バイオマッチング広場」および「第103回例会」開催報告

1月25日(木)、京王プラザホテル札幌において、地域バイオ推進実行委員会主催による「バイオマッチング広場」とHOBIA主催による第103回例会が、70名の参加を得て開催されました。
講演会では2つの講演とパネルディスカッションが行われましたので、その内容等を紹介します。
また、講演会終了後の新年交礼会には44名の参加をいただき、会場内では4企業のポスター展示などもあり、和やかな中に活発な意見交換も行われました。

=== 講演1 ======

【演 題】 「特定保健用食品とその新制度」
【講演者】 (財)日本健康・栄養食品協会
                 特定保健用食品部長 橘川 俊明 氏

 特定保健用食品(以下、特保)は、1991年から制度化されており、有効性、安全性、品質に関する科学的証拠を国が個別に審査し、保健の用途の表示が許
可される。2001年に発足した保健機能食品制度の中には栄養素の機能表示ができる栄養機能食品の制度が新たに含まれ、ビタミン類12種、ミネラル類5種
について各々基準量内で機能を表示できる。特保制度がこの保健機能食品制度の中で再発足した際の変更点は、保健の用途範囲の拡大、審査資料内容の充実・厳
格化、食品形態の規制撤廃(錠剤・カプセルも可)などであり、食品衛生法に基づくために、医薬品に近い厳格な審査となった。加えて、審査期間の明確化
(6ヵ月を目安)、市販後情報収集の義務化、再評価の必要性明記、表示に対する監視強化が定められた。

 特保発足の経
緯としては、1984年の文部省特定研究「食品機能の系統的解析と展開」を原点とし、食品の3次機能である体調調節機能が明確にされたことに基づく。
1987年厚生省の「機能性食品」の市場構想が示され、翌年「機能性食品懇談会」が設立、1990年に機能性食品検討会により「機能性食品の制度化につい
て」の報告書が提出された。1991年に栄養改善法に定める特別用途食品の一分野として特保制度が発足した。1997年には制度改正とともに100品目の
許可が達成され、市場も1,300億円に拡大した。2005年には再度改正され特保の多様化等が図られるとともに、569品目、6,299億円の市場規模
となった。2006年12月26日現在、許可数は627品目を数える。多様化に伴って生まれた条件付き、規格基準型、疾病リスク低減表示の取得実績は未だ
わずかであり、約2割をOEMやデザイン変更などの再許可等が占め、この分野は増加傾向にある。機能分野別の件数としては、整腸作用が4割を占め、最近で
は中性脂肪、体脂肪、血糖値、コレステロール関係の件数が増えつつある。

