目次
● 世界の遺伝子組換え作物の商業栽培に関する現状
(有)A-HITBio 代表取締役社長 冨田 房男 氏
● 本の紹介
「北の健康野菜―行者ニンニクの薬効とその秘密」
東海大学教授 西村弘行編著 北海道新聞社(2011・4)
● お知らせ
■ 総会・例会
● 編集後記
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これは、2011年3月3日に東京で行われた国際アグリバイオ事業団の創設者・会長であるクライヴ・ジェムズ氏の報道機関へのセミナーの要約である。私は、HOBIAの国際部会担当そして日本バイオテクノロジー情報センター代表として参加した。
2010年は遺伝子組換え作物の商業栽培が開始されて15年目を迎えた。(1996-2010年)そして、1996年からの作物栽培累積面積が10億ヘクタールを超え(米国あるいは中国の総面積に相当)、遺伝子組換え作物栽培は完全に浸透したといってよい。即ちその栽培面積が87倍と記録的に増加し、これは近代農業史において最速で導入された作物のためのテクノロジーであることを意味している。2010年は10%という目覚しい増加率を示し、栽培面積は全体で1億4,800万ヘクタールに達した。年間1,400万ヘクタールの増加は15年間で番目に大きな数字である。「形質ヘクタール(スタック[1]として導入された性質の数を反映した)」は2009年の1億8,000万から2010年には億500万ヘクタールに増加した。これは、14%の増加、つまり2,500万「形質ヘクタール」の増加になる。遺伝子組換え作物栽培国は2009年の25ヵ国から29ヵ国に急増した。上位10ヵ国全てが100万ヘクタール以上の増加を示したのは2010年が初めてである。世界人口の半数以上(59%)に相当する約40億の人々が、遺伝子組換え作物が栽培されている29ヵ国で暮らしている。2010年、新たにパキスタン、ミャンマー、スウェーデンの3ヵ国が遺伝子組換え作物の栽培を初めて行ったと公式に報告した。ドイツも栽培を再開している。この29ヵ国の内、19ヵ国が発展途上国で先進国は10ヵ国にとどまった。さらに30ヵ国が遺伝子組換え作物を輸入している。
したがって、全体で59ヵ国が栽培あるいは輸入による遺伝子組換え作物の使用を承認していることになり、それらの59ヵ国に住む人々の数は世界人口の75%を占めている。これから判断できるのは、当初反対派から遺伝子組換え作物は、小規模農家に利益をもたらさない。
また発展途上国にも何ら利益をもたらさないと言っていたことと全く反対の結果になっている。
世界の遺伝子組換え作物の生産者数は、2010年には、過去最大の1,540万人に達した。特にその90%以上に当たる1,440万人が発展途上国の小規模で資源に乏しい農業生産者であることは特筆すべきことである。遺伝子組換え作物の受益者としての農業生産者の数は、遺伝子組換え作物から非組換え作物への波及効果があることを踏まえると、少なく見積もられていると言える。遺伝子組換え作物がもたらす大きな恩恵を認識し、1996年以降、世界の農業生産者が自らの判断で毎年栽培や再栽培を増加させる決定を下した件数は累計で約1億件に上る。発展途上国は2010年の世界の遺伝子組換え作物の48%を栽培し、2015年までに先進国の栽培面積を上回るとみられる。発展途上国の遺伝子組換え作物栽培面積の伸び率は17%(1,020万ヘクタール)で、先進国の%(380万ヘクタール)よりも著しく高い。遺伝子組換え作物栽培において中心となっているつの発展途上国は、アジアの中国とインド、中南米のブラジルとアルゼンチン、アフリカ大陸の南アフリカである。
私としては、中国の動きを含むアジアの動向が気になる。勿論大農業国になったブラジルも気になる。北海道の組換え作物栽培禁止条例は、一体何の助けになるのか、特に農業の技術革新、経営革新が叫ばれている折に、このような世界から取り残されていることを感じているのでは私だけではあるまい。
2010年の遺伝子組換え作物が、世界の作物栽培総面積15億ヘクタールの10%もの割合を占めた。遺伝子組換え作物栽培国29ヵ国は、世界の作物栽培総面積の50%超を占めているなかで、北海道の農家の苦しんでいる様子に耐えられない。
