近畿大学水産研究所准教授家戸敬太郎
クロマグロは最近養殖生産がとくに活発に行われている重要な養殖魚種であるが,乱獲による資源の減少が大きな問題となっている。近畿大学では1970 年から養殖技術開発を開始し,その後1974 年度に活け込んだ幼魚からの親魚までの本格的な飼育に成功した。1979 年にはこれらの魚が世界で初めて網いけす内で自然産卵した。この親魚はその後も産卵し,受精卵からの飼育が試みられた。
飼育実験は1979 年以降のべ10 数回にわたって試みられたが,仔魚期の初期減耗が激しいうえに,稚魚期までの飼育には成功してもそれ以後の減耗が激しく成魚にまで育てることはできなかった。
加えてその後11 年間にわたり,養成親魚からの産卵が途絶えた。
産卵行動がみられなくなってから12 年目の1994 年に親魚が待望の自然産卵を開始した。産卵は1998 年まで
の5 年間の間に4 シーズンで認められた。年毎に初期減耗の原因究明をすすめ,さらに海上の網いけすへ移動した
後の大量へい死の原因も解明した。これらの原因に基づいて,防止対策の開発をすすめた結果,卵から成魚までの飼育に成功し,2002 年にはいけす内で産卵された卵から育てたクロマグロが初めて産卵するいわゆる完全養殖を世界以上のように,クロマグロの種苗生産に関する研究開発を進めてきた結果,2007 年には完全養殖クロマグロ第世代を生産し,世界で初めて人工種苗約1,500 尾を養殖場に出荷した。さらに2008 年には7,000 尾以上の人工
種苗の出荷を実現した。今後は,さらに量産技術の開発を進め,天然資源に依存しないクロマグロ養殖の実現に貢献したいと考えている。