 表示許可取得のため、申請者は先ず保健所に
許可申請書を提出し、審査申請書は直接厚生労働省に提出する。厚労省による書類チェックと担当者へのヒアリング終了後、評価調査会で審査され、指摘事項へ
の企業の対応が済むと、新素材・新用途品目については食品安全委員会で審査される。その後厚労省の調査部会で審査され、そこからの指摘事項への対応を終え
ると、栄研または登録試験機関での分析結果を提出して表示許可書発行に至る。添付資料として、関与成分を含む食品については、有効性の作用機序の他、1日
摂取目安量、体内動態、保健の用途を裏付けるヒトによる客観的データ、一般的には3ヵ月の長期摂取試験が必要である。安全性については、食経験による安全
性、1ヵ月の過剰摂取、3ヵ月の長期摂取試験、新素材であれば毒性試験(動物)が必要となる。品質については、関与成分の試験・検査方法、品質管理の方法
として含有量を担保する客観的なデータが必要である。「保健の用途」の表示範囲は、血圧、血糖値、中性脂肪などを正常に保つことを助ける食品、などであ
り、高血圧を改善する、は不可。お通じを良好にする(改善するのに役立つ)、またはカルシウムの吸収(沈着)を高めるなどは表示可能であるが、解毒作用、
脂質代謝促進の効果がある、は不可である。肉体疲労を感じる方に適した(役立つ)食品との表示は可能であるが、未だ許可実績はない。他には、疾病リスク低
減のように病気のリスクを下げるという保健の用途が新たに加わった。
 「必要に応じ医薬品に準じた取り扱いが望まれる」(薬事・食品衛生審議会報告書)とは、有用性の説得、品質管理方法に関する資料、有効性・安全性に関す
る資料の充実である。ヒト試験実施に際しては、事前にin
vivo動物試験、プラセボ食品を対照とした無作為化比較試験(RCT)、並行群間試験、全試験終了後の割付開示がある。非無作為化の場合には、性、年
齢、指標等の比較性を確保すること。被験者は保健の用途として適切な健常者を、性別が極端に偏らず、統計学的に有意差検定が可能で層別解析結果を提示可能
な十分な数を確保すること。ヘルシンキ宣言の精神に則り、倫理委員会等の承認を得、医師の管理下で実施する。表示は、保健機能食品(特定保健用食品)、商
品名、名称、原材料、賞味期間、内容量、重要な許可表示、栄養成分及び熱量、1日摂取目安量、摂取方法、摂取上の注意、調理または保存方法の注意事項、な
らびに販売者が定められている。

 
「健康食品に係わる今後の制度のあり方に関する検討会」の提言の概要(平成16年6月9日)を受け特保制度は平成17年2月に一部改正された。科学的根拠
として、「健康の保持増進の効果を表示するにはある一定の科学的根拠が必要である」が合意され、「いわゆる健康食品」に対して現行の保健機能食品の枠を拡
げて取り込む案が法制度で決められていった。その結果、表示内容の充実として「条件付き特保」、「規格基準型特保」の創設、疾病リスク低減表示の容認
(Ca、葉酸)、特保審査基準の見直しがあった。
 「条件付き特保」の導入趣旨としては、現行の審査基準(科学的根拠)に達していないもので一定の有効性が確認される食品が対象となる。作用機序は明確で
あるものの、有効性確認試験でRCTにおいて危険率5%以上10%以下、非無作為化比較試験で危険率5%以下、または作用機序が不明確であってもRCTに
おいて危険率5%以下で有意差があれば条件付きで認めようとする基準である。この表示としては「○○を含んでおり、根拠は必ずしも確立されていませんが、
△△に適している可能性がある食品です。」であり、ランク付けが下位であることが明らかなため、企業からの支持は低い。
 「規格基準型特保」は、現行許可品の中で実績、科学的根拠ともに十分に蓄積されていて、審議会等の個別審査が不要な食品について事務局審査で認める分野
である。同一の保健の用途が100件を超え、関与成分の最初の許可から6年を経過、かつ、複数の企業が当該用途・成分の許可を得ていることが条件である。
今回規格基準が作成された関与成分は「おなかの調子を整える」等の表示をする9成分である。疾病リスク低減表示として我が国ではCa
(300~700mg)と骨粗鬆症、葉酸(400~1000 g)と神経管閉塞障害を許可するとしているが、未だ許可実績はない。
「条件付き特保」は健康食品の一部を取り込もうという趣旨であるものの、必要申請データは現行特保とほぼ同等であり、各社足踏み状態にある。「規格基準型
特保」には安全性に関する過剰摂取のデータ、疾病リスク低減については特保とほぼ同等の申請データを要する。表示の適正化として、「食生活は、主食、主
菜、副菜を基本に、食事のバランスを」等の表示の義務付けと、栄養機能食品への「ダイエット食品」表示の禁止がある。安全性の確保に関しては、特に錠剤、
カプセル状食品ではGMP(適正製造規範)ガイドラインに則ることと、原材料の安全性ガイドラインの作成が求められる。
特保表示許可の早期取得には、OEMなどの再許可等、次いで規格基準型特保へ挑戦するなど、ハードルの低い分野から挑戦することも一法である。

