場所で開かれていたセミナーなどが概ね終わったことも影響しているようですが、会場全体に響く人の声もかなり増えていましたので、会話の盛り上がりという面では大成功だったのではないかと感じました。こうした仕掛けや工夫を積み重ねていくことが、バイオ産業の発展につながるのではないかと思います。
会場を歩いていると時に知り合いに会うこともあり、情報交換が少々できましたが、こうした展示会の長所と限界などについては様々な意見がありました。「バイオクラスター連携会議」にも出ていたような方向性も含めて、将来より良いバイオ関係者の交流の場に発展していくことに、若干の変化の可能性も感じることができた「BioJapan2008」でした。
(報告者:HOBIA企画運営委員会副委員長
               富永一哉)

「バイオマッチング広場・地域バイオ育成推進講座」開催ご案内

日時:2008年12月1日(月)15:00~17:30
場所:北海道大学 学術交流会館第3会議室
テーマ: 「大豆の魅力を引き出す」
講演1:「大豆の栄養研究の最前線とキッチンを結ぶ工夫」
報告者:管理栄養士 榊 房子氏((株)ダイエット.F代表、北海道大豆研究会世話人 事務局)
内容:大豆の栄養効果に関する世界の研究の現状。メタボ対策と大豆利用の工夫、など。
講演2:「旭川大豆プロジェクト」
報告者:旭川市ものづくり推進室産業振興室産業振興課
内容:旭川大豆を活用した地域ブランド食品開発
講演3:「十勝産大豆食品開発と豆料理普及」
報告者:(財)十勝圏振興機構
内容:機能性を重視した大豆食品開発と豆料理普及活動
講演4:「北海道の大豆生産の現状と将来」
報告者:西南農場有限会社 代表 宮井能雅
内容:大豆栽培と将来の食環境と農業生産を考察

*皆様のご参加をお願い申し上げます。お申し込みは別紙FAX申込書にてお願い致します。