第22回 北海道バイオ・ステージ 実施報告

10月12日(木)、ホテル札幌ガーデンパレスにおいて、第22回北海道バイオ・ステージが開催されました。
講演会では3名の専門家により「食の安全を考える ~食の安全性を最新情報で検証する~」をテーマとした講演をいただき、その後、パネルディスカッションが行われました。多数のご参加をいただいた同講演会でのご講演内容を紹介します。
なお、講演会終了後の交流会には、アメリカ大使館から牛肉の提供があり、和やかに交流を深めました。

=== 講演1 ======
【演 題】「食に対する不安がなぜ大きいのか?」
【講演者】東京大学名誉教授・日本学術会議会員
唐 木 英 明 氏

食に対する不安が何故大きいかを、心の問題から解いていく。本能を司る大脳辺縁系の役割は、恐怖感で物事を白黒に分けて瞬間的に行動することにある。白黒
に分けられない状態が不安で、判断できないから行動ができないという最も危険な状態である。不安から逃げる最善の策が白黒判断、すなわち安全が確認できな
いものはすべて危険視することである。そのほかの本能の特徴は、「危険」情報には恐怖感を感じ、「利益」の情報にも敏感に反応するが、「安全」情報には無
関心などである。この脳の働きは、生まれたときから出来上がっている。人間の行動の大部分はこのような本能によるものである。
もう一つの脳、前頭連合野の働きは理性で、物事は白か黒かだけでなく、灰色もあること理解できるのはこの脳の働きである。しかし理性が十分に働き始めるのは高校生以上といわれる。
ところが、理性でリスクを判断することは難しいことで、ほとんどの人は他人の判断に頼る傾向がある。これは、太古の昔の狩猟採集時代に集団のリーダーの判
断に頼っていた習性が残っていると考えられる。今はマスコミで有名な人などがオピニオンリーダーとなっている。また、一度リスクを回避した場合の経験の記
憶も重要で、これは変更してはいけない記憶である。先入観が変えにくい理由はここにあ
る。また、本能と理性が対立したときには、ほとんどの場合本能に従う。
一般の人たちが感じるリスクは、危険なものがあるということと不安の合計である。リスクの専門家が考えるリスクは、危険なものがあることとそれに出会う確
率を掛け合わせた積である。また騒音など五感で認識できるリスクは本能で分かるが、タバコのように五感ではなく理性でしか認識できないリスクを感じる人は
多くない。
本能では白黒判断をしてゼロリスクを求める。岐阜大学学長の黒木博士によると、ガンの原因を一般の人に聞くと、食品添加物や農薬を上げるが、ガンの専門家
は普通の食事とタバコであるとする。普通の食べ物がガンの原因となると言うのは、代謝の過程で活性酵素ができるからである。エイムズ博士の調査では、我々
がよく食べる野菜・果物はすべてが天然農薬を持っていて、その52種類を調べたところ、27種類が発ガン性であった。そして天然農薬の量は残留農薬基準の
1万倍であった。食品には2面性があり、栄養等のプラス面と発ガン性のようなマイナス面がある。すべての食品にゼロリスクは存在せず、十分な注意が必要な
ことは昔は誰でも知っていたが、最近は忘れてしまった人が多い。
安全とは、一般の人にとっては危険をゼロにするという理想論である。一方、専門家は健康被害が出ないところまで危険性を減らすことだという現実論を採る。
行政は化学物質の用量作用関係を使い、実質安全の現実論で安全基準を決めている。そして健康被害がない小さなリスクを「許容リスク」とする考え方を取り入
れている。
食品による健康被害が出ているのは、有害微生物とフグやキノコに因る食中毒のみである。食品に対する不安の男女差では、やはり女性が高く、これは母性本能
が働いていると考えることができる。消費者は、許容リスクの考え方が良く理解できず、不安や危険を感じてしまう。豊かになればなるほど、日本では食に対す
る不安が大きくなっているようだ。
安全性が証明されたものにも不安を感じるのは、世界共通のイメージである。発ガン実験や公害の経験は、化学物質に対する不安を大きくした原因の一つであ
る。複合汚染は用量作用関係を誤解したことによる間違いで、薬品のように身体に影響を与える量を複数同時に摂れば障害が起こる可能性があるが、身体に影響
を与えない量しか使わない添加物や残留農薬では考え難いことだ。こうした誤解を一部の業者が上手く商売に利用して無添加や無農薬を売っている。これらは健
康にいいという科学的な根拠は全くないだけでなく、消費者に衛生上や経済上の不利益を与えている。添加物で起きた健康被害はないことを知るべきである。
結論として、我々の行動は本能に支配され、本能的にゼロリスクを求めるが、人間としては理性的判断を重視して、リスクを削減する科学的な方法を知ることが
重要である。リスクの管理は、最終的には政治や行政に責任があるが、食の安全を守る仕組みは、消費者の理想論と事業者の現実論をぶつけ合って、十分なコ
ミュニケーションをとることが重要である。ここで大切なのは、両者の信頼関係である。
Q:有機栽培は農家と環境に意味があるとの話だが、千歳市にキュウサイの無農薬のケールの畑があるが、隣の長沼町に虫や糞尿の臭いが飛んできて迷惑している。
A:最低限度の農薬の使用は必要だが、使いすぎには注意すべきだろうと思う。
Q:間違いに科学者は反論していないのは何故だろうか?
A:多くの科学者は論文執筆や教育に忙しいので、厄介なことに巻き込まれたくないと思っている。応用研究の中に「規制の科学」という分野があり、この分野
の人がもっと発言すべきだが、その多くが政府に所属している。そのため発言に機会が少ないことも一つの原因かも知れない。
Q:天然農薬と言う言葉が理解できないのだが。
A:植物は、昆虫や微生物から自らを守るためにいろいろな化学物質を作っている。野菜にも果物にも薬草にもハーブにも農薬と同等の効果がある成分が含まれている。       

