HOBIA NEWS No.299

目次
●  地域バイオ育成講座を帯広市で開催
●  関西バイオビジネスマッチング2013に参加して
●  2013年度HOBIA新年講演会の講演要旨
  北海道大学大学院・地球環境科学研究院・山崎健一先生
●  お知らせ
●  編集後記
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● 地域バイオ育成講座を帯広市で開催
12月10日(月) に北海道立十勝圏地域食品加工技術センターにおいて地域バイオ育成講座を開催しましたので、報告します。
同センターの会議室で、「[異物混入防止技術の最前線]研修会」として開催いたしました。講師には、日本食品分析センター千歳研究所から業務課主任の福岡里菜氏を迎え、「食品等の異物検査」と言うテーマでお話しいただきました。また、アズワン株式会社からサニーフーズグループ主事の味波洋氏を迎え、「簡単!異物混入対策品のご紹介」と言うテーマのお話を伺いました。それぞれの要旨は、以下の様になります。
 
○「食品等の異物検査」
「食の安全・安心」に関する消費者の意識は依然として高く、社会的に重要なキーワードとなっています。そのような中、食品等の製品中に異物が混入しているという消費者からの申し出が多くなっています。異物混入が発生した際、その原因を追求するには異物検査による異物の同定・推定が重要なアプローチの一つと考えられます。そこで、本講演では、異物検査の一般的な分析手法についてご紹介いたします。
 
○「簡単!異物混入対策品のご紹介」
 異物混入が発生した場合、その原因を追求した後は今後、異物混入をどう防止するかが重要となります。そこで、本講演では、食品工場用衛生管理カタログ「サニーフーズ」を利用することで、基本的なブラシ・手袋等、製造現場で活用できる製品を中心に一部、微生物検査に係る部分を含め異物混入防止技術をご紹介させていただきます。安価なアイデア製品・流行製品など、今日からでも簡単に!異物混入対策を行っていきましょう。
 
福岡氏からは、日本食品分析センターで行われた試験の実例を参考にして、具体的な試験・分析方法について解説していただきました。味波氏からは、実際に販売している商品を見ながら、具体的なその使用方法とメリットなどを解説していただきました。極めて実践的なお話しで、定員40名がほぼいっぱいになった会場からは活発に質問も出ておりました。講演後に講師に質問していた人も多く、非常に有意義な勉強会になったものと思われました。
 

 企画運営委員会副委員長 富永一哉

● 関西バイオビジネスマッチング2013に参加して
 同マッチング会は当会の友好団体である近畿バイオインダストリー振興会議が主催し、月6日大阪府豊中市の千里阪急ホテルで開催されました。近畿バイオインダストリー振興会議との交流事業として、当会も後援に名を連ねております。講演会・プレゼンテーション会は200名ほど入る会場がほぼ満席になり、最終的には304名(内訳は売り手企業:59社、124名、買い手企業:35社、68名、一般参加:112名) の参加者があったとのことで、大変に盛況でした。
プレゼンテーション会には、当会の支援により会員企業である株式会社アミノアップ化学と北海道曹達株式会社が参加し、ポスター展示も行いました。何れのブースにも沢山のお客様があり、交流事業としても非常に成功したと言えると思います。ただ、参加者が多数にも関わらず会場が狭かったためか、商談の予約数が期待より少なくなったと言う意見もあり、今後の課題として近畿バイオに提言していきたいと思います。

企画運営委員会副委員長 富永一哉

● 2013年度HOBIA新年講演会の講演要旨

北海道大学大学院・地球環境科学研究院・山崎健一先生

 
講演は大きく二つのテーマで構成され、第一部は「工学的遺伝子デザイン技法による生物デバイスの構築」。2010年、演者は北海道大学の学部生からなる大会参加チームを編成し、iGEM(生物ロボットコンテスト世界大会)2010(於:米国マサチューセッツ工科大学)への挑戦を始めました。この国際大会に各国から参加する学部生チームが標準として用いている遺伝子デザイン技術が、工学原理に基づいて構築され、これに用いる遺伝子部品が質的にも量的にも演者の予想以上のものであることに気づきました。こうした技術基盤の構築は、これまで「経験値の高い研究者にしか手の届かなかった遺伝子デザイン技術」を「経験の浅いまたは全く経験のない大学の学部生にも手の届く技術」に進化させました。「ここまで技術基盤がしっかりしているなら、生物学を大学で学び始めたばかりの一年生にも習得可能なのではないか」と考えるようになり、2011年度から、思い切って北海道大学理系の一年生を対象として開講されている一般教育演習(通称:フレッシュマンセミナー)のメニューの一つとして、「遺伝子デザイン学入門などという講義を開講してみようか」となりました。そこで、この講義をするためのテキストとして「遺伝子デザイン学入門」を執筆し出版しました。第一部の講演では、本書の内容に沿った形で「工学的遺伝子デザイン技法とは何か」という説明から始めました。その後、13年前(2000年)に開始した合成生物学(Synthetic Biology, 生物機能や生物システムをデザインして組立てる新しい学問分野)的アプローチを適用した「ステロイドホルモン治療薬を探索できる植物バイオセンサー創り」へと発展しました。
第二部は「科学者を育てる教育法」。北海道大学着任以来、16年間取組んできた「小学生の理科教育改革のための会社の設立」についての説明や、「ゲーム性導入による大学の科学教育改革の試み」について解説いたしました。

