HOBIA NEWS No.302

目次
●  HOBIA理事長 新年ご挨拶
●  HOBIA講演会(2013年11月日 北海道大学百年記念会館)の報告
●  HOBIA見学会(2013年11月22日)の報告
●  お知らせ
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●  HOBIA理事長 新年ご挨拶
 新年を迎えるにあたり、謹んで年頭のご挨拶を申し上げます。

 旧年中は当会の活動に対して格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。

 さて、昨年の経済環境を振り返りますと、一昨年までとは風向きが大きく変わった1年であったと思います。

 国内経済は、いわゆる「アベノミクス」効果から回復に転じました。本年4月消費税増税を意識した駆け込み需要や株価上昇等を背景として個人消費は堅調に推移、企業の設備投資も企業業績改善により持ち直しています。

 一方で道内経済は、公共投資が増加しているほか、国内外の観光客も前年を上回って推移するなど、持ち直してきています。

 また、昨年度補正予算「ものづくり補助金」において、バイオ関連企業が多数採択され、今年度補正予算でも「新ものづくり補助金」の公募が3月から始まる見通しです。政府はこうした政策により、試作品・新商品等の研究開発や設備投資を促進しています。

 道内バイオ産業関連では、「北海道フード・コンプレックス国際戦略総合特区」による「北海道食品機能性表示制度」認定が昨年開始されました。もともと優位性のある北海道産食品の更なる高付加価値化手段として、バイオ技術が大いに期待されています。

 こうした「追い風」を活用し、本年は道内バイオ企業・関連研究者の皆様との連携・協力を図りつつ、バイオ産業のさらなる発展を目指して行きたいと考えております。

 この1年が皆様にとって健康で活力ある年となりますよう祈念申し上げますと共に、当会の活動に対し、更なるご支援とご協力をお願い申し上げまして、年頭のご挨拶とさせて頂きます。 

HOBIA理事長 吉 野  次 郎

●  HOBIA講演会(2013年11月日 北海道大学百年記念会館) 
 「遺伝子組換え作物・食品の現状と将来」 
 日本における持続可能な農業のための遺伝子組換え作物 
 
 吉野次郎理事長の開会挨拶に引き続いて、第回目となる「遺伝子組換え作物に関するイラストコンテスト結果発表と表彰式」が行われた。応募数は全国から72作品でそのうち13点が入選し、選ばれた代々木アニメ学院札幌校の人の学生と校長先生が、賞状と副賞を受け取られた。 

講演1「日本の遺伝子組換え作物・食品の現状」  冨田房男 

日本国内での組換え作物利用量は、実に年間1700万トンに達しており、米生産量800万トンの倍に当たる。日本の生活の中に組換え作物はしっかり根を下ろしているとも言える。 

 消費者調査の結果は、全国の結果と北海道の結果が異様に異なっているのを知っている人は少ない。全国の調査結果では、組換え作物に対する不安は一貫した減少傾向にもかかわらず、北海道での調査結果は、条例の見直しの年に急に不安だとする消費者の比率が増えている。調査そのものに問題があったことが推定される。

 食品への表示は、販売会社によってスタンスが異なっている。食品安全に対して最も厳しく対処しているとして有名な「コープ神戸」では、表示の必要のない油類でも「不分別」と表示して組換え作物が含まれている可能性があると明記されている。これらの商品は、同等の「非・組み換え」商品よりも売上高は圧倒的に多くなっている。消費者が、品質と値段とを理解して購入しているとコープ神戸の元理事は語っている。

 日本ではスイートコーンは野菜に分類されているので、穀類のコーンの国内生産量はゼロとなっている。埼玉県「松村農園」は、養豚農家で「アメリカからのGM穀類が、一定品質で量的にも価格的にも安定して入手できるので、良い豚を出荷することができる、」と言っている。国内での組換え作物の利用は、量も増加し利用が着実に定着している。生産を海外ばかりに任せておいて良いのだろうか。

フィリピンの状況

講演2「遺伝子組換え作物よる持続的農業確立のシナリオ」

ランディ・フォーティエ博士ISAAAフィリピン

 2050年までに耕地面積を増やすことなく、農業生産量を倍増しないと90億の世界の人口を養えない。この17年間で組換え作物の生産量も地域も急速に増加している。現在は、耕作面積は15億haに達し、これは日本国土の4.5倍に当たる。最近の傾向は、発展途上国での生産が急速に増加していることだ。それに伴い農薬使用量の減少、CO2排出量の減少も進んでいる。小規模農家でも実益が出ている。

 新しい組み換え作物も順次採用されており、害虫耐性ナスは、バングラディシュで商業栽培可能になった。除草剤耐性のサトウキビによって省力化を進めたほか、ベータカロチン(ビタミンA前駆物質)を増加させた米、さらにオメガ3脂肪酸を増強した大豆、など機能性向上を実現した組換え作物の生産も始まった。

 北海道の人たちは、なぜ不安を持っているか、分からない。成分など変化がないことを伝えることが重要だとおもう。ヨーロッパの安全局は、きわめて厳密な安全試験を行っているが、消費者の理解が得られているか問題がある。

講演3 「遺伝子組換え農業がフィリピンの農業生産者に利益をもたらした現場からの報告」  

デルソン・ソンザ 

 講演者は、フィリピンの小さな農家で、イロイロ島で農業をして稲やパイナップルなどを生産してきた。フィリピンの穀物協会などに属して新しい技術情報を得る努力をしている。フィリピンで組換え作物を作付けした最初の農業者でもある。