Q:ISOとの関連はどうか。

A:ISOの一分野として品質管理規格が定められている。表示許可を取得しようとするメーカーは当然品質管理を十分に満たすことを要件として厚労省は許可をしている。

Q:類似食品を摂取しても特保の有無による実感の差異はない。特保は企業の優良自慢となってはいないか。

A:保健の用途によってはそのような例もある。しかし、血圧、血糖など新たに開発された保健の用途では明確な機序と有効性のデータを揃えて許可を受けているので、必ずしも優良自慢とも言えない。

Q:消費者としては、メーカーの安全な製造実態を維持する国策を望む。

A:申請者が許可を取得後、継続して安全性を確保すべく製造されているかをチェックする仕組みは現在保健所等による収去検査しかなく、今後の検討課題である。

=== 講演2 ======

【演 題】 「よつ葉乳業(株)の特定保健用食品許可取得への取り組みについて」
【講演者】 よつ葉乳業(株) 中央研究所
                
専門研究員 内田 健治 氏

 当社は一昨年の11月に特定保健用食品(トクホ)の表示許可を取得した。これは幸い北海道での第1号ということになり、この度はこのような機会を与えていただきましたので、当社のトクホ取得までの取り組みについてお話しさせていただきます。

 
世界の伝統的発酵乳の代表的なもののうち、ヨーグルト(ブルガリア)、マツォーニ(グルジア)、タラグ(モンゴル)の3つは高温発酵乳で、緯度の比較的低
い地域あるいは気温の高い地域で生産される。緯度の高い地域あるいは寒冷な地域では低温発酵乳が生産され、ラングフィル(スウェーデン)、ビーリ(フィン
ランド)、ケフィア(コーカサス山脈が発祥)、アイラグ(モンゴル)が代表的である。これら伝統的発酵乳は長い歴史があり、乳酸菌の分離源など研究材料と
しても魅力がある。
 日本の発酵乳の歴史をみると、1935年にヤクルトが発売され、1971年に明治ブルガリアヨーグルトと続く。1978年に森永ビヒダスヨーグルトが初
めて、ビフィズス菌を使用した製品として発売された。その後、1997年に血圧降下作用を持つアミールSが発売され、この商品もトクホ商品である。同年か
ら1999年にかけて、各社が整腸効果でのトクホの取得を行い、プロバイオティクスブームとなり、消費者のヨーグルトに対する関心が高まった時期である。
2000年になると、新たな機能性としてピロリ菌抑制効果のあるLG21が発売され、話題となった。2003年から近年にかけて、新たな機能性として抗ア
レルギー作用についての研究が多くの企業で精力的に行われている。
このように各社さまざまな乳酸菌について研究を行っているが、その主な分離源としてはヒトの腸管が挙げられ、当社のBb-12株も腸管から分離されたもの
である。ヒトの腸管から分離された菌には胆汁酸や胃酸に対する耐性があり、プロバイオティクスの重要な性質としての腸管到達性が確保されている。また元々
腸管に存在した菌株であるので、安全面も確保されていることから、分離源としてよく利用される。
 その他の分離源としては、最近注目されている漬物などの植物素材がある。商品としては、カゴメの植物性乳酸菌ラブレなどが代表である。当然ながら伝統的
発酵乳は重要な分離源で、歴史が深く、食経験が長いことから、安全性が高いと考えられ、有効な分離源だと言える。最近、機能性が話題となっている乳酸菌は
ヒトの腸管分離株が多いが、基本的には伝統的発酵乳から分離された乳酸菌がヨーグルトに使用されている。