2012年の乾燥耐性トウモロコシ、2013年のゴールデンライス、2015年のミレニアム開発目標(MDG)前の遺伝子組換えイネなどアジアだけでも10億人の貧しいイネ生産者に恩恵を与えるとみられる中で、北海道農政がどうあるべきか再考すべきと感じた。
この発表が、NHKでも取り上げられたのに地元紙に出ないのはどう考えるべきなのか、わからないでいる。
(有)A-HITBio 代表取締役社長 冨田 房男 氏
● 本の紹介
「北の健康野菜―行者ニンニクの薬効とその秘密」
東海大学教授 西村弘行編著 北海道新聞社(2011・4)
北方系機能性植物研究会25周年記念に一般向けに書かれた役に立つ本である。震災や原発事故以前から社会の閉塞感、経済への不安感を打破するために、新農本主義が叫ばれていた。本書は野菜の健康機能を科学的に研究している第一線の学者が平易に解説する食生活改善の書である。本書に示された機能性食品の生産を中核に、地域の農業と製造業がクラスターとして結びつく未来型産業への道筋も提言している。被災された東北の農家にも、付加価値を付けた健康野菜の栽培への展望を示すことによって、復興を強く応援することになると思う。
取り上げられた健康野菜は、山菜の王者-行者ニンニクをはじめ、ハスカップなど小果実、チコリー、ヤーコン、タマネギ、アスパラガス、ダッタンソバ、ハマボウフウなど多い。どの野菜・果実も成分が分析されて、健康に役立つ効果が科学的に解説されている。薬効は動物実験だけではなく、ヒト介入試験によって確かめられているという。栽培の注意点や、健康機能を増すための調理法レシピなども書かれているので、生産する農家だけではなく、加工業者や料理人にまで参考になる好著となっている。
編著者の西村教授は、副学長という要職にありながら、専門の研究成果が産業化されるまでの支援活動をされており、産学官協同による「食クラスター」事業展開の提唱者でもある。
本書が健康志向の主婦層から、北海道ブランドを目指す農家・事業者まで幅広い読者に役に立つことを期待する。
元農水省北海道農業試験場研究員 高畑滋 氏
※この本は、6/22の総会・例会の受付で定価1,680円を割引価格1,500円で販売されます。
● お知らせ
■ 総会・例会
日時:2011年6月22日(水)総会13:00~14:00(会員限定)
例会14:30~17:05(非会員 参加費千円)
交流会 17:20~19:00(参加費三千円)
会場:総会・例会 北海道学術交流会館 1F 小講堂
交流会 北海道大学 百年記念会館 B1 きゃら亭(北9条西丁目)
総会議案
第1号議案 役員選任(案)承認の件
第2号議案 平成22年度収支決算承認の件
第3号議案 平成22年度事業活動報告承認の件
第4号議案 平成23年度事業活動計画(案)承認の件
第5号議案 平成23年度収支予算(案)承認の件
その他 報告事項
例会
講演1: 「バイオインダストリーの現状と課題」
バイオインダストリー協会(JBA)専務理事 塚 本 芳 昭 氏
講演2: 「TPP問題と道内アグリ・フーズ戦略」
東海大学副学長(北海道キャンパス担当)
HOBIA 副理事長 西 村 弘 行 氏
詳細は、別途案内状を送付申し上げます。
● 編集後記
緑のきれいな季節がやってきました。ライラック祭りに始まり、ヨサコイソーラン、北海道神宮祭など、観光客で最もにぎわう時期ですが、今年はどうでしょうか。いつもに比べて街頭で外国語があまり聞かれないように感じます。
今年は、震災の影響で大変な年ですが、もっと沢山の人が来てくれて消費を上げる事で、お金の循環が良くなり復興の支援が出来たらと思います。
今は貯蓄より消費ですよ。(お金が貯蓄に回らない独り言です・・・。)
編集担当 HOBIA企画委員 黒田一寛
HOBIAのホームページ http://www.hobia.jp/
NPO法人 北海道バイオ産業振興協会 札幌市北区北21条西12丁目コラボ北海道内 Tel&Fax(011)708-1611 e-mail: メールお問い合わせフォーム |