地域バイオ育成講座in札幌

開催日時:2021年10月29日(金) 14:00~17:00
開催場所:北海道大学学術交流会館小講堂
感染症拡大防止のため入場者数を制限し密な環境を作らないよう配慮して開催します
今回のテーマは 『日本酒とワイン』
【プログラム】
14:00  開会挨拶  HOBIA理事長 北野邦尋
講演1:日本酒
14:05  「地方創生蔵上川大雪酒造の取り組み」
           上川大雪酒造株式会社 杜氏 川端 愼治氏
<要旨>2017年5月に上川町に創設した「緑丘蔵」は、三重県の酒蔵の酒造免許を移転して創業するという前代未聞の手法で生まれた。上川町の地域振興を目的とした酒蔵は「地方創生蔵」と呼ばれるようになる。2020年6月には帯広畜産大学内に第2工場の「碧雲蔵」を創設。こちらは産学連携、教育、地域産業振興等を目的とする。2021年12月には函館市に「五稜乃蔵」を新設。地元産学官連携での事業を進める計画。これらの経緯について解説します。
15:05  休憩
講演2:ワイン
15:20  「北海道をワイン王国にするための研究教育拠点形成」
         北海道大学大学院農学研究院 教授 曾根 輝雄氏
<要旨>北海道は、山梨、長野に次いで全国3位の日本ワイン産地であり、道内ワイナリーの数は47を数えるまでに増加した。ワインは、地域資源を反映する“農産物”でありかつ6次産品としての価値が高く、北海道の将来を支える産業として期待されている。しかしその一方で、経営、栽培・醸造、マーケティングなどの問題点もあり、それらの解決のために、道内に産学官の研究開発と実装の拠点を形成する事が重要である。北海道のワイン産業の現状と理想の将来像、それに向けての取り組みについて紹介する。
16:50  閉会挨拶
参加申込:HOBIAホームページ メールお問い合わせフォーム からお申込ください
      (お名前・所属をご入力ください。)

HOBIA NEWS No.374

2021 年 7 月 31 日

地域バイオ育成講座 in 旭川(Web セミナー)報告
2021 年 6 月 23 日開催

新型コロナ感染症は、HOBIA の活動にも大きく影響を与えていますが、そんな情況でも開催可能な形として web セミナーによる「地域バイオ育成講座」を実施しました。本来なら皆様に旭川にお越しいただいて講演と討論そして食品の話題ならではの試食が行われるのが常ですが、Webセミナーでは、試食はできず、食品を想像するしかないのは残念な次第でありました。

  • 今回のテーマは、

『新たな食感の実現を!記憶に残るテクスチャーで差別化を図る ~ジェラート・洋生菓子・パンを例に~』

旭川市およびその周辺には 70 に余る菓子製造業がしのぎを削っています。人口の割には数が多いといえスイーツの新技術や上手にコントロールする技術にはニーズが多い地域です。夏を前に季節的にも冷菓に関する技術をあつかう最適のシーズンです。お二人の講師は、それぞれ江別市からと東京からの Web 講演をして頂きました。下記に視聴記をまとめました。

講演1:ジェラードの舌触りと食感の改善
~バッチ式フリーザーによるアイスクリーム製造の課題とその対応~
北海道立総合研究機構食品加工研究センター 食関連研究推進室室長 奥村幸広氏

アイスクリームの硬さや舌触りは、原料の配合によって大きく変わります。今回のセミナーでは、小規模企業を念頭に置いてバッチ式フリーザーによるアイスクリーム製造で発生しやすい物性上の問題について、原料の配合を変化させることによって、自社の考え方にあった舌触りと食感を引き出す方法を紹介された。


日本の生乳生産の半分以上を北海道が占めており、中でもオホーツクおよび十勝、根釧での生産量が多い。地元のフレッシュな生乳を使った様々なジェラードが製造販売されている。たくさんの競合があっても今回のセミナーの知識を活用すれば、他とは差別化したジェラードを提供することができ、それぞれの企業の特徴を作ることができる。
そもそもアイスクリームは、生乳に乳脂肪や無脂乳固形分を牛乳加工品として加えて、さらに糖分を加えて作る食品で、組成としては珍しい食品といえる。

食品加工研究センターで行った実験は、生乳に脱脂粉乳、糖類、クリームの原料を加えて、通常の標準的なアイスクリームの製法に従った。すなわち加熱殺菌した生乳に副原料を種々の組成で添加して、撹拌しながら凍結した。凍結後の時間も速やかに食する場合、20 日後、40 日後と異なった状況を想定して硬さを測定し