 企業における発酵乳開発のポイントは、食品衛生上安全性が高いこと、乳酸菌数等の規格基準を満たすことができること、健康に寄与すること、製造可能で利益が出る製品であることなどが重要となる。ただ、発酵乳はあくまでも食品であるので、美味しいことが大前提となる。
 「トクホ」は食品に分類されるが、医薬品と一般食品の中間に位置している。現在、健康の維持増進等を助ける働きをするように思わせる食品が多く流通して
いるが、保健の効果を表示できるのは「トクホ」だけ、栄養成分の機能を表示できるのは「栄養機能食品」だけである。また、トクホの許可要件のうち、特に重
要なのは「希にではなく日常的に食されるものであること」で、食経験が豊富なものである必要がある。ヨーグルトもその一つとなる。薬効成分が含まれるもの
は「トクホ」として認められない。トクホ表示許可商品は大きく11種類に分けられているが、ヨーグルトは「おなかの調子を整える食品」中の「乳酸菌等を含
む食品」に分類される。
当社はトクホ取得にあたり、既に安全性の確認された市販のプロバイオティクス菌を用いることとした。使用した菌株はクリスチャン・ハンセン社のビフィズス
菌Bb-12株である。この菌株は優れた耐酸性を持ち、腸管到達性がある。腸内細菌叢のバランスを整えるので、健康な乳幼児の下痢発症を抑え、ロタウイル
ス感染を抑える。腸管への付着性があり、白血球の食細胞活性を上昇させる。小腸内のIgA活性を上昇させたり、アトピー性皮膚炎を抑える報告もあり、多く
の機能性を有した菌株である。

 
今回トクホを取得した経験から、乳酸菌を含む食品でトクホを取得するためには、有効成分の安全性(食経験の有無)、有効性試験、安全性試験(過剰摂取試
験)、商品の安定性、腸管到達性の5つの必須条件があると考えられた。まず、食経験が乏しい場合、急性毒性試験、反復投与、毒性試験、変異原性試験などを
行う必要がある。有効性試験においては、プラセボ(偽薬)に対して排便回数の有意な増加と糞便内菌叢内のビフィズス菌占有率の有意な増加が必須である。安
全性試験(過剰摂取試験)では、1日目安摂取量の3~5倍量を摂取した場合の影響を確認する。商品の安定性では、賞味期限内における有効成分の安定性を確
認することになる。プロバイオティクスの定義には、生きて腸管に達するという項目があるので、腸管到達性も重要な要素となる。

 
ヒトを対象にした試験を行う場合、ヘルシンキ宣言に則り、被験者の人権、プライバシーの保護に十分配慮する必要がある。また、試験内容について倫理委員会
での承認を得る必要があり、試験は医師の管理下で行う必要がある。また、試験は二重盲検比較対照試験で行う。トクホの取得に際しては、試験内容が学術誌で
受理されることが必須である。倫理委員会の設置が困難な場合は、日本健康・栄養食品協会への委託が可能である。また、当協会では健康・栄養食品研究という
学術誌の発刊も行っている。当社のトクホ商品は「よつ葉北海道十勝プレーンヨーグルト生乳100」という商品名である。有効成分は、
Bifidobacterium lactis
Bb-12であり、許可表示内容は、「生きて腸まで届くビフィズス菌Bb-12の働きで、腸内環境を改善し、おなかの調子を整えます。」である。

 
当社の行ったヒト試験は、被験者として健常な女子大生を対象とし、二重盲検比較対照試験で行った。試験内容は、被験者を2グループに分け、試験期間は、2
週間を一単位とし、2週間の非摂取期の後、一方はBb-12を含む試験食、もう一方はBb-12を含まないプラセボを1日100g
2週間摂取させ、2週間のウォッシュアウトを挟んで、前回とは異なるヨーグルトを1日100g
2週間摂取させる、合計8週間で行った。試験期間中は、発酵乳、乳酸菌飲料、乳酸菌製剤、オリゴ糖、チーズ、キムチ、納豆、漬け物等の食事制限をした。整
腸剤, 抗生物質などの腸内菌叢を変動させる薬品類を服用した場合は、自己申告によりデータから省くこととした。