=== 講演2 ======
【演 題】「BSEという病気 -どこまで判ったか-」
【講演者】北海道大学大学院獣医学研究科 教授
堀 内 基 広 氏

食の安全という立場よりは、むしろBSEとは何か、ならびにその現状を示す。BSEの病原体を意味する場合の用語として「異常プリオン」は誤りで、正しく
は「プリオン」である。このプリオンの構成要素を指すときには「正常型、または異常型プリオンタンパク質」が正しい。同様に、病態を表すには「牛海綿状脳
症」が正しい。「狂牛病」のような奇抜で刺激的な用語が使用されなかったならば、マスコミ報道に対する過剰な反応は防がれたと考えられる。
寄生虫、原虫、細菌、ウィルスなどの病原体は肉眼や電子顕微鏡で確認できるが、プリオンという感染因子は何千何万の凝集体として以外には、最小単位の像と
しては未だ確認されていない。動物以下細菌までの遺伝物質はDNAであり、伝達物質はRNAである。ウィルスは遺伝物質としてDNAかRNAを有するが、
プリオンは遺伝情報を担う核酸を持たないために紫外線照射に対して安定である。アルコールやオスバンなど一般的な消毒液に対しても抵抗性を示す。100℃
の煮沸、通常の121℃のオートクレーブ加熱処理でも抵抗性を示し、135℃以上の処理ではじめて感染価がゼロに失活する。
不安を増長させる特徴として、感染から発症までの潜伏期が非常に長く、研究や検証、対策に時間を要することである。通常の感染症であれば宿主の免疫応答性
を調べることで診断が可能であるが、この場合は不可である。さらに、プリオン病に罹った牛の一般的な臨床症状から疑うことは不可能である。そして、重大な
問題として、感染は稀であっても1度発症すれば治療法がなく致死性である。
あらためて用語を整理すると、Prionはproteinaceous infectious
particle(タンパク質性感染性粒子)に由来し、ノーベル賞受賞者Stanley
Prusinerによる造語である。広義にはプリオン病の病原体を指す。
プリオン病にはBSEに代表される感染性、ならびに遺伝性、孤発性(偶発性)に分類される。ヒツジのスクレイピーとシカの慢性消耗病は自然状態で同種動物
間感染するが、BSEは自然状態では同種間感染しない。ヒトでは医療行為にともなう感染性医原性のクロイツヤコブ病(CJD)、ならびに遺伝性、孤発性プ
リオン病がある。BSEが感染した結果と考えられる変異CJD(varinat CJD, vCJD)は、感染性プリオン病に分類される。
BSEの由来について。ヒツジのプリオン病であるスクレイピーは1700年代にはその存在が記録されている。しかし、BSEは1980年中期に現れ、恐ら
くはヒツジのスクレイピーに由来すると考えられていた。当時、BSEはヒトに感染しないと思われていたが1996年に欧州でヒトに伝染したらしいとの報告
があり世界中をパニックに陥れた。以降、BSEは人獣共通感染症や食品媒介性感染症と考えられるようになった。BSE出現は、1980年代前半に、レンダ
リング(動物飼料肉骨粉製造)工程がバッチ方式から連続式に変更されたことと関係があると考えられている。レンダリング工程の変更に伴い、プリオンが完全
に不活化されずに肉骨粉中に残存した。プリオンが残存し他肉骨粉を乳牛の仔牛の人工乳に添加して使用したことがBSE発生の拡大につながったと考えられ
る。事実、感染の状況(時期)は、早期に変更導入したイングランドと後期のスコットランドで対応している。英政府は1988年に肉骨粉の反芻動物飼料への
使用を禁止し、翌年に特定部位の食用禁止を講じた。vCJDの発症数は2000年にピークを示し、減少傾向が認められるが、発症者は1989年以前にすで
に感染していた可能性がある。ヒトプリオン病の80%が孤発性であり、vCJDの発生はヒトプリオン病全体の発生頻度には影響していない。世界中をパニッ
クに陥れたものの、vCJDの発生を加えても、ヒトのプリオン病は100万人に1人の発生に留まっている。
BSEは英国、欧州、次いでアジアに伝播しており肉骨粉の輸出入による感染源の拡大がその要因と考えられている。英、独、仏ではBSEの発生は減少しているが、東欧、カナダでは無変化ないし漸増傾向がある。