 組換えコーンを生産して良かった。高収量、少ない労働時間、アワノメイガやヨトウムシの被害が少なかった。コーン栽培は、高地で行われているので土壌流出が大きな問題だったが、除草剤耐性の組換えコーンを使うことで、不耕起で栽培できるので土壌流出は減少した。以前は牧草を植えていた土地に、現在ではコーンを育てることができている。遊休地もコーン畑にすることができ組換えを使うことで耕作面積を増やせた。手間が減少し耕作地も増加できたので収量が増えた。純利益も得ることができた。

 フィリピンでの組換え作物の歴史は、1990年にフィリピン生物安全委員会が設立され、2006年大統領府から生物安全に関する枠組みができて実際の栽培が始まった。県によっては、まだ組換え作物を植えてはいけないとしているとこともある。フィリピンは台風が何度も襲うので、収量にはアップダウンがある。それでも組換えコーンを植えたところは、より安定して多収量であった。

 我が家の収入も増加した。以前は、収入源は労働で1日3ドルの稼ぎだった。具体的には、ヘクタールあたり3万ペソ(1円=間の余裕ができた。収入が増えたので、冷蔵庫やオートバイも購入できるようになり生活が向上した。

 フィリピンは、2011年まではトウモロコシの輸入国であったが、2012年から輸出国となることができた。韓国、マレーシアなどへ輸出できるようになり、コーンで外貨が稼げるようになった。国際価格で売れるようになった。コーンの反収量は、まだ日本の半分だが、年回収穫できる。コーンの国際価格は高いので、利益がある。フィリピンでもコーンはすべて飼料用である。フィリピンは養豚が盛んである。人の食べるのはホワイトコーンだが、これの組換えはまだフィリピンには入っていない。農家は、政府からの補助金など、支援はありません。 
< ●  HOBIA見学会(2013年11月22日)の報告 

 2年ぶりのHOBIA見学会は11月22日(金)9:30に小雨の中、札幌駅北口をスタートしました。天候が回復した中、最初の訪問先であるフジッコ株式会社北海道工場を目指します。参加者は、会員12名。千歳市上長都の工業団地の中に新設された工場には、予定時間の10:30少し過ぎに到着。ここで、宮井氏が大豆を生産する農家4人とともに合流しました。フジッコ本社の開発本部長、山田勝重様にお迎えいただき、概要の説明を受けました。話題になっているカスピ海ヨーグルトと煮豆などの総菜類を生産していて、北海道産材料の調達に関する話を伺いました。その後、工場長の高浦克也様にご案内いただき、見学しました。原材料を上層階から下に階へ重力に従って流す合理的なレイアウトの工場は、実に衛生的。スペースにも余裕があり、更なる生産量の増加にも対応が可能と見ました。見学後のディスカッションも活発で、非常に勉強になりました。

 宮井氏らとはここで別れて、昼食会場のキリンビアパーク千歳へ向かい、ビアレストラン「ハウベ」ではおいしいジンギスカンをいただきましたが、ブルワリーツアーは時間がなく断念し、次の訪問地、北海道電力株式会社苫東厚真発電所に向かいました。発電所では、次長の村山淳様にお迎えいただき、発電課の鈴木誠様に説明と所内を案内いただきました。広い施設と大きな制御室を見せていただき、石炭を原料とした発電所ゆえ、原料炭の搬入や保管で苦労する点や、職員の訓練に関しての工夫なども教えていただき、また屋上からの周辺の眺望も楽しみました。広い施設の見学で若干時間を取り過ぎましたので、最後のところは少々急いで皆様にお別れしてしまいました。

 最後の見学先は公益財団法人道央産業振興財団で、苫小牧市テクノセンターの施設を見学しました。説明とご案内は、センター館長の佐藤義則様にいただきました。道央テクノポリスの中核機関であるセンターには、立地した自動車関連工場に部品を納入する地場企業からの相談が多く寄せられ、製品の分析や試験を行うための機器が多数設置されています。分析手数料を低く抑えていることから、最近は新幹線の工事に携わる企業からの分析依頼も多く研究員の方々は多忙とのことでした。短い時間になってしまいましたが、詳しいお話を聞くことができて、大変参考になる見学ができました。

 夕闇の迫る16:30過ぎに道央産業振興財団を出発。バスは一路札幌を目指します。予定の17:30を少し回りましたが、無事に札幌駅北口バスプールに到着し、充実した見学会を終えることができました。

HOBIA企画運営委員会 副委員長 富永一哉

●  お知らせ 

 2014 HOBIA新年例会開催 
開催日時:2014年1月27日(月)13:30~17:00(懇親会17:15~18:45) 
開催場所:TKPガーデンシティ札幌きょうさいサロン7F
                               (講演会 竹の間、懇親会 飛鳥の間) 
   (札幌市中央区北4条西1丁目 共済ビル  ℡011-252-3165)
参加費:講演会 会員無料、非会員1,000円  懇親会 3,500円 

 
HOBIAのホームページ http://www.hobia.jp/

NPO法人 北海道バイオ産業振興協会

札幌市北区北21条西12丁目コラボ北海道内

Tel&Fax(011)706-1331

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