 試
験結果をまとめると、ビフィズス菌Bb-12(>107
CFU/g)を含むヨーグルトを摂取することで、プラセボ摂取期に対して糞便中ビフィズス菌占有率が有意に高まった。また、プラセボ摂取期に対して排便回
数が有意に増加した。また、3倍量と過剰に摂取した場合も、胃腸の症状に悪影響を与えないことが確認された。この結果から、特定保健用食品の表示許可が取
得できた。
 トクホ取得時の2つの留意点、1)審査方法、2)審査基準の変更について意見を述べる。トクホの審査は個別審査であるため、Bb-12については当社を
含めて6社がトクホを取得しているが、各社個別に同様の試験を行っている。ある規格基準を満たせばトクホとなる「規格基準型トクホ」というものもあるが、
許可件数が100件以上、最初の許可から6年以上が経過し、さらにその間に健康被害などの事例がないことなどの厳しい条件がある。現在、「規格基準型トク
ホ」になっているのは、難消化性デキストリン、各種オリゴ糖のみである。また、審査基準は年々変化しているため、前例が参考にならないケースがあり、新し
い情報の収集が重要となる。情報収集の手段としては、日本健康・栄養食品協会の申請支援活動があり、アドバイス(事務指導)や審査申請書のチェックを依頼
できる。また、トクホ担当者講習会では、厚生労働省の担当者やトクホの審査委員の話を聞くことができる。

 
最後に免疫トクホの可能性について少し触れたいと思う。現時点での、免疫トクホの可能性は、医薬品との兼ね合いで難しい状況にあるが、食品免疫に関する研
究論文は多数(2003、2004年で460を超える)ある。また、食品免疫学を新しい科学分野として確立し、その関連分野を進歩発展させるために、
2004年10月21日に食品免疫学会が設立された。本学会では、免疫調節作用によるトクホ取得に向けたガイドラインの作成も行っており、その実現に向け
て各社努力しているので、近い将来免疫トクホ商品が誕生することに期待したい。

Q:今回の開発戦力の一つとして、国
際的にも評価があるクリスチャンハンゼンのBb-12を使ったわけだが、それには既にいろいろな情報があるにも拘らず、特保の場合には個々の食品で試験を
する必要があったとのこと。実際の審査では、既にあるデータと貴社のデータの関係は、どのように扱われたのか?

A:審査の際には当社が提出したデータが審査され、既存のデータは参考資料として申請書に添付した。菌株の安全性については既存のデータが審査された。

===パネルディスカッション======

【テーマ】「北海道における機能性食品開発の促進について」
【パネラー】
橘川 俊明 氏(講演1 講師)
内田 健治 氏(講演2 講師)
千葉 昌樹 氏(北海道保健福祉部  保険医療局健康推進課 主査)
【コーディネーター】
中川 喬 氏 
(HOBIA企画運営委員・(株)アミノアップ化学)

 まず千葉昌樹氏より法律的な注意点を説明頂いた。
いわゆる健康食品に関係する法令はたくさんある。特に重要なのは、次の3つ。薬事法、健康増進法、食品衛生法。いずれも最寄りの保健所にすべての専門家を配置している。他にJAS法、景品表示法、特定商品取引法なども関係する。