国内のBSEの発生状況について。北海道では1996年2~8月生まれの牛で11件摘発され、1999年8月~2000年10月生まれの牛で12件摘発さ
れている。これは日本で摘発されたBSEの81%を占める。邦国での肉骨粉はvCJD
が発生した1996年に行政指導による使用規制、2001年に禁止措置が採られた。生後間もなく感染するので、この法的措置の実効性を見極めるには、
2001年以降生まれたウシについて監視調査を継続する必要がある。この他、1993年に169月齢の黒毛和牛1頭が発症。2003年から、伊、英、カナ
ダなどで10歳以上の高齢牛に非定型BSEの存在が知られるようになった。これまで、非定型BSEには2種類あることが報告されている。典型的なBSEで
はPrPScが延髄、視床下部で蓄積が多いのに対してイタリアの非定型BSEでは海馬、嗅球嗅葉で蓄積が多いことが報告されている。
BSEの起源はスクレイピー起源説(ヒツジからウシへ伝染)が有力であったが、非定型BSEの存在が孤発性BSEを示すならば、BSE起源説も否定はでき
ない。プリオンは核酸を持たないのでいずれが真の起源かを知ることはできない。そこで、新型のBSEのヒトへの感染性に関心が及ぶ。最近のデータによる
と、ウシのプリオンタンパク質を発現するトランスジェニック・マウスに典型的なBSE、ならびに2種の非定型BSE(BASE: bovine
amyloidotic spongiform
encephalopathy)を投与したところすべて感染する結果を得た。別に、ヒトのプリオンタンパク質を発現する同種マウスに投与したところ、典型
的なBSEは感染せず、BASEは感染する結果を得、後者のヒトへの感染性が示唆された。
プリオンの侵入経路としては、口から入って回腸遠位、リンパ装置を経由、末梢神経、内臓神経を経て脊髄に入るルートと、迷走神経を通って延髄に至る2つの
ルートがある。主に脳、脊髄、眼、三叉神経に蓄積している。ステージが進むと中枢神経から遠心性にも移動するので、少量ではあるが非特定部位にも分布して
いることが知られている。実験的には筋肉や末梢神経にも感染性があることが確かめられている。
血液中のプリオンについて。24歳でvCJDを発症した患者の例ではその3.5年前に、その時点では健康であり献血していた。その血液を輸血された62歳
の方は6.5年後に死亡した。現在、英国では3,800名程度の患者が輸血感染後の潜伏期にあると推計する報告もある。日本で発生したvCJD感染患者は
1990年頃に延べ約1ヵ月間の英国滞在経験を持つ。1感染単位でも血中に侵入すると増え続けるので、日本では1987~1996年に1日以上の欧州滞在
者の献血は受け入れない措置が採られており、合理的である。
日本の管理措置について。日本でのBSEの発生を受けて、感染動物を食物連鎖から排除するためにスクリーニング、プリオンが蓄積する可能性のある特定部位
の除去を開始した。これらはあくまで緊急避難的措置である。これに対して未来永劫に経済的な負担なしにBSEから免れるためには、BSEフリーの牛群を飼
育することである。現在実施している管理措置のうち、最重要なのは飼料規制の実効性である。この実効性は、あと1~2年で評価できるであろう。管理措置の
有効性を十分に検証しないままに管理措置を止めると、それまでの苦労が無に帰する危惧があるので、慎重な対応が望まれる。BSEは、管理措置が有効に機能
するならば必ず根絶することができる。この点において獣医学会は貢献する必要がある。食料生産の全関係者におけるモラルを重視する姿勢が最重要であると考
える。
Q:未知のウィルスが病原体であるとの説が根強くある。どのように考えるか。
A:現時点では病原体が直接確認されていなく、完全に否定はされない。私自身は蓄積された経験からプリオン型タンパク質が構成要素であると考えている。
ウィルスを原因とする立場での基礎科学的調査、研究の継続とその根絶を望む。そしてウィルスであるならば、その有効対策の提示を望む。       

