全国バイオ産業ネットワークフォーラム及び交流会に参加して

フォーラムは、平成18年11月17日(金)に(財)大阪科学技術センターにおいて開催されました。主催はNPO法人 近畿バイオインダストリー振興会議で、近畿経済産業局、(財)バイオインダストリー協会及び(財)大阪科学技術センターが後援しております。
一昨年度に、当HOBIAは、近畿バイオインダストリー振興会議との交流協定を締結し、その関係から同フォーラムに参加してまいりました。
今回のフォーラムには北海道の他に、昨年から参加している沖縄や、東北、中部、中国地方の企業からの参加もあり、もちろん地元の関西も含めて、全国6地域
から発表者が集まり、正にオール日本的な交流の場となりました。発表企業の総数は11社(1社が講演中止で実際には10社)で、3時間ほどの講演時間はあっという間に過ぎてしまいました。聴講者も、70名を超え、会場がビッシリとなるほどで、熱気を含んで濃密な講演会となりました。当日のプログラムを、以下に示します。

【北海道発】「北海道産サケコラーゲン製品及び技術の紹介」
井原水産(株) 商品部新技術開発課 澤柳豊治氏
【東北発】「認知症予防のためのホヤプラズマローゲン食品の製造開発」
(株)プロジェクト・エム代表取締役社長 狩谷 純氏
【中部発】「関節リューマチ用治療補助食品 RAeaseライーズ」
イシダファーマ(株) 代表取締役社長 石田 剛氏
【中国発】「高純度ビタミンCの食品、化粧品、再生医療への応用と製品化」
(株)アスコルバイオ研究所代表取締役社長 山本 格氏
沖縄発】「私の起業奮闘気
~南大東島産ラム酒誕生!~」
(株)グレイスラム 代表取締役社長 金城祐子氏
【関西発】「植物人口栽培HEFL照明技術の紹介」
(講演中止)
日本アドバンストアグリ(株) 顧問 寺田 充氏
【北海道発】「循環型農業を柱にした商品の開発と地域特性を生かした販路の開拓」
金印(株) 開発部オホーツク研究所課長代理 枝 澄子氏
【中部発】「メカノバイオロジーで切り開く再生医学・不妊治療」
ストレックス(株) 取締役 成瀬恵治氏
【中国発】「沖縄及び岡山特産食材を活用した新規機能性食品の開発
~一配糖体化と包接体化~」
(株)バイオタキソール 社長 浜田博喜氏
【沖縄発】「株式会社 海邦商事 
~伝統素材を現代ニーズへ~」
(株)海邦商事 代表取締役社長 與那嶺 安雄氏
【関西発】「植物療法(フィトテラピー)のこれから」
(株)サンルイ・インターナショナル
代表取締役社長 森田敦子氏

北海道から発表した2社は、既に高い知名度のある会社でしたが、それぞれの新たな取り組みを紹介しており、参加者の多くに印象が強く残ったことと思います。

井原水産(株)はサケ皮コラーゲンのメーカーとして認知されてきていますが、単なる原料のメーカーから一歩進んだ、機能性素材の開発企業に変革しようという姿を発表しました。当然、医療用の素材開発も視野に入っており、今後はこの面でのコラボレーションが必要になってきます。既に、北大などとの共同研究を進めているところではありますが、今回の発表が契機となる新たな協力関係が期待されるところです。

金印(株)はおろし和わさびの専業メーカーの印象が強い企業ですが、今回の発表の中では西洋わさびの良さを説明していました。また、企業イメージの増進のために、金印ブランド
の野菜栽培と販売に力を入れていることも報告され、わさび栽培技術のノウハウを応用した植物バイオ企業に変革しようとしている姿勢が分かりました。一次産品のブランド力により市場を切り開く必要のある北海道にとっては、この様な企業が立地をしてくれたことは心強いことと感じました。
他の地域からの発表では、イシダファーマー(株)の関節リュウマチ用治療補助食品と(株)バイオタキソールの配糖体と包接体の製造技術の紹介が印象に残りました。イシダファーマーは、当会会員のアミノアップ化学とも協力関係にあり、発表者の石田代表は北海道にも良くいらっしゃっているそうです。また、効能評価のベースが三重大学等の三重県を中心としていることに納得をしていました。また、バイオタキソールの社長の浜田氏は岡山大学の教授も務めていますが、技術の売り込みの姿勢が印象に残りました。本当に自らの技術に自信があり、心から商売をしたいと思っているなら、これ位の熱心さが必要だと感じさせられました。

ただ、個人的な興味から言うと、(株)アスコルバイオ研究所の高純度VCに関する発表と(株)グレイスラムの大東島産ラムの開発譚が面白かったことを伝えないといけません。VCの効果については怪しい話も含めていろいろありますが、しっかりとした研究結果を基に活性を維持する方法を開発したとのことで、効果を試してみたい気になりました。また、大東島のラムはその酒質に一言がありましたが、懇親会の際に製造技術の面での苦労も聞くことができ、応援をしたい気持ちになりました。
懇親会の際に、楽しくお話をすることができたのは(株)海邦商事の取締役の與那嶺氏でした。黒糖の微粉砕化技術で優位性を持つ同社は、同時に地場の原料生産農家の組織化も行っています。収益性を確保するために農業労務を軽減する機械化なども検討しており、HOBIAが取り組んでいるアグリバイオ事業にも参考になる企業だと思いました。

最後に、当会会長の冨田房男からフォーラム閉会の挨拶があり、地域連携の必要性が提唱されました。今後も、この様な交流を続けていく必要性と、その成果が期待できる一日でした。

(文責:企画運営委員会副委員長 富永 一哉)