講義室の入口では(1)これまで出版した8冊の本の展示、(2)ポスターの掲示、(3)理科実験教室のパンフの展示、(4)今年度出版した「遺伝子デザイン学入門」(北大出版会)の販売などを行いました。吹雪の中、講演会に参加してくださった皆様、貴重なアドバイスの数々、懇親会での楽しいお話、ありがとうございました。

【座長コメント】山崎先生が作り運営されている「サイエンス教室」は、独自の教科書「わくわく・びっくりサイエンス教室」を小学校1年生から6年生までの学年別に作成して、年間24回の実習を行っている。札幌を本校として、東京吉祥寺にも教室を開いておられ、すばらしいのは、起業された「(有)メンデル工房」は、自主自営の経営にまで到達していることです。実習テーマは幅広く、空気と水をはじめ、磁石、光、音、電気、熱などに関しても、それぞれの伝わり方を実習して肌感覚で自然を学んでゆく。重さと体積、種子と花粉、カエル、メダカ、イカなど、解剖したり顕微鏡で観察したりと幅広い、そしてオシロスコープでの観察やディーゼルエンジンの原理までもへと発展する。

 大学生教育にも新しい教育法を実験されて、「ゲーム性導入による勉学意欲向上」に手応えを感じて「幾つかの戦陣例から、ゲーム性を利用した教育の試みが近未来の大学教育を一変させる斬新な試みであると確信」するようにもなられました。「生物ロボットコンテスト」は、ゲーム性を利用して、基礎生物学や遺伝学、そしてチームワークや英語での発表・討論能力の飛躍的な習得、そしてなんと「バーチャルBio-Artギャラリー」と表現力の開花にまで至った。山崎先生は、人工的生物を作るだけでなく、人の学ぶという高等な、しかし愉快な体験を開拓されています。
 
山崎健一先生プロフィール

1956年静岡県に生まれ、1985年大阪大学大学院医学研究科にて学位を取得し、横浜市立大学大学院医学研究科助手、名古屋大学大学院農学研究科助手、米国ニューヨークのロックフェラー大学・訪問研究員などを経て、1997年准教授として北海道大学地球環境科学研究院に着任。2000年から合成生物学分野の開拓をこころざし、生物デバイスデザイン手法の開発をしながら、「ヒトステロイドホルモンを検出できる植物バイオセンサー群の開発」に成功。その後、人類に役立つ新しい人工生命体の創造を目指して、日々研究に取組む。このような研究の一方、小学生のための実験教室「サイエンス教室」を主催する会社「(有)メンデル工房」を設立し、その創設者として活躍し、日本化学会から化学教育有功賞を受賞(2008年)。2010年からは米国マサチューセッツ工科大学で毎年行われる「生物ロボットコンテスト(iGEM)」に北大生チームを率いて参加し、その取組みを通じて「教育へのゲーム性導入による大学教育改革」に取組んでいる。若い頃の趣味は、少林寺拳法・スキー・テニス・競技舞踏、現在はマラソン。

●  お知らせ

 バイオ関連団体全道会議
日時:2013年月29日(水) 9:30~12:00
場所:北海道大学  百年記念会館  第3小会議室
詳細は、後日お知らせします。
 
 新年度総会
日時:2013年6月13日(木) 午後
場所:北海道大学学術交流会館
詳細は、後日お知らせします。
 

●  編集後記
 3月になると日照時間が長くなり、春の兆しを感じられるようになります。既に植物の芽は、雪の下で出てくる準備をしているでしょう。春は転勤シーズンでもあります。ついに私にも名古屋への転勤が命ぜられました。大好きな北海道を離れるのは大変つらいものが有りますが、またいつの日か戻ってこようと思っております。HOBIAの益々の発展を祈念しつつ、編集担当として、この号で最後にさせて頂く事となります。HOBIAでは6年間皆さまに大変お世話になり有難うございました。
 
編集担当 HOBIA企画委員 黒田一寛

 
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