=== 講演3 ======
【演 題】「アメリカにおける食の安全性に対する考え方」
【講演者】米国農務省農務部 農務スペシャリスト
佐 藤   卓 氏

本日は、アメリカにおける食の安全について、私個人の意見としてお話しさせていただきたい。
「食の安全の歴史」まず、米国における食の安全の歴史は、アメリカ開拓の歴史と深く関わったものといえる。1862年にリンカーン大統領が農務省創設の法
案に署名をし、65年には南北戦争が終結し、西部開拓がすすめられ69年には大陸横断鉄道が完成した。鉄道による長距離運搬のために、77年ごろには冷凍
庫の車両が開発されていたことが分かる資料があり、全米各地への食料供給と安全性確保の重要性が増していったことが推察される。
ここにお見せしたスライドは1905年出版のアップトン・シンクレアの著作「The
Jungle」。これはシカゴの食肉加工業の不衛生な実態や労働条件の劣悪さ、肉製品の管理のひどさ等を書き記した、いわゆる告発小説で、このころ、食の
安全に関する意識が高まり、市民運動が起こっている。
「行政の役割」米国における各省の役割だが、FSIS(食品安全検査局)-食肉、家禽、卵等、FDA(食品医薬局)-その他食品、医薬、化粧品等、EPA
(環境保護局)-農薬の使用基準、MRL(農薬残留基準)の設定等をそれぞれ受け持っている。動物実験データの無作用量に安全係数をかけ、平均体重の人の
1日の摂取許容量が設定されるが、各国のMRL基準には差があり、基準が違うので、輸入の際などに問題化することがある。また急性毒性を示すLD50をみ
てみると、我々が日常摂取しているコーヒーなどに含まれるカフェインのLD50はおよそ200なのに対し、農薬のスミチオンは1035と、カフェインより
も急性毒性が低く、摂取量が問題であることが分かる。
一方、FDAではHP上で食品のリコール情報などを掲載している。「MRLを超えることイコール危険」ではなく、健康被害をもたらすか否かで判断してお
り、違反原因が生産者か製造者か加工業者かを特定し、該当者の該当品目を一定期間検査し、保留措置などの条件を決めるが、偶発的なものなのか、システム全
体の不備かを見極める。また、アメリカでは行政からの指摘を受ける前に企業が自発的に行うリコールが多いことも特徴である。
「遺伝子組換え作物について」農薬は必要か?という問いには今の生活様式を維持する限り、必要といえるが、GMOはどうであろうか?ゴールデンライスの例
をあげてみる。また豊かな国と貧しい国の比較では、例えば肉の消費量は日本では年間1人当たり30 Kgだが、バングラデシュは3
Kgで、食物を主食にかなり頼っている国では、GMOはかなり役立つものだといえるだろう。GMO規制については、アメリカではバイテクそのものに対する
新たな法律の策定はされなかった。GMOの承認プロセスには二通りあるが、登録制においては有害植物ではないこと、ゲノム中に安定的に導入されているこ
と、遺伝物質の機能が知られており、それが発現しても病気を生じないことが分かっていること、環境放出が起きない輸送方法をとること、意図しない混合がお
こらないようにすること、環境中に残留させないこと、などをクリアして承認される。従来育種では変異遺伝子数は数万個で、登録制や承認が求められないが、
GMOの変異遺伝子数は数個である。またパブコメ募集やモニタリング制度などが整備されている。米国の一般消費者を対象にしたリスクに関するアンケートで
は、バイテクに懸念を持っている人が34%というデータがある。ではなぜ、アメリカでは日本ほどGMOに対して騒がれないのか?それは、安全性に対する責
任の所在はどこにあるかという設問に「自分自身」という答えが37%にのぼることから推察されるのではないか。
分からないことに対する不安はアメリカ人にもあるが、科学的にモノをみようとする傾向、科学的にモノをみることが必要と考える人が、日本よりはいくぶん高い割合にあるのではないかと感じる。       