食味を調べた。糖類といっても選択肢がある、砂糖を使うのか、ブドウ糖か、粉末水あめなのか、デキストリンなのか、それらの種々の混合比率、によって硬さや粉っぽさが変化してくる。さらにそれぞれの糖類は、甘味度が異なるので甘さにも影響する。はやりの甘さ控えめを単に糖類の添加量を減らすだけでは、アイスは固くなってしまう。添加する糖類の甘味度を考慮しての配合設計が必要となる。また、夏場にアイスが溶けやすいとか溶けたソフトクリームが流れやすい、という悩みには、クリームの添加を増やしたり、粉末水飴の添加も効果がある。乳脂肪を高めた高級志向を狙うと口当たりは濃厚となるが、オーバーランが低下するので歩留まりは下がるうえ、硬くなる傾向に傾く。このようにアイスクリームは、あちらを変えればこちらも変わる、というような面白みがあります。たくさんの競合企業があっても種々の配合を試作して、あなたの店を差別化する特徴あるジェラードを提供することができるのです。

食品加工研究センターで、このような試験を行ったのも地域からの要望から来たものです。皆様の作る食品のなぜ?とか、こう変えたい?とかご要望がありましたら食品加工研究センターへご相談ください。

講演 2:冷凍スイーツの商品開発のヒント
~増粘多糖類で冷菓課題を解決~
ユニテックフーズ株式会社 素材販売部営業企画課 神頭良典氏

新型コロナ感染症の拡大と長い感染期間のために食の分野も大きく変化受けています。本日のテーマであるスイーツの分野での変化の特徴は、まずは、冷凍スイーツが大幅に伸びてケーキの通販サイトの売り上げが3倍にもなった。通販サイトの流通はすべて冷凍流通です。この大きな変化は、スイーツを作る技術にも変革を迫っています。通常の製造方法では、生クリームがボソボソになったりダレたり、スポンジ生地が乾燥してパサついた入り、あるいはソースからの離水で生地がベチャベチャになったり、なんともいただけないケーキになってしまいます。プリンのようなゲル製品だと組織が荒れてしまいます。スイーツを冷凍すると、なんとも情けないものになってしまうのです。そこで何とかクオリティーの高い状態でスイーツを冷凍販売できないかの技術開発を行ってきました。

さて、一方で従来のスイーツを単に冷凍にするというだけでなく、現代の消費者は、いろいろな嗜好の変化もあり、我々としては次のようなキーワードになると感じている。すなわち、リッチ、タンパク強化、○○フリー(例えば、グルテンフリー、糖質ゼロ)、プラントベース、というようなキーワードを感じています。

具体的技術として、まず冷凍によって生クリームがボソボソ感やダレを防ぐには、多糖類を混合することによって防ぐことができます。多糖類といっても多くの種類の多糖類が食品原料として利用可能だが、生クリームの食感に合う種類と絞って行くと、何にでも使いやすいキサンタンガムがあげられます。


キサンタンガムは、納豆とは異なるが微生物の作るネバネバです。また植物のネバネバであるグアガムを使うと口どけに濃厚感が出すことができます。反対に、白きくらげからとれたネバネバ(トレメルガム)を使うと、軽いくちどけの生クリームを実現できることになります。

冷凍ケーキで一番感じやすい生クリームのボソボソ感の防止にしても 3 種類の方法でそれぞれ異なった食感を作ることができます。あなたの会社の商品は、どこを狙うか販売作戦を決めて頂き、その食感に向かって何度も試作を重ねてクオリティーの高い商品へと仕上げていきます。試作のお手伝いをすることもできます。

冷凍ケーキでのもう一つのよく目立つ問題点は、スポンジ生地のボソボソ感です。これに対する製造方法の改良法を紹介します。解凍後のボソボソ感は、スポンジの乾燥によるところが大きいのです。そこで乾燥を防ぐ改良を行います。ここでも多糖類が役に立ちます。多糖類の持つ高い乳化力を利用します。生地の本ごねの際に多糖類、植物油脂、水を加えて豊富なエマルジョンを作るようにこねます。これによって乾燥しにくくなり、高加水のまま生地として練りこみます。
電子顕微鏡で観察するとエマルジョンの保護効果をはっきりと見ることもできます。ここで使用する多糖類にも種々の種類が選択可能であり御社の打ち出したい差別化にそった多糖類を選ぶことができます。

様々な冷凍商品が、加速して流通しています。解凍後に出てくるいろいろな問題をうまく収める技術を使って、商品品質のレベルアップを図り売り上げを伸ばしてほしいと思っております。それらの商品が、地域の特徴ある食品として育ってゆくことと期待しております。