 
表示でよくあるダメな例は、「×北海道のトマトは本州のトマトに比べてビタミンCが多い。」このような表示をするためには産地の平均した分析データが必要
であり、生ものだと分析するとモノは無くなってしまう。従ってあり得ない。「×トマトにはビタミンCがたっぷり含まれています。」、「×トマトには
100g中ビタミンCが32mg含まれています(五訂食品成分表より)。」箱に書いてもチラシに書いて箱に入れることも適さない。(ポスター等に書いてそ
の食品とは別なところに貼ったり、掲示することは可能。)
「栄養機能食品」は、1日に必要な栄養成分を補完するためのもので、ミネラル5種類、ビタミン12種類で、それぞれ規格基準が定められている。
千葉氏は、シールやラベルを作る前に、まずは最寄りの保健所に相談してほしいと強調された。海外からの輸入品の場合、現地の言葉で「何かに効きます」と書かれていても、関知しない。しかし、日本語にすると法律の規制を受ける。
橘川氏は、会場からの質問に答えて、A1:安全性試験は、基本的には、過剰投与試験は、3倍量を1ヵ月行う。長期投与試験は通常容量で3ヵ月。A2:「特
定保健用食品」誕生のきっかけの一つは、予防によって医療費を下げるというものであるが、特保によって医療費が下がったという調査はない。しかし、特保の
医療費への影響は関心の高いことである。
機能性食品の開発を目指すHOBIA会員の方も多く、法律や実際の作業などについて質疑を行った。専門的で活発な質疑応答となった。

Q:特保の条件を緩和した「条件付き特保」は、どのような制度か?

A:従来特保は、作用メカニズムと有効性の両方を明確にせねばならなかったが、「条件付き特保」は、必ずしもそこまで求められていない。現実には、今のところ条件付きをトライしている企業は、従来の特保ではデータが足りないので、という理由である。

Q:免疫に関する特保がないというのは、どんな理由か?

A:免疫というのは、国によってとらえ方、考え方が異なる。さらに学問的にも確立とは言い難い。食品免疫学会が立ち上がって、効果を明瞭にしていこうという流れが出てきた。この動きによっては、厚労省も動くことも考え得るが、現状では判らない。

Q:乳酸菌LG21は、ピロリ菌を減らせるという効果で特保になるか?

A:疾病予備軍を健康に戻すといのが、特保である。ピロリ菌は、すでに一つの病気として学問的にも確立された。特保の対象としては難しい。リスク低減からの特保の可能性もあるが、データは、膨大なものが求められる可能性がある。

Q:機能性食品は、健常者の予防だけでなく、病人もたくさん特保を食べている。病人を対象とした食品の現状を教えてほしい。

A:病人を対象とした食品には「特別用途食品」の中に「病者用食品」があるが、昭和48年に制定された後改正されておらず、現状には合わないためこの制度はあまり使われていない。現在この状態を改善するため、平成20年をめどに改正への作業が進められている。

Q:規格基準型特保について教えてほしい。

A:
モデルになる商品があって、それを基に同様な機能の商品を少ない裏付けデータで許可が得られる特保の種類である。現在整腸作用として食物繊維3種類とオリ
ゴ糖6種類が認められている。例えば難消化性デキストリンを使う場合、「おなかの調子を整える」なら通るが、それ以外の効果をうたうとこの限りではない。
新たな保健の用途の規格基準型特保として認定されるためには、最初の許可から6年の期間と100件以上の許可実績が必要とされる。

Q:生鮮食品は、特保にはならないのか?

A:なりません。特保は特定の有効成分を一定量保証する必要がある。生鮮食品では、季節で成分が変化する。成分保証ができないので特保とはならない。

Q:機能性を学会で発表して宣伝にしている企業もあるが、如何なものか。

を通過したうえで掲載されるので、真実性の価値がしっかりしている。

Q:免疫への基準がない。免疫とは、病気と考えるか、予防と考えるか?

A:特定保健用食品もリスク低減の考え方が入ってきた。しかし、例えば、特定の免疫グロブリン値が下がったり上がったからと言って、疾患のリスクが下がるというところまで学問的に確立されていないと思う。今後データが、積み重ねられる必要がある。

Q:機能性食品の効果判定で、海外での評価と日本のとは異なるのでは?

A:特保に関して、内外格差は少ないと認識している。しかし、食の機能性効果に関しては、差があるのも事実である。食文化の違いもあるが、両者は、論文などを介して、近づいていくと考える。