<パネルディスカッション>「食の安全を考える」
パネリスト:唐木 英明・堀内 基広・佐藤 卓 各氏
司会進行:冨田 房男

【参加者からの質問】
イソフラボンの摂取所要量が、厚労省から発表された。アグリコン換算で1日30mg以下という線は、歴史的な日本人の食生活からすると低いような気がす
る。どのような経緯でこの値になったのか、リスク判断の観点から教えてほしい。
【司会】 内閣府食品安全委員会の唐木先生にお願いします。
【唐木】 私は専門委員会に入っていないので、正確には答えられません。しかし、委員会から聞いたところによれば、サプリのように集中して摂取するのでなく、食品としての野菜から摂取するのが好ましい。
イソフラボンの摂取量に関しては、1つ論文があって、それを採用した。いろいろな考え方があるのは、判っている。野菜でも1種類ばかりを食べるのはリスク
が高くなる。いろいろな種類に分けて食べるのが、リスクを下げる方法と考えるのが適切で、科学者の間での標準となっている。
【司会】 この値は、未来永劫に動かないというのではなく、また異なった論文が出てきた場合、安全委員会として科学的判断として『変更されることは、あり得る』と考えて良いですね?
【唐木】 その通りです。新しい科学的根拠が出てきた場合には、それも含めて科学的判断を行います。
【司会】 発表では、BSEに触れられなかったが、アメリカでの考え方を教えてください。
【佐藤】 アメリカ人が、他国より冷静に物事を見られる国民とは思えないが、米国では、2年半の調査の結果、百万頭に1頭レベルの発症リスクである。BSEは、ほかの牛の病気と比べて高いわけではないと判断された。
【堀内】 日本では、マスコミの取り上げ方も変だ。「狂牛病」とされたが、牛は狂っているわけではなく立ち上がれないだけだ。啓蒙活動を超えて不安を煽った報道となった。
【唐木】 2頭目のBSEがアメリカで見つかったときも、新聞はトップで報じた。北海道では29頭も発見されている。
【参加者からの質問】 リスクなる言葉は、日本語になっていないのでは。リスクコミュニケーションはうまくいっているのか?
【唐木】
リスクコミュニケーションの先進国のヨーロッパ、アメリカでもうまく行っているとは言えない。リスクコミュニケーションとは、事業者と消費者が価値観を科
学ベースで共有できること。リスクは、そもそも金融からきた言葉。ハザード(危害)とは異なる。
消費者団体は、まだまだ科学的でなく感情的なレベル。EUでは、消費者団体をサポートして科学的な考え方ができるように育成していっている。事業者も科学
的考え方ができるように育成を進めている。科学的考え方がベースにならないと本当のリスクコミュニケーションには、ならない。
【参加者からの質問】 ジャガイモのガンマ線照射は許可されているが、ハーブなど香辛料の放射線照射の要望がある。消費者団体に対し、学者が説明する必要がある。
【司会】 実際は、ジャガイモの上士幌での照射は、動いていない。
【佐藤】 米国の特徴は、討論するのに気負わない。激しい討論しても感情のこだわりはない。日本では、安全安心と言うが、「安心」という言葉は、英訳しにくい。
【唐木】 世の中には、科学的と思われているが、真っ赤な嘘もある。代表が、血液型と性格、マイナスイオン。完全に否定されているにもかかわらず、マスコミなどにもしばしば出てくる。娯楽ではすまされない問題です。