「全国バイオ産業ネットワークフォーラム」参加報告 Part 2

平成19年11月16日(金)に(財)大阪科学技術センターにて開催された標記フォーラムでのプレゼン概要を、前号では題まで掲載しましたが、今号では後半の第~12題を紹介します。


8)【中部発】「ゲノミクス・プロテオミクス研究によるがん治療のための新規診断法の開発」

(株)オンコミクス 代表取締役 池野教之氏

2005年創立、資本金5500万円。高橋隆教授(名大医)の研究成果を基にしたベンチャーで、癌に関する診断および予測を行う。
① 術後の再発予測診断。遺伝子解析。② 癌の早期発見、膵臓癌5年生存率が10%以下である。③ 新規診断薬開発。④ 分子標的の探索と抗ガン剤開発。

技術は、ジェノミック解析、プロテオミクス解析の活用。解析結果と治療情報が密接に関連させていることが強み。名古屋大学と愛知県がんセンター、(株)医学生物学研究所と共同研究。再発リスクを診断する。ゲノミクスでもプロテオミクス解析でも、診断出来ることを示した、論文投稿中。血液による早期発見。質量分析のチャートのピークをパターン解析でガンの診断ができる。

9)【中国発】「ニワトリモノクローナル抗体とトランスジェニックニワトリ技術の応用」

(株)広島バイオメディカル 社長 豊浦雅義氏

弊社は、広島大学との産学官連携で設立された。ニワトリモノクローナル抗体には、ほ乳類と同じ様な抗体を作ることができる等の特性がある。鳥類がほ乳類と遺伝学的に離れた関係があるので、異物認識が間違いなく起こり、抗体価が非常に高くなる。ニワトリに免疫を行わなくともライブラリーを得られることなども、有利な点である。例として、抗プリオン抗体はマウスで作ったものより感度が高く、バックグラウンドを低くできる。こうしたことから、各種抗体検査薬を作ることができる。

トランスジェニックニワトリ技術は、先ほど説明があったトランスジェニックシルクのニワトリ版である。ニワトリは卵という優れたタンパク生産系があるなど、いくつかの特性がある。ニワトリのES細胞の維持・培養法と、全胚培養までの技術を確立している。こうした系を利用すると、培養タンクを利用した方法に比べて、タンパク製造を非常に安価にできる。

以上のつの技術を融合すると、非常に優れた創薬技術とすることができる。今後、多くの企業と連携していきたいと考えている。

(この会社については、後日本社を訪問する機会があり、HOBIAとも縁の深い京都の(株)ファーマフーズの分社のような形で成立してことや、広島大学からの非常に厚い支援を受けていることなどを取材した。)

10)【九州発】「マイクロアレイによる化学物質の生物影響評価手法の開発」

(株)エコジェノミックス 代表取締役 草野輝彦氏

福岡県バイオバレープロジェクトとして県が力を入れている。久留米市を中心として動いている。バイオを環境に応用することがミッション。2003年創立資本金3.5億円、12名。

① 環境のモニタリング:183ヵ所で水質監視を行っている。生物を利用した監視方法があっても良いのでは、と開発中。重金属、塩化化合物など26種。② 化学物質審査規制法の改正(2004年)。規制判定の試験対象としてミジンコ、藻類、魚類。③ 環境ホルモン:遺伝子レベルでの解析のためにマイクロアレイを開発(商品名:EGマイクロアレー、2006年より発売)。④ メダカの開発:メダカ暴露試験。メダカを飼育する→肝臓を取る→RNAを抽出する→アレーで解析する。

各地で評価をしてもらっている。環境だけではなく、健康食品の素材の評価にも使えるのではないかとも研究している。

11)【沖縄発】「熱帯植物の機能性を網羅的に解析して化粧品に!」

バイオ21(株) 研究室室長 岡田吉央氏

「網羅的に」と言うのにはつの意味があり、できるだけ多くに植物を調べたいのと、多くの機能性を見いだしたいという思いがある。そして、バイオインフォーマティクスにも繋げていくことができればとの思いもある。当社の工場と本社は沖縄県うるま市にあり、研究所は大阪市阿倍野区にある。研究開発のパートナーは大阪府大、琉球大、(株)インフォジーン、沖縄県工業技術センター、沖縄県TLOである。

最初の製品としては、海ブドウを使ったパック剤であり、ガン細胞の選択死滅効果を特許化している。次に考えているのは、久米島の海洋深層水を用いた保湿剤で、必須の微量ミネラルを多数検出しており、この効果が高いと思われる。3番目としては、泥灰岩(クチャ)のイオン交換機能を利用して行きたいと考えている。これらと、まずは月桃のエキスのエストロゲン様物質を合わせることを考えている。さらには、個々人のホルモンバランスなどをデータベース化し、オーダーメードの化粧品も開発していきたいと思っている。

12)【関西発】「新規核酸医薬品候補化合物の開発と製造」

(株)ジーンデザイン 取締役社長 湯山和彦氏

2000年設立、7700万円、21名プライマー受託合成
血液診断用チップは、タカラへライセンスアウトした。BNA核酸の合成、医薬品材料の新素材の開発、人工核酸を得意としている。

核酸薬品は、新しいジャンルだと考えている。タンパク質をコードしないオリゴ核酸、人工核酸でアンチセンスやリボザイム、DNA1本鎖、デコイDNA2本鎖、アプタマーRNA1本鎖などを意味している。

すでに上市しているのが品目。核酸原料としてS-オリゴを使用している。分解しにくいように。しかし、S-オリゴは肝臓毒性が発見された。そこで、Sを用いるのでなくメチル化し架橋構造にして、核酸原料としてデコイを開発している。とくに分解されにくいリボン型の利点を活用したリボン・デコイを開発した。

素材そのものも阪大の今西先生の研究結果を活用している。臨床試験では、1Kgレベルの人工核酸が必要とされる。NEDOの研究費でGMPの製造施設を作った。三洋電機との共同開発によって凍結乾燥杵築アイソレーターを開発した。

(文責:淺野 行藏・富永 一哉)